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    観客無のマージーサイドダービー

    プレミアリーグ再開がいよいよ1週間以内に迫った6月14日、再開初戦が236回目のマージーサイドダービーとなる地元紙リバプール・エコーが、赤・青両ページで「最も記憶に残るダービー勝利ベスト5」というタイトルで特集記事を掲げた。

    Liverpoolの方は、96分に相手GKジョーダン・ピックフォードのミスからディボック・オリジが決勝ゴールを決めた、2018年12月のアンフィールドでの1-0が最も直近だったのに対して、エバトンは2006年のグッディソン・パークでの3-0から開始し、うち3試合は1990年代だった。

    実際に、Liverpoolが最後にリーグ優勝を決めた1989-90季から現在までの61試合の戦績は、Liverpoolの29勝に対してエバトンは僅か9勝(23分)、最後にエバトンがダービーを制したのは2010年10月までさかのぼる。しかも、今季のダービーは、6月17日にマンチェスターシティがアーセナルに負けた場合、Liverpoolは、勝てば優勝決定となる二重のビッグ・マッチだった。

    必然的に、エバトン・ファンの表情は暗かった。「マンチェスターシティがアーセナルに負けたら、ダービーを見る勇気はない」と、あるファンは悲痛な声を上げた。「ましてや、今回はスタンドから大声援でチームを励ますファンがいないのだから、勝ち目はない」。

    「最近7年間で、グッディソン・パークでは6分だから、引き分けだと思う。引き分けは我々にとっては勝利と同じだ」と、別のファンが頷いた。「我々ファンの悲願が強すぎて、それが逆にチームにプレッシャーをかけているのかもしれない。今回は観客無の試合となる分、不利な要素だけでなく、有利に働く可能性もある」。

    残り試合が全て観客無となることについて、ユルゲン・クロップは、ファンという強力な戦力を失う寂しさを明かした上で、「全チームが同じ条件だから文句は言えない。誰もが初めての状況に置かれているのだから、その中で勝てる方策を探すしかない。ないものを欲しがっても何も解決にはならない」と、冷静に語っていた。

    そのクロップが率いるチームに対して、悲観的な結末を予想しながら、エバトン・ファンは、「地元のシーズンチケット・ホルダーのLiverpoolファンは、グッディソン・パークで優勝を決めて我々の鼻を明かす、ということが考えられないくらいに、誰もが沈み込んでいる。スタンドに通い詰めた末に、30年間待ち焦がれていた優勝杯掲揚を、その場で味わうことが出来ないのだから」と、真相を明かした。

    「我々の中に、親族や親しい友人知人に一人もLiverpoolファンがいない、という人はないだろう。試合中は宿敵同士だが、日常はジョークを言い合う仲の彼らに、潔くおめでとうと言って上げたい」。

    3月23日から続いていた英国のロックダウンは、学校は完全閉鎖、医療機関と医薬品・食料などの生活必需品の販売店以外は閉鎖、一般の会社はテレワークのみ、同居の人以外は面会も禁止という厳しいロックダウンだった。それが、政府の方針により徐々に緩和され、ソーシアル・ディスタンスを維持すれば少人数(最大6人まで)の集まりは許されるようになり、一般の店舗も営業出来るようになった。

    それでも規制は残っており、年内は観客無の試合が続くと見られていた。Liverpoolが優勝すれば、大勢のファンがお祝いのためにアンフィールドに詰めかけ、ソーシアル・ディスタンスが維持できなくなることが危惧され、Liverpoolの残り試合の開催地は未定のままだった。

    「Liverpoolは、どこで試合をしようとも勝てるチームだ」と、グレアム・スーネスは信頼を表明した。「今のLiverpoolを見ていると、私の現役時代(1978–84)のチームが思い起こされる。やるべきことは、相手チームより動くこと。それが出来れば、相手より能力のある選手が揃っている分、必ず勝てる」。

    Liverpoolファンは、政府やプレミアリーグのお偉いさん方の「危惧」に苦笑しながら、根拠のない疑いを晴らすためにも、自主規制を唱え合っていた。「庭にプロジェクターを設置して、数人の友人と、ソーシアル・ディスタンスを保ちながら一緒に試合を見ようと思っている」と、あるファンは語った。「同じことを考えている人がたくさんいるらしく、プロジェクターが売り切れていた」。

    「優勝杯掲揚の瞬間にスタンドにいることが出来ないと考えると、落ち込んでしまう」と、別のファンは、寂しげに笑った。「でも、来年か再来年には、スタンドでチームと一緒に優勝を祝えるのだと楽しみにしている。今のチームは暫くは勝ち続けてくれると信頼しているから」。


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    プロフィール

    ピーエルエフジェイ

    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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