良いとこなしの試合

    9月26日のCLスパルタクモスクワ戦の前の記者会見で、現地のジャーナリストがユルゲン・クロップに的外れの質問をして、イングランド中の冷笑を買ったことがあった。それは、「マウリシオ・ボチェティーノはハリー・ケインが大好きだと言っています。あなたは、Liverpoolの選手の中で大好きなのは誰ですか?」というものだった。通訳ごしに質問を聞いたクロップは、我慢強く笑顔を維持しながらも、冷たく答えた。「私もハリー・ケインは大好きですよ。はい、次の質問は?」。そしてクロップは、訳し始めた通訳に向かって言った。「CLの記者会見で、このような質問を受けるとは思わなかった。訳さなくていいですよ。わざわざ訳す価値はない」。

    一連の会話をTVで見ていたファンは、「イングランドのメディアよりもレベルが低いジャーナリストがいるとは驚いた。それにしてもこの質問、現実とは思えない」と顔を見合わせた。

    ともあれ、このジャーナリストですら名前を知っているくらいに、ケインの評価は急上昇していた。例年のごとくスロースターターで、9月に初ゴールが出たのを皮切りに、トットナムでもイングランド代表チームでも第一人者になっていた。

    しかし、プレミアリーグの得点ランキング首位に立つケインは、ホームでの得点がないまま10月22日のLiverpool戦を迎えた。トットナムも、伝統的なホーム・スタジアムであるホワイトハート・レーンの改装工事中の限定で、暫定ホームとなっているウェンブリーで苦戦を強いられていた。前週10月14日のボーンマス戦で、リーグでの初勝利を上げたばかりだった(試合結果は1-0)。

    そのような状況もあり、10月22日のビッグ・マッチは、直前のCL戦(対マリボル、試合結果は7-0でLiverpoolの勝利)で攻撃陣が復調したLiverpoolと、互角の対戦を予測する声が圧倒的に多かった。

    ふたを開けるとLiverpoolは、またもディフェンスの弱点が露呈して、ケインのホームでの今季初ゴールを含む2得点とトットナムのホームでの2勝目を献上した(試合結果は4-1)。

    試合開始25分にミスから2-0となったLiverpoolのディフェンスについて、全国紙は「Liverpoolのディフェンスは、ハリー・ケインを怖がって逃げまくった末に、捕まって処分された」と痛烈だった。

    地元紙リバプール・エコーも、「Liverpoolのディフェンスは、間違えてホワイトハート・レーンに行ってしまったようだ」と、容赦なかった。リーグ9試合で16失点は、1964-65季以来のワースト記録の更新だった。

    アナリストも一斉に猛批判を浴びせた中で、ガリー・ネビルは冷静に語った。「Liverpoolは、全開した時はプレミアリーグで最も面白いフットボールをする、第三者としては最も見たいチームの一つ。しかし、今日のウェンブリーでは、デヤン・ロブレンの致命的なミスから与えた2失点が、チーム全体を地獄に突き落とした」。元マンチェスターユナイテッドのガリー・ネビルの口調には、同情がこもっていた。

    「今日のLiverpoolは悲しいチームに見えた。こんな印象を受けたのは、ユルゲン・クロップが監督になって以来、初めてのことだ」。

    ユルゲン・クロップは、試合開始31分に、「チーム全体をいきなり地獄に突き落とした」ロブレンを下した決定について、「チームに落ち着きを取り戻すために、変化が必要だと判断した。結果的に、あまり効果はなかったが」と説明した。

    「ひどい試合だった。もちろん、トットナムは良いチームだ。でも、我々のディフェンスがトットナムの仕事をラクにした。先制ゴールは、説明の余地がないような最悪の守りから出たもの。ヘッドラインを飾るようなことは言いたくないが、ディフェンスのミスが試合を決めた。今日の試合では、良かった点について語る気にはなれない」。

    今後の試合については、全てを振り出しに戻し、努力してポジションを勝ち取った選手だけがスターティング・メンバー入りすることになる、と締めくくった。

    今後のラインナップについてのファンの意見は、ほぼ一致していた。「直接失点に結び付くミスを繰り返したロブレンとシモン・ミニョレは暫くスタンドで頭を冷やすことが必要。他の選手も、責任の重さではそれほど差はない」。

    「今日の試合では決して良い出来とは言えなかったが、若手で頑張っているジョー・ゴメスをセンターバックに入れて育てる方が望みは大きい。それ以外にも、試合に出る機会が得られずにいるアンディ・ロバートソン、マルコ・グルイッチ、ベン・ウッドバーンらを試すべき。少なくとも、これまでレギュラーだった選手たちは全員が、試合に出してもらうために努力すべきだ」。

    同時に、ファンのサポートは強かった。「今は、チームが我々ファンのサポートを必要としている時。特に、世間の風当たりを受けている監督に対して、ファンの信頼は変わらないことを示す時。状況にあるクラブに来てくれて、盛り上げてくれたクロップが、将来を見据えたチーム強化の計画を実現してくれるためにも、全面的な支持を表明しよう」。

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    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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