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    その名はフィルジル・ファン・ダイク

    3月のインターナショナル・ウィーク中に、スペインとの対戦を控えていたノルウェー代表のジョシュア・キングが、ワールドクラスのディフェンダーと定評あるセルヒオ・ラモスとの対決について、「心配など感じない。もっと凄い強敵を知っているから」と、冷静に言った(試合結果は2-1でスペインの勝利)。プレミアリーグ通のジャーナリストから、「それは、Liverpoolのフィルジル・ファン・ダイクのことですか?」と質問されて、ボーンマスのエース・ストライカーであるキングは頷いた。「僕が避けたいと思うセンターバックは彼一人だけ。彼は僕がこれまでに対戦した中で最強のベスト・ディフェンダー」。

    ファン・ダイクを「避けたがる」ストライカーはキングだけではなかった。ワトフォードのトロイ・ディーニーは、持ち前のユーモア・センスで、「僕はファン・ダイクが大嫌い!」と笑った。「彼はストライカーにとって悪夢のようなディフェンダー。背が高過ぎるし、強過ぎるし、ボール・テクニックも凄過ぎるし、闘志が強過ぎるから、到底かなわない。しかもスピードもある。シャツの上からオーデコロンを吹きかけて試合に出るような選手で、おっいい匂いだと思った瞬間に、僕は追い抜かれて間抜け役をやらされている」。

    プレミアリーグのストライカーたちが次々に発する「ファン・ダイク嫌い」宣言を、地元紙リバプール・エコーは誇らしげに引用しながら、ファン・ダイクがLiverpoolのディフェンスにもたらした効果を数字で表現した。2018年1月にファン・ダイクが入ってくる前には、23試合で28失点とザルのような守りが目立ったLiverpoolは、ファン・ダイクが来てからというもの、2018-19季までの通算で52試合32失点と、失点ランキング首位に立った。

    実際に、ファン・ダイクに対する高い評価は、イングランドのフットボール界では既成事実化していた。例えば、EL決勝戦でチェルシーに4-1とぼろ負けしたアーセナルに対して、「1-0アーセナル」の異名をとった名ディフェンダーであるリー・ディクソン(アーセナル在籍は1988–2002)は、「今のアーセナルは、たとえフィルジル・ファン・ダイクが来ても修復不可能なくらいにひどい」と叫んだ。いっぽうで、ファンが良いプレイをしたディフェンダーを誉める時に、「今日のクリス・スモーリングなら、ファン・ダイクの隣に入っても恥ずかしくないだろう」などと言うようになった。

    ところが、そのファン・ダイクが、6月7日のネーションズ・リーグ準優勝の試合中に、対戦相手のイングランドの「ファン」から集中的なブーイングを受けたことで、イングランドのメディアやアナリスト、良心的なファンの間で物議をかもした(試合結果はオランダが3-1で勝利)。

    「PFA最優秀選手に輝き、CL優勝を達成し、ピッチ内外で広く尊敬されているファン・ダイクに対して、いったい何の目的でブーイングをするのか?」と、BBCのジャーナリストが強い文面で批判を唱えた。「ファン・ダイクが私生活で赤十字を熱心にサポートし、クリスマスに120人の病気に苦しむ子供たちをアンフィールドに招待するなど、人目に付かないところでチャリティに従事していることを、これらブーイング軍団は知っているのだろうか?」

    Liverpoolファンは、「こういう奴らがいるから、スカウサーはイングランド人ではない、という態度に固執したくなるのだ」と、怒りに震えながらBBCの批判に深く同意した。

    同時に、オランダのファンが、ファン・ダイクの歌を歌ってそれらブーイングに対抗した様子は、Liverpoolファンの心を温めた。2018年10月29日のカーディフ戦(試合結果は4-1でLiverpoolの勝利)で開始し、以来Liverpoolファンの定番になった歌だった。

    「ファン・ダイクが来る前は、コーナーを与える度に爪を噛んでいたが、ファン・ダイクが来てからは安心して見ていられるようになった」と、Liverpoolファンは笑顔で語り合った。ダーティ・オールド・タウンのメロディーに、「わがチームのセンターハーフ わがチームのNo.4 彼の守りを見て、彼の得点も見る 冷静にパスを出す その名はフィルジル・ファン・ダイク」という詞を乗せたその歌は、文字通り、Liverpoolがコーナーを得る度にスタンドから合唱が出るようになった。

    そして、イングランド代表ファンのブーイング騒動がひと段落した6月14日に、ファン・ダイクがLiverpoolファンへの心のこもったメッセージを出した。

    「僕がLiverpoolに来たかった理由の一つは、熱心で素晴らしいファンがいたから。真のファンという人々がいたから。このクラブに捧げている人々は、何があってもチームをサポートしてくれる。勝敗に関わらず常に応援してくれるファンがいるから、我々選手たちはもっと頑張ろうという勇気が湧きます。そして、我々選手はチームとして団結して一緒に目標を達成すべく前進し続けます。僕は、このような選手たちと共に、このファンのために働けることを光栄に感じています」

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    プロフィール

    ピーエルエフジェイ

    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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