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    エジプトのキング

    6月9日、ナビル・フェキルの移籍話がどんでん返しの末に破断に終わったニュースがヘッドラインを飾った。フランス代表チームがW杯期間中の移籍禁止令を出していたこともあり、開幕前に話を決めるべく状況が急展開した直後の結末だった。

    ユルゲン・クロップがミッドフィールドの補強戦力最優先に上げていたフェキルは、本人もLiverpool入りを強く望んでおり、移籍金額も条件を満たしたことから、「手ごわい交渉相手」として有名なリヨンのジャン・ミッシェル・オラ会長も折れざるを得なかった。地元紙リバプール・エコーは、木曜日にLiverpoolの最高責任者であるマイクル・エドワーズがパリに飛んでメディカルが行われたという報道に添えて、「発表は翌日になるが、移籍は決まっている」と楽観的な記事を掲げていた。

    破断報道は、リヨンのオフィシャルサイトの「6月8日の20:00付でLiverpoolとの交渉は物別れに終わった」という宣言だった。理由の説明は一切なく、Liverpool側からは何ら公式コメントはなかった。失望したファンは、藁にもすがる思いで様々なメディアの矛盾した報道を読み漁り、金額が原因ならば話が再開する可能性はある、という声が乱れ飛んだ。

    しかし、6月10日にエコー紙が「メディカルチェックの結果に問題があったことが原因で、Liverpoolの側から破断を申し入れた」と報道した記事は、フェキル獲得が完全に消えたと指していた。メディカルで問題が発覚したため、Liverpoolはセカンド・オピニオンを求めたが、NGの結論が裏付けられたのだった。それは、発表が遅れたことと、リヨンが破断の原因を明かさなかった理由も説明していた。

    Liverpoolファンは、失望のため息をつきながら、「仕方ないからW杯を見よう。フェキルがひざを負傷せずに試合を終える度に、ファンの間で悲鳴が上がるかもしれないが」と、悲しいジョークを言って笑った。

    しかし、翌6月11日に、エコー紙が「誰も本気にしない、世にも奇怪な憶測記事」という説明付きで引用した、スペインのドン・バロン誌の噂報道に、Liverpoolファンは一斉に腹を抱えて笑った。「フェキル獲得失敗に対してモー・サラーがLiverpoolに不満を抱き、出て行こうと考え始めた」というものだった。

    折しも、レキップ紙の独占インタビューでサラーが、Liverpoolのクラブとファンに対する感謝を表明したところだった。

    サラーは、「10試合目で、ハリー・ケインとセルヒオ・アグエロとほぼ同じ得点数だった時に、得点王を目指そうと決めた」と、意外な真相を明かした。

    「それを実現できたのは、ひとえにチームのお蔭。目標達成の最大の理由は、Liverpoolのプレイスタイル。監督からどんどん得点できるような指示を受けたことと、チームメートがみんな協力してくれたことが大きい。フロント3は合計で多くのゴールを上げた。それは、誰一人として自分中心的な人がなく、全員が全員のために働いたからできたこと」。

    サラーは、目を輝かせて語った。「監督とは友達のような関係。もちろん、監督は監督で、僕は選手だが、その立場を超えて人間的な繋がり築いている。チームメートも、ピッチの上ではもちろん、ピッチ外でも仲間として明るい関係を作っている」。

    そして、Liverpoolファンとの関係について問われたサラーは、一層明るい笑顔を浮かべた。「僕は常に100%を出しているつもりだし、ファンはそれを認めてくれている。ファンにこんなに応援してもらえて嬉しい。ファンが僕の歌を歌ってくれるのを聞くと幸せな気持ちになる」。

    サラーのインタビューは、ここ数日の移籍話にもやもやしていたLiverpoolファンに、久々の笑顔をもたらした。

    「通常は、W杯や欧州選手権の夏には、わがクラブの選手たちが代表チームで負傷を負ったり、プリシーズンなしの調整不足で翌シーズンに悪影響を及ぼさないかと心配が先に立つのだが、今回はちょっと違っている」と、ファンは頷いた。

    そもそも、Liverpoolの選手の中で今年のW杯に出場するのは僅か8人で、うち、ほぼ毎試合出るだろう主力は5人(サラー、サディオ・マネ、ロベルト・フィルミーノ、ジョーダン・ヘンダーソン、デヤン・ロブレン)のみだった。(※他3人はシモン・ミニョレ、トレント・アレクサンダー・アーノルド、マルコ・グルイッチ)

    「勝ち進んで戻りが遅くなりそうなのはボビー・フィルミーノだけ。ヘンドとトレントは早々に帰ってくるだろうし」と、イングランド代表チームをネタにしたジョークで笑いながら、ファンはつぶやいた。

    「ただ、サラーに関しては例外的な気持ちになっている。負傷から回復して試合に出て欲しいと心から祈っている。来季の開幕に遅れてもいいから、W杯でできるだけ勝ち進んで、エジプトのファンの夢をかなえて欲しい。サラーはエジプトのキングなのだから」。

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    ピーエルエフジェイ

    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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