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    スペシャルな人格を持つスペシャルなGK

    シーズン再開の兆しが見えかかった5月31日に、現3部のルートンタウンの地元紙ルートン・トゥディが、1982年9月に当時1部にいたルートンがアンフィールドで3-3と引き分けた試合で、「コップの人気を勝ち取った代理GK」のエピソードを掲載した。1-1だった時点でGKを負傷で失うことになったルートンは、急遽ライトバックのカーク・スティーブンスがゴールを守ることになった。しかも、ルートンがスペアのGKシャツを持っていなかったため、スティーブンスは借り物のシャツでゴールに立った。

    「Liverpoolのシャツを着てコップの前に立った私に対して、コップは'オンリー・ワン・スティーブンス'チャントで歓迎してくれた。そこで、私はコップの方を向いて十字を切り、お祈りをした。その瞬間に私はコップの人気者になった!」と、スティーブンスは笑顔で振り返った。最初のシュートをセーブしたスティーブンスは、コップに向かってガッツ・ポーズをするとコップは盛大な拍手をくれたという。

    スティーブンスの場合は代理という特異性はあったが、コップ前のゴールに立つ相手GKに対して、コップは必ず温かい拍手で迎える伝統は今でも続いている。外国から来たばかりのGKなど、コップが自分に向かって拍手しているとは気づかずに無視すると、コップはブーイングを送る。後からチームメートに教えられて、次にコップの前に立った時には自分からコップに挨拶すると、より盛大な拍手が返ってきた、という微笑ましい話もある。

    そのような「GK好き」のコップが、LiverpoolのGKに対して、日常会話の中で誇りを語る機会は、比較的少ないまま年月が過ぎた。そして、ロックダウン中のよもやま話的な記事として、地元紙リバプール・エコーがアリソンに対する評価を掲げた。

    「Liverpoolのクラブ史上ベストGKとして、今でもレイ・クレメンス(在籍は1967–81、470出場)を上げる人が圧倒的に多い。試合数でクレメンスの次に当たるのがブルース・グロベラ(在籍は11981–94、440出場)だが、チームに対する影響度という面では、アリソンは既にグロベラに並んだと言えるだろう」とは、同紙の結論だった。

    それはまさに、Liverpoolファンの意見そのものだった。

    2018年夏に£65mの移籍金でローマからアリソンを獲得した時には、事前にリバプール・エコー紙が、「ユルゲン・クロップは大金を費やしてGKを獲得したことがない」と噂の火消しに回っていただけに、Liverpoolファンは信じられない喜びに浸り、絶大な期待を抱いた。そして、その期待を上回ったアリソンは、ファンの絶対的な支持を受けるに至った。

    90分を通して高い集中力を維持し、勝敗に関わるセーブとデリバリーに、「£65mのバーゲン」と、ファンは笑顔を隠せなかった。

    更に、1月のマンチェスターユナイテッド戦で、93分のモー・サラーのゴールをアシストしたアリソンが、全力疾走してコップの前でサラーと一緒に祝った場面は、ファンの人気をこの上なく高めるに至った(試合結果は2-0でLiverpoolの勝利)。

    「あれはトレーニングで鍛えたもので、偶然ではない。相手選手の位置やモーの走りなど条件があったので、殆ど出す機会はなかっただけで」と、アリソンは、ロックダウン中のインタビューで、その時のパスについて振り返った。

    「そして、あのゴールは試合終了直前だったので、僕もみんなと一緒にお祝いしようと思って走った。みんなは疲れていたらしく、追い抜いて一番最初にモーのところに到達した」。

    試合後のインタビューで、ユルゲン・クロップは、「常に冷静で興奮することなどないアリソンが、一番乗りだったところが素晴らしかった!」と、ユーモラスに語った。

    アリソンのパフォーマンスに対する賞賛は誰もが口にするが、ピッチ外での人格的な側面について、ライバルチームのGKが晴天のへきれきのごとく証言したことがあった。

    Liverpoolが今季初敗戦を喫した3月のワトフォード戦(試合結果は3-0でLiverpoolの敗戦)の翌日に、ワトフォードのGKベン・フォスターが、アリソンのゲーム・シャツをチャリティ・オークションに出すというメッセージをSNSにポストした。大きな失望を感じていたに違いないアリソンが、快くチャリティに協力してくれたと、フォスターは感謝を込めて「レジェンド」と書いた。

    今季開幕直後のアリソンの負傷のため、短期契約でLiverpool入りし、現在は4番目のGKとしてトレーニングでチームメートを助けているアンディ・ロナガンは、「チームにいる第三者のような存在として証言するが」という前置きで、リバプール・エコー紙のインタビューで明かした。

    「今のLiverpoolは、僕の知る限り、最も誠実で友好的な選手たちばかりだ」と、プレストン、リーズ、ボルトン、フラムなど多くのクラブを経験しているロナガンは語った。「そして、アリソンはこれまで出会った中で最も低姿勢な人だ。世界のベストGKというのに」。

    ユルゲン・クロップが、ロナガンの言葉を引き取った。「GKとしての能力は元々分かっていたが、人格者という面では期待を大きく上回った」。

    「テクニカル面も、どんなに良くても満足せず、もっと向上すべく努力し続けている。本当にスペシャルな人間だ」。

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    プロフィール

    ピーエルエフジェイ

    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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