スペシャルなクラブ

    10月1日、セントジェームス・パークで、Liverpoolは「またも」内容で優位に立ち、先制しながらディフェンスのミスで同点ゴールを食らい、1-1の引き分けで終わった。CLとカップ戦を含めて7試合僅か1勝となったこの試合のレビューで、地元紙リバプール・エコーは「Liverpoolの試合の記事はコピペで十分」と痛烈な批判を掲げた。

    同時に、「ラファは今でも変わらず、LiverpoolFCの一員である証を示した」と、同紙はもう一つの話題の方に焦点を当てた。その中には、ラファがこの試合の賓客として、ヒルズバラ遺族グループの代表であるマーガレット・アスピナルを招待したという逸話があった。

    ラファが、Liverpool監督時代(2004–2010)に購入したウィラル(リバプール市郊外)の家に、今でも住んでいることは有名な話だった。折につけ、ヒルズバラ遺族グループに対して寄贈などのサポートをしてきたラファが、自宅に戻っていた2011年4月15日に、ヒルズバラ記念式典に参列し、マーガレット・アスピナルのスピーチに涙をぬぐった姿をTVカメラが捉えたことも、Liverpool陣営内では有名な話だった。

    ニューカッスル監督に就任してからは、ニューカッスル近郊に単身赴任しているものの、ご家族は今でもマージーサイドの住民だった。「ジョーディー(ニューカッスル地区のアクセント)とスカウサーとどちらが難しいかって?私の息子はスカウサーを話すので、若干スカウサーの方が慣れているかもしれないが、でも私にとっては、どちらも理解不能!」と、ラファはジョークを言って笑った。

    この夏、戦力補強資金を巡って、ラファがニューカッスルのオーナー、マイク・アシュリーと対立したことが話題になった。英国の大手スポーツ用品店スポーツダイレクトの経営者でもあるアシュリーは、2007年にニューカッスルを買収して以来、ニューカッスル・ファンから「戦力補強よりも収益金を上げる方を優先している」と批判されてきた人だった。2016年に、CLとEL優勝を始めヨーロッパのビッグクラブで実績を持つラファを監督に引き抜いたことで、株が上がったのもつかの間だった。1シーズンでプレミアリーグ復帰を達成したラファに対して、「クラブの収益金は全額、戦力補強に充てる」と約束した口が乾かぬうちに、資金を出し渋ったことで、ファンも地元紙も圧倒的にラファ支持というニューカッスルで、アシュリーが四面楚歌に陥る騒ぎとなった。

    ニューカッスル・ファンとLiverpoolファンが、順番にラファ・チャントを飛ばす様子を、目を細めて見つめていたラファは、この試合のマッチ・プログラムで、「Liverpoolはスペシャルなクラブ。素晴らしい思い出がたくさんある」と、Liverpoolに対する感傷を掲げた。

    「ニューカッスルとは多くの共通点を持つ。どちらも伝統のあるクラブで、熱心で忠誠心の強いファンに恵まれている」。

    Liverpoolファンも、ラファに対して熱い感情を抱き続けていた。「ラファがLiverpoolをスペシャルなクラブと称し、この町を気に入って住み着いてくれているのだから、このクラブの一員であることは間違いない」。

    折しも、アルベルト・モレノから、「僕はこのクラブが好きだし、この町が大好き」と、Liverpoolファンにとっては意外とも言えることに、同様に熱い「ラブコール」が出たところだった。それは、この夏にメディアから「出て行くことがほぼ確実な余剰戦力」に入れられながらも留まり、今季は見違えるプレイでレギュラーの座を奪還したモレノが明かした言葉だった。

    「夏の間、出て行くべきだと批判された。でも、僕はこのスペシャルなクラブで、頑張ってポジション争いに勝ちたいと思った。だから、プリシーズンのトレーニングが始まってすぐに、監督に相談に行った。監督に、正直に僕の気持ちを伝えた。このクラブに留まりたい。どうやったら使ってもらえる戦力になれますか?と」。

    「監督は、率直に答えてくれた。約束はできないし、レフトバックを獲得する計画がある、と。でも、ポジション争いに全力を尽くす決意があるならば、頑張れば評価する、と言ってくれた。他のクラブからの話もあった。でも、僕はLiverpoolに残してもらえることが最大の希望だったので、頑張った。自分のこのクラブでの将来を築くためにも、キャリアを賭けようと決意した」。

    そして、モレノは、リバプール・エコー紙が「コピペで十分」と言う程にひどいディフェンスの中で、最も良くやっている戦力として評価されていた。ファンの間でも、昨季はミッドフィールダーから転向したジェームズ・ミルナーにポジションを奪われたモレノが、失望して出て行くどころか一変して外せない戦力になったことで、次第に評価が高まっていたところだった。

    「ピッチの上では、かつての弱点をほぼ克服して、安定したプレイを見せている。何より、このクラブが好きでこの町が大好きと言ってくれる選手に対して、気合を入れて応援できるのはファンとしても嬉しいことだ」。

