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    快勝したかのような無得点引き分け

    昨年12月にネットフリックスのシリーズ物「サンダーランドこそ我が人生(Sunderland Til I Die)」として、サンダーランドAFCのドキュメンタリーが放映された。2017年にプレミアリーグ降格し、翌季3部落ちと負のスパイラルの中で、チームを始め、クラブのスタッフやファンの数々のエピソードが、フットボール・ファンの間で大きな話題を呼んだ。

    そんな中で、マンチェスターでは、ユナイテッド・ファンとシティ・ファンの間で意見は真っ二つに分かれた。それは、2012年5月13日の93:20に、シティがセルヒオ・アグエロの決勝ゴールで3-2とQPRを破り劇的な大逆転リーグ優勝を決めた瞬間に、一足先にスタジアム・オブ・ライト(※サンダーランドAFCのホーム・スタジアム)で1-0と勝っていたユナイテッドの、選手とアウェイ・サポーターの目の前で、サンダーランド・ファンがポズナンをやってシティの優勝を祝ったことに端を発していた。

    「あのポズナン以来、サンダーランド・ファンには心から親近感を抱いていただけに、最近の失墜には心を痛めている」と目を潤ませるシティ・ファンに対して、ユナイテッド・ファンは、「あのポズナン以来、サンダーランド・ファンは天敵。自業自得だ」と目を吊り上げた。

    ただ、2012年当時は、サンダーランド・ファンだけでなく、圧倒的多数のフットボール・ファンが、シティの逆転優勝を心から祝った。それは、1990年代から20年余り続いたユナイテッドの独占を破るべく「チャレンジャー」だったシティに対する、第三者のファンからのエールだった。

    7年後の今季、それ以来3回のリーグ優勝を重ねているチャンピオンのシティに対して、Liverpoolは「チャレンジャー」だった。

    ところが第三者のファンの見解は、圧倒的にチャンピオンびいきだった。Liverpoolファンが「何故我々はこんなに他チームのファンから嫌われているのだろうか?」と苦笑するほどに、世間一般の風は冷たかった。

    その代表的な存在でもあるユナイテッド・ファンの意見は、その背景を説明していた。「シティが優勝しても、それはオイル・マネ―を注いで立ち上げた佐城でしかなく、土壌がない一時的なもの。ストックポート(※マンチェスター市のベットタウン)で半日歓声が上がって終わりというファン層だし。でもLiverpoolが優勝したら、本物の強さが土台にあるだけに、また長年に渡る黄金時代を築くだろう。それに、Liverpoolはメディアのダーリンだから、BBCやITVが夏の間ずっと、毎日1時間のハイライト番組を流し続けるに違いない。ライバル・ファンとしては耐えられない」。

    そのような、ファンの悲痛な叫びが2月24日のマンチェスターユナイテッド対Liverpoolの宿敵対決に反映していた(試合結果は0-0)。「Liverpoolの勝利を食い止めた」と歓喜に沸くユナイテッド・ファンに後押しされて、ユナイテッドの選手一同も「ファンのために頑張った」と勝利宣言(?)を出したことは印象的だった。

    3月3日のマージーサイドダービーも、まさに同じ背景で始まり、同じ結果で終わった。

    エバトン・ファンのLiverpoolに対するライバル意識は今に始まったことではないが、「Liverpoolの首位復帰を阻み、タイトル争いに致命的な打撃を与える」という特別な願いがあった。

    地元を漂う空気を察知していたユルゲン・クロップは、ユナイテッド戦の前から宣言していた。「宿敵との対戦だから『特別に重要な試合』という意識はない。この後も大変な試合が続く。好調のワトフォードの後は、マージーサイドダービー。エバトンはW杯決勝のような意気込みでくるだろうし。我々は常に次の試合に勝つことだけに集中する」。

    そして、その「W杯決勝」という文言が、ダービーを控えて独り歩きすることになった。エバトン監督のマルコ・シルバは、ニヤッと笑って「12月のアンフィールドでのリーグ戦では、Liverpoolはラッキーなゴールで1-0と勝ったが、その時に彼らはまるでW杯決勝に勝ったような喜び方をした」と言った。

    ジェイミー・キャラガーは、「両監督のやり取りは、まさにダービーという感じで微笑ましい」と笑った後で、真剣な表情で締めくくった。「ユルゲン・クロップの言う通り、エバトンにとってはW杯決勝という重要な試合。しかもそれは、単に宿敵からポイントを奪うだけでなく、挫けさせて優勝争いから脱落させることが目標だから、Liverpoolは平常心で臨むことが必須」。

    かくして「W杯決勝に勝った」(=Liverpoolの勝利を阻んだ)エバトンは、ホーム・スタンドの総立ちのファンに向かって、チーム一行は満面に笑みを浮かべて無得点引き分けを祝った。

    その中で、ユルゲン・クロップは冷静だった。「優勝争いの舵をシティに渡してしまったことで、プレッシャーは一層強くなったのでは?」と、試合後の記者会見でつるし上げを食らったのに対し、「私がプレッシャーに負けて深刻になっているように見えますか?」と笑顔で語った。

    クロップの自信は、Liverpoolファンの間に浸透した。「2012年にシティが44年ぶりの優勝を達成した時も、どんでん返しの末に残り数秒までもつれ込んだ。今季も残り9試合でドラマがあるだろう。ファンとしては、挫けずに冷静になって監督と選手を信じて最後まで応援し続ける」。

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    プロフィール

    ピーエルエフジェイ

    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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