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    ヨーロピアン・チャンピオンの代償

    11月11日に皮切りしたインターナショナル・ウィークは、月曜日のランチタイムに、イングランド代表チームの合宿所の食堂で発生した、ラヒーム・スターリングがジョー・ゴメスに襲い掛かった事件の話題で埋め尽くされた。事件発生から数時間後に、スターリングを木曜日のモンテネグロ戦(試合結果は7-0でイングランドが勝ち、ユーロ2020本大会出場決定)から外すという処分が発表された。

    スターリングは、ここ数年イングランド代表チームでは重要な戦力になっていたことに加えて、人種差別事件に対して毅然とした態度を取るなど、モラル面でもリーダー的な存在だっただけに、今回の事件はイングランド中に大きな衝撃となった。少なくないアナリストが、「内部で起こった事件だから公表すべきではなかった」と、FAおよびガレス・サウスゲートの判断を批判した。

    「あの事件は、代表チームの選手やコーチ、大勢のスタッフがいる前で起こったため、隠ぺいして『内部で処理する』ことは不可能だった」と、翌日のテレグラフ紙が報道した。サウスゲートが代表監督に就任して、最初に施した改革の一つが、「代表チーム内ではクラブ間の部族意識を取り払い、チームメートを尊重すること」だった。そのため、代表チーム入りした時には、スタッフも含め全員と握手して挨拶することが奨励された。

    「ゴメスはその慣習に従い、スターリングに握手を求めた。スターリングが座っていたため、かがんで手を差し出した。すると、スターリングはいきなりゴメスの首を押さえつけた。最初は、周囲の人々はスターリングがジョークでふざけたのだろうと思った」と、同紙は続けた。事態に気づいて、数人の選手が止めに入った。ゴメスの目の下の傷は、その時に負ったらしいという。

    「仲介役として、ジョーダン・ヘンダーソンが抜擢された。ゴメスのクラブ主将であり、スターリングとは元チームメートであり親しい仲という立場上、ヘンダーソンが最適任者だった。ヘンダーソンは出場停止のためその日は代表チーム入りしていなかったが、すぐに電話で二人と会話し、自ら駆け付けて二人と面談した。渋るゴメスを説き伏せて、和解を言い出す役を仰せ付けた。スターリングは、その時点では自分のやったことを後悔し、反省モードだった」。

    そしてサウスゲートは、リーダー選手4人(ヘンダーソン、主将のハリー・ケイン、ファビアン・デルフ、ハリー・マグアイア)とミーティングを行い、スターリングに処分を科して事件に幕を下ろすことになった。

    しかし、世間は事件を大きくした。モンテネグロ戦で70分にサブで出場したゴメスに対して、スタンドのイングランド代表チームの「ファン」は大音量のブーイングを浴びせたのだった。

    「怒りで目が真っ暗になったが、驚きではなかった」と、Liverpoolファンは、イングランド代表チームの「ファン」に対する批判を表明した。

    メディアは、ブーイングした「ファン」に対しておざなりに批判したものの、生放送中に電話してきたファンが、自慢げな口調で、「ゴメスはLiverpoolの選手だからブーイングした」と言った時には、まるで面白いジョークを聞いたとばかりに笑う人すらいた。

    「ゴメスは、Liverpoolに戻ってきた時に、本物のホームに帰ってきたとホッとするに違いない。今回のことで、我々ファンはゴメスへの声援をより高める決意が強まった」と、Liverpoolファンは真顔で語り合った。そして、「今回の事件で、ヘンドが真の主将だということが再確認された」と、誰からともなく声が上がった。

    「突発的で困難な事態で、頼れる存在として視線が向かうのはそれだけの理由があるから。そもそも、スターリングがゴメスに対して腹に一物持ったきっかけは、前日の試合で二人がにらみ合った場面だと思う(試合結果は3-1でLiverpoolの勝利)。それは、ヘンドが交代して右サイドのカバーが薄くなった後で、スターリングの動きが活発化した。ヘンドの重要性はピッチの上でも明らかだった」。

    Liverpoolファンの意見を裏付けたのは、元マンチェスターシティのマイカ・リチャーズだった。イングランド代表チームのユーロ予選が終わった後のハイライト番組で、「今のイングランド代表チームで、ワールドクラスと言える選手は、ハリー・ケインとジョーダン・ヘンダーソンだけ」と、リチャーズは強調した。

    「ヘンダーソンは、ピッチ外でのリーダーシップは誰もが認めるところだが、ピッチ上でも同じだ。以前はヘンダーソンのことを批判する人は少なくなかった。でも、彼はここ3-4年間ずっと安定して高いレベルのプレイを維持している。そして、今やヨーロピアン・チャンピオンだ」。

    折しもスコットランドでは、元代表選手のケビン・ギャラハーが、「今の選手たちは、母国代表チームでプレイすることを重要だと思っていない」と、批判を唱えたところだった。「プレミアリーグやCLで実績のある選手が代表チームにいるはずなのに、それら選手たちは、代表チームで試合に出て負傷を負えばクラブに打撃を与えるから、と消極的になっている。代表チームを外れるか、試合に出ても『負傷しないように』と手を抜く」。

    具体的に名は上げなかったものの、アンディ・ロバートソンが負傷のためスコットランド代表チームから外れた直後に出たことからも、矛先は明らかだった。

    かくして、Liverpoolの選手たちが代表チームで失意を受ける場面に直面して、Liverpoolファンは冷静に頷き合った。「我々が強いから、風当たり激しくなるのだ。これはヨーロピアン・チャンピオンの代償。もっと勝ち続けて、ブーイングも批判も疲れ果てたと言わせてやろう」。


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    ピーエルエフジェイ

    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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