FC2ブログ

    惑星オリジ

    12月4日のマージーサイドダービーを控えて、試合のオフィシャルが発表になった時に、両ファンから一斉に同じ反応が上がった。レフリーのマイク・ディーンは、リバプール市とはマージ川を隔てた隣町に当たるトランメア・ローバーズの地元ウィラル所属で、トランメアのファンとして登録していた。エバトンとLiverpoolの両方にとって「地元」に当たるディーンがマージーサイドダービーのレフリーを勤めるとは、以前は考えられないことだった。

    しかし、昨季の4部プレイオフ決勝で、トランメアのスタンドで一ファンとして熱烈な声援を送り、3部昇格決定の瞬間には周囲のファンと抱き合って喜んだディーンの様子を、居合わせた誰かが収録してインターネットで公開したことから、「プレミアリーグのレフリーが、あんな風に自分のチームを熱心に応援するとは微笑ましい」と、ファンのディーンに対する好感度が一気に増大した。

    必然的に、Liverpoolファンの間では、「今回のダービーでは中立の判定が期待できるだろう」と、安堵感が漂った。並行して、「ディボック・オリジは間違いなくスタートするだろう」と、誰もが自信満々に予測した。

    昨季後半、特にCL準決勝のバルセロナ戦(試合結果は4-0)とCL決勝(対トットナム、試合結果は2-0)のヒーローとなったオリジが、長期負傷欠場およびローン先での失意を克服したきっかけとなった、昨季12月のダービー(試合結果は1-0でLiverpoolの勝利)の96分の決勝ゴールは、オリジにとってはアンフィールドでのダービー連続ゴールだった。

    ふたを開けると、ファンの予測はことごとく的中した。

    レフリーの名前がヘッドラインを飾るような誤判定は一切なく、世間の注目は本来あるべき対象(試合)に集中した。言うまでもなく、先制ゴールを含め2得点で、ダービーでの通算得点を5としたオリジに熱い視線が注がれた(試合結果は5-2でLiverpoolの勝利)。

    この試合の実況放送で、BTスポーツの解説者として出ていたベルギー代表監督のロベルト・マルティネスと、元アシスタントのティエリ・アンリは、ベルギー代表チームでアンリと1対1のトレーニングを積極的にこなすなど、オリジの熱心な練習風景を披露した。

    それら賛辞を聞きながら、Liverpoolファンはオリジに対する支持を一層強めた。

    折しも、ジェームズ・ミルナーが先月リリースしたばかりの本「フットボーラーに質問」で、オリジに関するエピソードを語った一節がインターネット上で公開され、Liverpoolファンの間で大きな話題になったところだった。

    「オリジってこんな人だろう、と思っていた想像が的中していたと証明されたような証言だった」と、ファンは、オリジへの深い愛着を込めて笑いを交わした。

    それは、「ディボック・オリジと出会わなかったらあなたの人生は違ったものになっていたと思いますか?」という質問を受けて、ミルナーが「絶対、そう思う!」と答えたところから始まった。

    「オリジは本当にユニークな人材で、自分の世界に住んでいる。まさに『惑星オリジ』だ」と、ミルナーはオリジの真相を明かした。「4か国語を流ちょうに話すインテリで、フットボールでは今の地位を確立するまでに注いだ努力は並大抵ではない。いっぽう、ピッチ外では桁外れのリラックスぶり。ストレスとは縁がない人で、その朗らかさはチームメートに明るい笑いと緊張緩和の波を振りまいている」。

    チームのミーティングは、殆どの選手が早く来ているのに、オリジは絶対に30秒より前には来ない。いつも最後でギリギリに到着するオリジの姿に、チーム全員が大笑い、ストレスは一気に吹っ飛ぶ。バスの中で忘れ物を発見したら、誰もが「あ、またディブ(オリジ)だ」と笑う。リラックスの塊のようなオリジは、チームトークで、監督の言ってることを聞いてるのか?そもそも、対戦相手のチームはどこかすら忘れているのでは?と疑うこともしばしば。でも、ビッグ・マッチでビッグ・ゴールを決めるところを見ると「あ、やっぱり監督の言葉を聞いていたんだ!」と思う。

    「昨季のダービーで、96分の決勝ゴールを決めた時に、オリジは(何を思ったか)ネットからボールを取ってセンターサークルに全力疾走した。まるで、あと1点取らねば勝てないと思っていたかのように。その時の真意を、今度本人に質問してみようと思う。ともあれ、オリジと出会わなかったら、人生はもっとつまらないものになっていただろうと思う!」と、ミルナーは締めくくった。

    かくして、Liverpoolのチーム全体に明るい笑いをもたらしているオリジは、今回のダービーの勝利について、「みんなが楽しめる試合が出来て良かった」と語った。

    「アンフィールドの声援はスペシャルで、試合もスペシャルだった。我がチームは楽しんで試合ができた。監督が信頼して試合に出してくれて、その信頼に応えることが出来たので僕は嬉しかった。勝てたし、チーム全体がLiverpoolの選手として試合に出られることを心から楽しんだ」。

    そう言って、本当に嬉しそうに笑ったオリジに、ファンの拍手は止まなかった。

    コメント

    非公開コメント

    プロフィール

    ピーエルエフジェイ

    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

    最新記事
    最新コメント
    リンク
    検索フォーム
    RSSリンクの表示
    QRコード
    QR