    リーダーシップ不在のチーム


    9月19日のリーグカップ3回戦で、Liverpoolはアウェイでレスターに2-0と敗れて初戦敗退となった。前半に圧倒的優勢に立ちながら得点チャンスを生かすことができず、0-0で迎えた後半に「またも」ディフェンスの失態で先制ゴールを与えるという、お決まりの敗戦だった。

    猛批判の中で、地元紙リバプール・エコーの記事は手痛いまでに真意を突いていた。「4つのトロフィーに挑むLiverpoolにとって最も重要性が低いカップ戦とは言え、ここで経験を積んで戦力として育つ、あるいは復調を賭けていた、ダニー・ウォード、ジョン・フラナガン、ドミニク・ソランケ、マルコ・グルイッチら数人の選手たちは、唯一かもしれないチャンスを失った」。

    「それらの選手たちをリードする役割が期待されていたレギュラーの選手たちが、本来の責任を果たすどころか、真っ先に存在感を失ったLiverpoolは、リーダーシップの欠如が改めて露呈した」。

    エコー紙が「リーダーシップ不在」を問いかけるのは初めてではなく、話題のたびに非難の指差しは主将のジョーダンヘンダーソンに向かっていた。今回はましてや、その前のリーグ戦(対バーンリー、試合結果は1-1)でベンチに格下げされた後の試合だっただけに、奮起が期待されていた。

    ライバルチームのファンから、「ヘンダーソンが主将をやってるくらいだから、イングランド代表チームがW杯や欧州選手権でダメダメなのは必然」という嘲笑が飛ぶ中で、Liverpoolファンの間でも批判と失望が圧倒的多数を占めた。

    2015-16季にスティーブン・ジェラードから主将職を引き継いで以来、Liverpoolファンの意見は常に二分してきた。真面目な人格者で、努力家であることは誰もが認める一方で、クラブのレジェンドであるジェラードの後任者という点に固執し、「ピッチの上でのリーダーシップ欠けている」という批判の声は、消えたことがなかった。

    常につるし上げに合いながらも、黙々と頑張る姿に協調するファンは、「ディフェンシブ・ミッドフィールドの役割を着実にこなしているヘンダーソンに対して、アンチの人々は、守れば『攻撃に貢献していない』、前に行けば『ディフェンスのカバーが足りない』と批判する。何をやっても勝ち目がない」と反論してきた。

    これまでの議論の中では、「ヘンダーソンは、Liverpoolのようなビッグ・クラブの主将の器ではない」という極論も交わされた。これに対して、ジェイミー・キャラガーが「ヘンダーソンよりも適任者はいない」と擁護し、火消しに努めたこともあった。「確かに、他に誰が?と聞かれて、具体的な名前は出てこない」と、反対派も渋々納得したものだった。

    そこで、「リーダーシップ不在」の議論が再燃する中で、9月23日のリーグ戦では、ヘンダーソンの決勝ゴールでLiverpoolはレスターに2-3と雪辱を果たした。

    しかしその試合の後で、ファンの拍手は、「典型的リトル・マジシャン・フリーキック」で2点目を決めたフィリペ・コウチーニョと、ヘンダーソンのゴールにアシストを出したダニエル・スタリッジの2人に集中した。ヘンダーソンに対しては、「確かに今日の試合では、特に後半は良かった。でも、ヘンダーソンが良いプレイをするのはチーム全体が良い時だけ。低調な試合で底上げするリーダーシップは持っていない」という厳しい声すら出た。

    これを受けて、エコー紙は引き続き「リーダーシップ不在」の議題を掲げ、賛否両論を掲載することになった。その横で、同紙はヘンダーソン擁護の記事を掲げた。

    「コウチーニョのフリーキックが脚光を浴びる中で、そのフリーキックを得たアルベルト・モレノにパスを出したのがヘンダーソンだったことは、殆ど話題にも上がらない。スタリッジがゴール前に割り込んだ時に、最前線でパスを受けたのは、全力で走ったヘンダーソンだった。今季開幕からやや調子が低迷していたヘンダーソンは、打ち続く批判の嵐に対して、最良の方法で答えを出した」。

    ユルゲン・クロップは、「リーダーシップ不在」の議論そのものに疑問を唱えた。「何が問題なのか、私は理解できない。ヘンドはLiverpoolでもイングランド代表チームでも重大な責任を果たしている。しかもまだ若くて成長過程にある。主将だというだけで、人々は常にパーフェクトを求める」。

    ファンの擁護が続いた。「Liverpoolでは、アラン・ハンセン、ロニー・ウィーラン、イアン・ラッシュ、ジョン・バーンズ、ポール・インス、ジェイミー・レッドナップ、サミ・フピア、ジェラード、そしてイングランドでは、ケビン・キーガン、ブライアン・ロブソン、ガリー・リネカー、スチュアート・ピアース、デビッド・プラット、トニー・アダムズ、アラン・シーラー、デビッド・ベッカム、ジェラード、ウェイン・ルーニーという面々に続くという重荷を背負っている」。

    「でも、ビッグ・クラブの主将の中にも、例えばガリー・ケイヒルやマイクル・キャリックのように、物静かな努力家タイプの主将もいる。そして、クロップだけでなく複数の一流監督から信頼されてきたことは評価すべき」。

    プロフィール

    ピーエルエフジェイ

    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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