ブライトン戦の後で
8月25日、Liverpoolがアンフィールドでブライトンに苦戦を強いられ、1-0と勝った戦の後で、ブライトンの地元紙ブライトン・インディペンデントが、「アルビオンは、超一流GKアリソンの、投資額に見合うスーパーセーブがなければ、首位Liverpoolに同点ゴールという堂々たる試合をした」と、チームを絶賛する記事を掲げた。
「昨季はアウェイでわずか11ポイントしか取れなかったが、アンフィールドで見せたようなプレイを続ければ、今季はその成績を飛躍的に向上させるだろう」と、同紙は誇らしげに結論した。
実際に、Liverpoolは昨季ブライトンには12月のアウェイで5-1、5月のホームで4-0と楽勝だったが、ブライトン監督のクリス・ヒュートンは、ノリッジ時代(2012–2014)にも3試合で15失点と大差の連勝を記録していた。
そして、昨季の初対戦で5-1と世間の予測を裏付けた試合後に、ヒュートンがユルゲン・クロップとの握手を拒否した事件がしばしヘッドラインを飾った。「クロップが必要以上に派手な喜び方をして、大敗を喫し続けているヒュートンに対して傷に塩を塗った」と、全国メディアはクロップ非難に沸いたものだった。
ほとぼりが冷めた頃に、クロップは「ヒュートンの握手拒否事件」の真相を明かした。ファイナルホイッスルの直後にクロップがヒュートンに挨拶に行った時に、たまたま目の前をサディオ・マネが通ったので、クロップはマネを止めて肩を抱いた。するとヒュートンが、「相手チームの監督との握手を最初にやるべきなのに、これ見よがしに自分の選手と勝利を祝うとは失礼だ」と、怒って行ってしまったという。
「私が悪かった。すぐにブライトンのアシスタントに事情を説明して、謝罪を伝えて欲しいとお願いした。最後は許してくれたと思う」と、クロップはしょんぼりした表情で語った。
この話を読んで、Liverpoolファンは一斉に納得した。2016-17季にLiverpoolのプレイヤー・オブ・ザ・シーズンに輝いたマネは、サラーが来て右ウィングから左にポジションが変わった影響もあり、ややスタートに苦戦した。9月のマンチェスターシティ戦(試合結果は5-0でシティの勝利)で退場を食らって以来、調子が低下していた時のことだった。
「全国メディアは、マネの不調の原因は『モー・サラーに人気を奪われたのでねたんでいる』などと悪意に満ちた憶測を書き立てている。そんな時に、ブライトン戦では試合に出られなかったことで気落ちしていたマネに対して、クロップは心配していたに違いない。相手監督に対する無礼を失念するくらい」。
そして、マネの不調はその次のエバトン戦(試合結果は1-1)で、ゴール前でチームメートがフリーだったのに自分でシュートに行き、外したことでどん底を突いた。
その後、レフトバックのアンディ・ロバートソンとの連携が徐々に磨きがかかり、1月のバーンリー戦(試合結果は2-1でLiverpoolの勝利)でマン・オブ・ザ・マッチの活躍を見せたマネは、一気に本来の調子を取り戻すに至った。
「サディオとは何度か1対1で会話した」と、クロップは明かした。「エバトン戦では、パスを出さなかったことで世の中から相当批判が出た。パスすべきだったか?という点ではその通り。ただ、私はそれについては何も言わなかった。ハーフタイムのチーム・トークでも、試合後も。何故なら、サディオの目を見た瞬間に、本人の気持ちが分かったから」。
「人間ならば必ずミスは犯す。ミスは何も悪いことではない。同じ間違いを20回も犯し続けない限りは。1つ2つ良くないことがあっても、他は全て『良い』のだから、良い面を伸ばせばいいプレイが出来るようになる」。
今季のブライトン戦の前に、クロップは、すっかり自信を取り戻したマネについて語った。「サディオは安定して、常に良い動きをしている。自分でもこんなに素晴らしい選手だったのだ、と驚いているに違いないくらいに冴えているし、どんどん良くなっている」。
しかし、その攻撃陣が後半はガス抜きしたかのように収束し、1-0で終わった試合の後で、ブライトン・インディペンデント紙は、Liverpoolの今季の予測で締めくくった。
「ベストとは言えない内容の試合で3ポイントを確保するチームが、本当に『勝てるチーム』というのは真相。昨年のLiverpoolならば、恐らくアルビオンは1ポイントを奪取しただろう。つまり、Liverpoolは引き分けを勝利に変えるアップグレードに成功したということ。今季のプレミアリーグで、マンチェスターシティの独占を破る最有力候補としてLiverpoolを上げる人は多いが、その予測が的を得ていることは誰も否定できない」。