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    土曜日3時の試合

    2月9日、Liverpoolはアンフィールドで会心のプレイでボーンマスに3-0と快勝し、2試合続いた引き分けに終止符を打った。僅か2試合の「連続無勝」は、主力の負傷や急病という仕方ない事情があったものの、何に付けても過剰反応のイングランドのメディアは、「Liverpoolはタイトル争いのプレッシャーの前に自滅し始めた」と騒ぎ、特にスタンドのファンの声援が途絶えた状況をクローズアップした。

    ボーンマス戦では、チームもファンも、それら批判を一笑するようなパフォーマンスを披露した。前週のメディアの批判に反論し、ファン擁護の態度を強調したユルゲン・クロップも、ボーンマス戦の試合後には本音を漏らした。「ファンがいつもよりも早く、ウォームアップの時から既にスタンドを埋め始めた様子を見て、とても嬉しかった。チームが成功するためには、ファンと一緒に戦うことが必要。わがファンは素晴らしいということは誰もが知る通り。チームだけでなく、ファンは超一流。ファンのお蔭で65ポイント取れている」。

    この背景には、前2引き分けの、特にやり玉に上がったレスター戦(試合結果は1-1)の後で、ファンの間で自主的な議論が続行していた真相があった。それは、スパイオン・コップ1906というファン・グループを中心に、「スタンドのパフォーマンス向上」のために何をすべきか、活発な意見交換が行われたのだった。

    「ヨーロピアン・ナイトでできていることを、プレミアリーグでもやろうではないか」と、提案が出た。「ボーンマス戦では、いつもより少し早めにスタンドに入って、選手がウォームアップする時に大声援を飛ばして選手に気合を注入しよう」。

    アンフィールドの「ヨーロピアン・ナイト」は有名だが、それはいくつかの条件が集まって、スタンドに特有の空気をもたらしていた。もちろん、CLのチケットはシーズン・チケット・ホルダーを始め、普段から試合に行く回数が多い地元のファンに優先販売されるという規定もあった。

    加えて、夜の試合という要因があった。

    イングランドが2005年に法改正する前は、パブは11:00から23:00の間のみアルコール販売が許されていた(※現在は許可を得れば24時間可能)。そのため、ダービーなどの「ハイセキュリティ・マッチ」はランチタイム・キックオフに変更されることが多かった。現在はTV放送の都合で試合時間が決まるが、2005年以前は、「11:00からパブが開店なので、12:45キックオフの試合の前に酔っ払う程飲む心配がないから」という理由で、ファン同士のライバル意識が強いチームの対戦がランチタイム・キックオフに指定された。

    ヨーロピアン・ナイトは、同じ理由の裏返しだった。地元のファンが仕事を早々に切り上げてアンフィールドに行き、近辺のパブで仲間と再会する。適度のアルコールで会話が弾み、気持ちが盛り上がる中で、新しいチャントや歌の練習が始まる。それがスタンドで特有の雰囲気を作り出していた。

    いっぽう、伝統的な土曜日3時の試合では、若くて体力のある男性が主流を占めるコップが歌とチャントを披露し、残りのスタンドは大半が黙って座ってコップの歌を聞いていた90年代初めまでのアンフィールドのように、全スタンドが声を張り上げる「ヨーロピアン・ナイト」の領域に達することはなかった。

    「何のためにスタジアムに行くのか、原点に立って考えよう」と、スパイオン・コップ1906のメンバーが主張した。「チームをサポートするために行くのであって、選手のミスを見て黙り込んだり、ため息をついたり、批判したりするために行くのではない。サポートする気がない人は自宅でTVを見ていればよい。我々がサポートすれば、ピッチに伝わり、選手が反応するに違いない。29年分のプレッシャーを燃料にして、声援の声を一層高めようではないか」。

    多くのファンがその方針を実行に移したボーンマス戦の後で、ファン・グループの動向を事前にキャッチしていた地元紙リバプール・エコーの記者がメッセージを飛ばした。「スパイオン・コップ1906が主導して、土曜日3時の試合でアンフィールド要塞を実現したファンの勝利」。

    ボーンマス監督のエディ・ハウも、スタンドの貢献に脱帽した。「我がチームは良いスタートを切ったと思ったが、Liverpoolファンは素晴らしいサポートでチームを駆り立てた」。

    その夜のトークスポーツで、元ウィンブルドン(所属は1986–1989、1992–1998)のビニー・ジョーンズが、自らのアンフィールド経験を証言した。「初めてアンフィールドを訪れた試合で、コップの前でコーナーを得た時に、チームメートに作戦を伝えようと叫んだが、コップの大音量にかき消されてお手上げだった。ラッシュアワーの電車みたいな騒音でアンフィールドを仕切る、凄いファンだった。ボーンマス戦では、当時のコップを思い出させられた」。

    地元出身で、自らLiverpoolファンとして生まれ育ったトレント・アレクサンダー・アーノルドは、この日のスタンドの変化に気付いていた。「土曜日3時の試合で、アンフィールドがこんな凄かったのは初めて。今日のアンフィールドは違う、とヘンドに言った」。

    「スカーフ、旗、バナー。何もかもが、僕にとっては初めての経験だった。このサポートが今後も続いて欲しいと願っている。ファンからこんなサポートをしてもらったら、選手は最高のパフォーマンスをする以外にあり得ないと思う。それが、今の我々に必要」。

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    プロフィール

    ピーエルエフジェイ

    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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