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    本来の目標に向かって

    2月29日、Liverpoolはアウェイでワトフォードに3-0と大敗して、プレミアリーグ18連勝、および今季無敗の記録をストップした。28試合目にして初敗戦のニュースは、必然的にヘッドラインを飾ったが、「この敗戦はLiverpoolの崩壊の突破口?」という疑問を挟む人はなかった。

    その翌日にリーグカップ決勝戦でアストンビラを2-1と破り、同カップ3連覇に輝いたマンチェスターシティの選手たちも例外ではなかった。試合後のインタビューで、Liverpoolの初敗戦についての感想を問われたオレクサンドル・ジンチェンコは、「Liverpool?みんな驚いたことは確かだ。でも正直、あまりにも差があり過ぎて、Liverpoolの勝敗を意識する余裕は我々にはない」と肩をすくめた。「我々の目標は、残されたトロフィーであるFAカップとCLを取ることだ」。

    その日、ウェンブリー・スタジアムでシティのリーグカップ優勝を見届けたノエル・ギャラガーが、BBCのインタビューで、「イスタンブールで、シティはLiverpoolを1-0と叩いて優勝する」と、CL決勝戦の「予測」を語った。

    「そして、優勝杯をスタジアムに置いて帰る」。

    これは、2月15日にイングランド・フットボール界に衝撃を投げかけた、財政フェアプレイ(FFP)違反による2年間CL出場停止処分が背景にあった。現在は、シティがUEFAの処分撤回を求めて争っている最中で、仲裁機関の判定を待っているところだった。その判決が今季中に降りて、シティが敗訴した場合は、たとえ今季優勝しても、来季はその優勝杯を守ることができなくなる。

    UEFAのFFPとは、「収入の範囲内でチーム編成する」原則を各クラブに義務付けたものだった。端的に言えば、UEFAの規定による「収入」合計から「支出」合計を差し引いた赤字額が、年間で一定額以内に抑えるという規則だった。

    収入とは、リーグやUEFAから支給される、成績に応じた賞金やTV放送料金、試合のチケット代やクラブのオフィシャル製品の売上金、そしてスポンサーからの収入という項目が該当する。つまり、リーグ順位やカップ戦で良い成績を上げれるチームは賞金が増え、スタジアムの収容人数が多いクラブは入場料収入が増え、ファンが多いクラブはオフィシャル製品の売り上げも増収源となる。多額のスポンサーを獲得する財政担当を持つことも重要だ。

    いっぽう支出の方は、移籍金のネット(選手獲得の支出から選手放出による収入を差し引いた額)、人件費(選手や監督コーチ陣に支払う給料)が主要項目で、近年はスーパースターを獲得するために給料の高額化に歯止めがかからない状況にあり、後者の方が圧倒的に大きな額になっている。昨2019-2020季の実績で、プレミアリーグで人件費が最も多かったのはマンチェスターユナイテッドで、年間の総額は£332mだった。

    ただし、一般の企業会計と異なり、FFPでは「支出」に計上されない支出項目がある。それは、スタジアムやトレーニンググラウンドの増改築などの設備投資と、アカデミーチーム経営にかかる費用全般(若手育成資金)だった。収入の方では、オーナーの懐から入る資金は、FFPでは「収入」として認められない。スポンサー収入も、オーナーの縁故企業だった場合にはFFP上は「収入」とされない。シティの「FFP違反」は、本来は除外対象の収入を「スポンサー収入」に計上し、赤字額をFFPの規定内に抑えて申告していた(容疑)というものだった。

    シティの処分が発表された時、圧倒的多数の中立のファンやアナリストが、「FFPの是非はさておき、規則は規則。各クラブはその規則を守るという前提でUEFA主催のCLやELに参戦しているのだから、違反した場合は締め出されても仕方ない」という反応だった。

    その原則に関しては、シティ・ファンも同意していた。ただ、本当にクラブが違反したのか?という疑問に対する答えは誰も持っていなかった。「優勝杯をスタジアムに置いて帰る」というノエルの発言は、ファンの苦悩を表現していた。

    Liverpoolの連勝記録をストップした試合の後で、ワトフォード主将のトロイ・ディーニーは、「我々の本来の目標が残留であることは変わらない。Liverpoolに勝ったからといって、獲得ポイントは3でしかない。残り試合で十分なポイントを取らなければ、この勝利は何の意味もなくなる。2か月後に振り返って、『降格してしまったが、Liverpoolを倒したのだから我々は立派だった』と胸を張るこはあり得ない」と、冷静に語った。

    「降格や倒産、出場停止の危機に直面しているファンに比べて、我々はなんと恵まれているかと改めて実感させてもらった。負けた悔しさを44試合ぶりに思い出したのだから」と、Liverpoolファンは笑顔で頷いた。

    「ずっと勝ち続けることはあり得ない。いつか負けるのだし、これだけの戦績を作っている選手たちは必ずこの敗戦から立ち直って、本来の目標に向かって突き進むだろう」。


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    ピーエルエフジェイ

    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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