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    真の敗者

    5月26日のCL決勝戦は、3-1と勝って通算13回目の優勝を決めたレアルマドリードを称える声が一段落した後で、イングランドでは、祝日の月曜日に至っても生々しい話題が上り、ヘッドラインを飾り続けているのは、敗れたLiverpoolの、監督の戦術やチームのパフォーマンスではなく、2つの大きなミスで2失点を与えたロリス・カリウス個人に対する同情、批判、懸念、嘲笑だった。

    最も多かったのが、ライバルチームの新旧選手からの、カリウスへの同情と励ましのメッセージだった。マンチェスターユナイテッドのエリック・ベイリーは試合終了と同時にSNSにポストした。「気持ちを強く持て、ロリス。君は素晴らしいGKなんだから」。ほぼ同じタイミングで、元エバトンのGKネビル・サウソールが心のこもったメッセージを送った。「カリウスは、自分に自信を持って、立ち直って欲しい。GKユニオンのメンバーより」。

    実況放送のアナリストを勤めていた元チェルシーのフランク・ランパードは、「正直、信じられなかった。カリウスにとっては地獄だったと思う。カリウスは、周りの強いサポートが必要だと思う」と、悲痛な声で語った。

    一方で、BBCのアナリストとして活躍する元Liverpoolのマーク・ローレンソンは、カリウスに対する同情よりも、他の後輩たちの失意を語った。「カリウスは壊滅的な打撃を感じているだろうと思う。ただ、カリウスがLiverpoolで復帰する可能性は考えられない」。

    「決勝で敗れた瞬間に、選手はみな自分の気持ちを整えるためにある程度の時間が必要。しかし、ファイナルホイッスルと共に泣き伏してしまったカリウスを、真っ先に慰めに行ったのがレアルマドリードの選手たちだった事実は、カリウスのミスが挽回不可能なまでに深刻であることを物語っている。もちろん、控室に戻った後で、Liverpoolの選手たちはみなカリウスに声をかけたと思う。ただ、まず先にカリウスの肩を抱きに行ってあげられなかったのは、選手たちが心の底でカリウスに対して不安を消せなかったから」。

    「というのは、カリウスが大きなミスを犯したのはこれが初めてではない。最近では、ローマ戦で似たようなミスを犯した(試合結果は4-2でローマの勝利)。あの時には幸運にも、アレクサンダル・コラロブのシュートはポストをヒットして失点に繋がらなかっただけで」。

    そして、同じように世界中が注目するひのき舞台で致命的なミスを犯した経験を持つロブ・グリーン(※)が、カリウスの選手生命を心配するコメントを出した。
    ※元イングランド代表、現ハダースフィールドGK。2010年W杯で、開幕初戦でトンネルして同点ゴールを与えてしまった(対アメリカ合衆国、試合結果は1-1)。

    「カリウスが今どんな気持ちでいるか、同じ立場に立ったことがあるGKとして、僕は手に取るようにわかる。Liverpoolの選手たちが試合後にすぐに慰めに行かなかったことを指摘する声もあるが、実際には誰が何を言ってもカリウスにとっては何の助けにもならなかっただろうことも、僕にはわかる。GKは、試合に負けることしかできない。負けないようにチームを助けることはできるが、チームのために勝つことはできない。それがGKの運命」。

    「今回のことはカリウスにとって人生を左右する試練になるだろう。というのは、今後どんなに頑張っても、世界はあの時のミスを決して忘れないし、積極的に話題にし続ける。それを乗り越えるには、ものすごく強い精神力が必要」。

    グリーンの言葉の通り、イングランドのフットボール界に留まらず、世界がカリウスのミスを目撃していた。熱烈なエバトン・ファンとして有名なボクサーのトニー・ベリューは、強い口調で語った。「プロが、あのようなひのき舞台でミスをするなんて許されないこと。あのミスはクラブに£100mの損害を与えた。1回ならばまだしも、2回も。カリウスに対して同情なんて全く感じない。カリウスは、キエフまで応援に行った子供たちの夢を打ち砕いたのだから」。

    ベリューとは正反対に、圧倒的多数のエバトン・ファンは、「宿敵Liverpoolの優勝を阻止したヒーロー」として、カリウスを称賛した。「CL決勝戦のマン・オブ・ザ・マッチはカリウス」。

    その他のライバルチームのファンも異口同音に、Liverpoolの失敗に胸をなでおろす中で、Liverpoolファンはきっぱりと語った。

    「我々はCL決勝戦で敗れた。でも、敗者ではない。真の敗者は、自宅のソファにふんぞり返って他人の敗戦を見て喜んでいる人たち。深い失意を味わうこともない反面、高まる興奮を得ることができなかった人たち」。

    「CL決勝戦まで到達して、ファンに夢を見せてくれたチームを誇りに思う」。

    ファンの気持ちと同期を取るように、Liverpoolの選手たちの言葉は、みな同じだった。「勝つ時も負ける時もチーム」。そして、GK仲間のシモン・ミニョレが語った。「僕がロリスに対して言った言葉は、『決勝進出できたのはそれだけのことをやったからだと胸を張ろうよ』という一言だけ。彼はまだ若い。きっと立ち直ると信じている。控室の中では、みんなの気持ちは同じだった。決勝で負けることは悲惨なこと。ここまで応援してくれたファンと、最後に一緒に祝うことが出来なかったのだから」。

    「でも、ファンのお蔭でスペシャルなシーズンに出来たと誇りに思う」。

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    プロフィール

    ピーエルエフジェイ

    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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