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    「懐疑心を希望に変える」象徴

    5月6日にスタンフォードブリッジでのチェルシー戦に1-0と敗れて、Liverpoolのトップ4争いが最終日に持ち越しとなった時に、イングランド中のメディアは一斉に批判した。残り4試合の時点でチェルシーと10ポイント差があったLiverpoolは、CL準決勝をはさむWBA戦(試合結果は2-2)、ストーク戦(試合結果は0-0)と最終的な降格チームに連続でポイントを落とした末に、チェルシーとの直接対戦でわずか3ポイント差まで詰められたのだった。

    「選手の頭の中はCL決勝が占めているから、プレミアリーグの試合に集中できずにいる」という指摘の中で、BBCのアナリストであるジャメイン・ジェナスの批判はより痛烈だった。

    「選手ならば、CL決勝に出たいのは当然のこと。Liverpoolの選手たちは、ローマとの1戦目(試合結果は5-2でLiverpoolの勝利)で、深刻な負傷を負ったアレックス・オクスレイド・チェンバレンの惨状を思い浮かべ、同じ運命にならないようにと、無意識に力を加減しているように見える」。

    これに対して、Liverpoolファンは肩をすくめ、ユルゲン・クロップの冷静な言葉に深く頷いた。

    「チェルシー戦の試合結果は気に入らないが、内容には満足している。4日前にCL準決勝を戦ったばかりで体力的にも厳しかったのに、勝ちを目指して全力を尽くした選手たちを批判する気はない。むしろ、選手たちを誇りに思う」と、クロップは断言した。トップ4を確定するためにブライトン戦は最も重要な試合であり、それ以外(CL決勝)の話題は禁句にしていることも明かした。

    クロップの言葉通り、5月13日の最終日にブライトンに4-0と勝って、来季のCL出場を確定したチームに対して、「クロップの長期計画が着実に実を結び始めている」と、ファンは期待を語り合った。

    「開幕時点での今季の目標は、トップ4とCLグループラウンド勝ち抜き、そして国内カップ戦が取れれば尚可だった。それが、予想以上の不運な負傷に見舞われながらもトップ4を達成し、CLは決勝まで到達した。5月26日がどうなろうと、確実に大きく前進している」と、誰もが笑顔で頷き合った。「何より、クロップに対する信頼が希望を与えてくれる現状が最も嬉しい」。

    ファンが「クロップに対する信頼」を具体的に語り合った場面は数々あったが、その一つがローマとの1戦目の試合後のことだった。5-0とリードしながら試合終幕の2失点でアウェイゴールを献上したことについて感想を問われたクロップは、即座に首を横に振った。「試合後に選手全員が最も残念だと言ったのは失点ではなく、アレックスを失ったことだった」。

    結局、オクスレイド・チェンバレンはじん帯の負傷で、CL決勝だけでなくW杯も絶望と判明した。前回のW杯も直前の負傷で棒に振っていただけに、イングランド中から同情の声が飛んだ。

    しかし、直後に出たオクスレイド・チェンバレン本人のメッセージは、ファンの心を直撃した。「このような重要な時点で負傷してしまったことは非常に辛い。でも、ショーン・コックス(※)のご家族の気持ちを考えると、比ではないと思う。回復するよう心からお祈りしています」。
    ※ローマ戦の試合前に、アンフィールドの周辺の道路でローマのフーリガンにハンマーなどの凶器で襲われ、重体にあるアイルランドのLiverpoolファン。

    その後で、クロップがオクスレイド・チェンバレンに対して、「刑務所に入る夫をひたすら待つ良妻のように、君が負傷から戻って来るのを待つ」と語った言葉に、ファンは目頭を熱くした。これは、クロップがドルトムント時代にマッツ・フンメルスが長期負傷欠場した時に言った言葉と同等であり、「特別な選手に対してだけ捧げる言葉」と、ドイツ人ファンが解説した。

    「オクスレイド・チェンバレンは、クロップがLiverpoolに来て最初に言った『懐疑心を希望に変える』象徴。外部から批判が飛び交い、見た目には大丈夫だろうかと心配になる時にも、クロップを信じていれば必ず救われる、と」。

    オクスレイド・チェンバレンの移籍に関して、ネガティブな見解を表明したアナリストの中にジャメイン・ジェナスがいた。「最も選手層の厚い攻撃的ミッドフィールドのポジション争いに挑んだオクスレイド・チェンバレンは、最初から負けが見えていた」と、9月の時点でダメ出ししたものだった。

    ふたを開けると、1月にフィリペ・コウチーニョを失い、アダム・ララーナの負傷が予想以上に長引く中で、オクスレイド・チェンバレンは、クロップの信頼を担う不可欠な存在となった。

    折しも、地元紙リバプール・エコーが、クロップを信じていれば必ず救われる根拠をまた一つ、並べたところだった。「2016年5月に、EL決勝(試合結果は3-1でセビーリャが優勝)の失意に暮れている選手たちに向かってクロップは言った。『これは我々にとってスタートなんだ。これから何回もの決勝戦を、みんなで一緒に戦うことになるのだから』と。それは真実だったことが証明された」。


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    ピーエルエフジェイ

    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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