FC2ブログ

    マンチェスター対マージーサイドのライバル意識

    2016年末に、マンチェスター市長選にアンディ・バーナムが出馬を決めたことで、「スカウサーが市長になる?」と、マンチェスター市内は蜂の巣をつついたような騒ぎになった。リバプール市出身のエバトン・ファンで、労働党の国会議員だったバーナムは、ヒルズバラ悲劇の最判実現に大きな役割を果たした人だった。

    さっそく地元紙マンチェスター・イブニング・ニュースが、「マンチェスター対マージーサイドの伝統的ライバル意識」という記事を掲げた。「わずか35マイルの距離にある両都市は、通算45年間に渡ってイングランドのフットボール界をほぼ独占した二大クラブが、その都市間競争を代表してきた」と書いたのは、シティ担当記者だった。

    マンチェスター対マージーサイドのライバル意識は、19世紀の産業革命に端を発した、と同記事は続けた。マンチェスター市の工場で生産された綿織物が、リバプール市の港を拠点として世界に広がる中で、「物流コストが高すぎる」ことに不満を抱いたマンチェスター市は、独自の搬送ルートを作るべく運河を建造したが、失敗に終わった。「我々が工場で手を汚して作った綿織物を、運ぶだけで莫大な費用を要求するスカウサーは、怠け者」という反感が、マンチェスター市民に根付いたという。

    「リバプール市が連続で国内最悪の失業率を記録し始めた1980年代に、アンチLiverpoolの替え歌として、ユナイテッド・ファンの間で『サイン・オン(※You'll Never Walk Aloneのメロディで失業ネタの歌詞)』が定番になったことは有名な話だが、両都市間のライバル意識はもっと前から続いていた」。

    そのような混乱の中で、2017年5月、当選したバーナム市長は、就任の挨拶で「地元のクラブであるシティとユナイテッドを盛り上げたい。特にLiverpool戦は心から応援します」と言って、市民の笑いを引き出した。

    それから2年半が経過し、国内最悪の記録を抱えるホームレス問題への取り組みなど、バーナム市長の仕事を評価する声が、最初は「スカウサー」と顔をしかめていたユナイテッド・ファンの間でも上がるようになった。同時に、フットボール界でマンチェスター市の「対マージーサイドのライバル意識」を代表する顔が、ユナイテッドからシティへと移転した。

    「シティ・ファンの、Liverpoolに対するライバル意識はこの上なく高まっている」と、「スカウサーが市長になる?」記事を書いたマンチェスター・イブニング・ニュース紙の記者が語った。

    その最大の原因は、2018年4月のCL準々決勝で、アンフィールドでの試合前にリバプール・ファンがシティのチーム・バスに缶などを投げつけた事件だという(試合結果は3-0でLiverpoolの勝利)。けが人は出なかったものの、バスが故障するほどの衝撃で、シティのチーム一行に影響を与えたことは否定できなかった。更に、マージーサイド警察は容疑者を特定できず、逮捕者なしのまま捜査を打ち切ったことも、シティ側の不信感を強めていた。

    そんな中で、今回の11月10日のアンフィールドでのプレミアリーグ戦に先駆けて、シティのクラブからマージーサイド警察に対して「チーム・バスの安全を保障して欲しい」という要請が上がった。

    「あの事件は言語道断だった。しかし、その後で、昨季のアンフィールドでのリーグ戦(試合結果は0-0)では何も問題は起こらなかった」と、リバプール・エコー紙はトーンを下げて報道した。

    それに対して、ユルゲン・クロップは改めて謝罪を表明した。「あの事件は我々の側が起こしたものだった。そのせいで、シティの人たちが身の危険を感じているとしたら、我々が悪いのだから謝るのが当然だ。あのようなことは二度と起こしてはいけない」。

    ペップ・グアルディオーラも、リバプール・ファンへの敬意を表明した。「あのバス襲撃事件のことは、大嫌いだ。でも、私はアンフィールドのファンの大声援は素晴らしいと思っている」。

    グアルディオーラの言葉は、単なるけん制ではなかった。バルセロナが昨季のCL準決勝で4-0と逆転を食らった試合について、母国スペインのメディアで「アンフィールドのファンの大声援」を称賛するコメントを出していたことからも明らかだった。

    「アンフィールドのファンの大声援は、両チームの直接対決に際して影響を与えると思うか?」という質問に、マンチェスター・イブニング・ニュース紙の記者は即答した。「重要な影響を与えると思う。昨季のエティハド・スタジアムで、シティがLiverpoolに2-1と勝った試合でも、シティ・ファンの大声援が大きな要因だった」。

    その通り、試合は3-1でLiverpoolが勝利を収めた。

    「マンチェスターとマージーサイドは、どちらも失業やホームレスなど深刻な社会問題を抱えている産業都市で、伝統的に労働党の地盤という両市民が、社会的バックグラウンドが酷似しているからこそ、ライバル意識が高まる。この両者が、高いレベルのフットボールを競うという、本来のライバル意識に集中できるようになって欲しいと願っている」。

    コメント

    非公開コメント

    プロフィール

    ピーエルエフジェイ

    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

    最新記事
    最新コメント
    リンク
    検索フォーム
    RSSリンクの表示
    QRコード
    QR