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    去って行った選手たち

    6月21日、フェルナンド・トーレスの引退声明がLiverpoolファンの間でも話題となった。トーレスが2011年1月の期限日ぎりぎりに移籍リクエストを出し、ライバルのチェルシーへと去って行ったことで、ファンに衝撃を与えたことは周知の通りだった。その後、トーレスが悪名高き前オーナーが残した負の遺産の犠牲になったこと、具体的には、W杯前の微妙な時期に負傷状況を偽られたなど、クラブに対する不信感を募らせたことがきっかけだったと判明し、ファンの反感は鎮静化した。さらに、トーレス本人が、折に付けLiverpoolへの愛情を表現したこともあり、ファンの反応はほぼ正常化していた。

    「Liverpool時代(2007–2011)の、特に最初の2年間のトーレスは、ワールドクラスのストライカーだった。振り返ると、本人のキャリアのピークをLiverpoolで過ごしたことになる。ファンとしては、数えきれない程の思い出を残してくれたトーレスに心から感謝したい」と、Liverpoolファンは、異口同音に引退するトーレスへのメッセージを捧げた。

    折しも、そのトーレスと入れ替えで入ってきて、3年半後に去っていったルイス・スアレスが、ESPNが選出した「スポーツ界の悪者」ランキングで首位を取ったニュースが伝わったばかりのことだった。2位はジョーイ・バートン、3位はマイク・タイソン、4位はジョゼ・モウリーニョ、5位はディエゴ・コスタと、そうそうたるランキングだった。

    「スアレスが、プレミアリーグの他チームのファンから総すかんを受けていたことは否定できない」と、Liverpoolファンは苦笑を浮かべた。「Liverpoolの選手だった時には(2011–2014)、そのワールドクラスのプレイを堪能させてもらったが、同時に、在籍中にクラブの名誉を傷つけるような大きな問題を、重ねて起こしたことも事実(※)」。
    ※2013年夏に、CL出場を求めてアーセナルへの移籍をごり押ししようとしたこと、その準備として噛みつき事件を起こしたこと。2011年のマンチェスターユナイテッド戦で、相手パトリス・エブラに対して人種差別的言葉を発して処分されたこと。2014年W杯で噛みつき事件を起こし、バルセロナへの移籍をごり押ししたこと。

    「スアレスが、試合に勝つためなら手段を択ばないことは知っていた。でも、過去の経緯を考えると、CL準決勝では、Liverpoolに対してもう少し敬意を示すことを期待していた」と、ファンは肩をすくめた。

    それは、5月1日のカンプノウでの1戦目の前に、「息子はマージーサイド生まれだし、僕にとってLiverpoolは特別なクラブ」と言った、その唇が渇かないうちに、試合では「勝つためなら手段を択ばない」本能を出していた。スアレスの執拗な「ダイブ」に一言付けたアンディ・ロバートソンに対して、ハーフタイムにトンネルの中で暴言を吐いた場面が、BTスポーツのカメラに映った。更に、3点目が決まった時に、スアレスがロバートソンを上から見下ろして、挑発的な笑いを浴びせた姿も、ファンの目に止まった。

    スアレスの「勝つためなら手段を択ばない」行動は、6日後のアンフィールドでも続行した。コップの目の前で、後ろにいたロバートソンを蹴り上げ、それが原因でロバートソンは傷の手当てが必要となった時、ファンの堪忍袋の緒が切れた。「F***Off(この野郎、という感じの叫び)、スアレス」のチャントがコップ・スタンドから沸き起こった。

    「スアレスは、Liverpoolファンとの感情的なつながりを完全に焼き落とした」と、リバプール・エコー紙は指摘した。

    それから5週間以上経った6月15日に、コパ・アメリカを控えてスアレスが、アンフィールドでの大逆転CL敗退(試合結果は4-0、通算4-3でLiverpoolが勝ち抜き)を「人生最悪の出来事」と告白した。「姿をくらませたかった。子供を学校に送って行くのも気が引けた」。前季にもローマに似たような大逆転を食らった後で、同じことが起こるとは思わなかった?との質問に、スアレスは首を横に振った。「我々はバルセロナだから、そんなことには絶対にならないと自信があった」。

    その言葉を引用したリバプール・エコー紙は痛烈だった。「スアレスは、アンフィールドのマジックを知らないはずはなかった。バルセロナだから、と名前にあぐらをかいて、舐めてかかったのが敗因」。

    Liverpoolファンは、地元紙の記事に頷きながら、「スアレスはアンフィールドのヨーロピアン・ナイトを経験しなかったから、予測できなかったのは仕方ない」とつぶやいた。「トーレスはCLで活躍した思い出を作ったがトロフィーには縁がなかった。スアレスはリーグカップ優勝(2012年)があったがCLには出られなかった。ワールドクラスの選手が野心を実現するプラットフォームではなかったことは確かだ」。

    通算6回目のCL(ヨーロピアン・カップ)優勝祝いの宴の後で、ユルゲン・クロップが言った、「6月1日のマドリードは我々にとって最終節ではない。次の章のイントロを書き始めたところだ」という言葉に胸を熱くしながら、ファンは語り合った。

    「去っていった選手たちが過去の記憶に収まった後で、今のLiverpoolは新たなチャプターに進んだ」。

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    ピーエルエフジェイ

    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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