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    新ワンダー・ボーイ

    8月の移籍ウィンドウが閉まると同時に、英国のメディアは今季第一回目のインタナショナル・ウィークに注目を移した。Liverpoolファンにとっては、誰もが急務としていたセンターバック補強ができなかったなど、移籍ウィンドウの結果について賛否両論が沸き上がる中、今回のインタナショナル・ウィークは、話題を変えるために絶好の、朗報続きの週となった。

    先頭を切ったのは、ウェイン・ルーニーが8月23日前に代表引退を発表したことで空職となったイングランド代表主将に、ジョーダン・ヘンダーソンが抜擢されたことだった。続いて、ジョー・ゴメスがイングランド・アンダー21代表チームの主将に就き、Liverpoolファンの拍手は更に高まった。ほぼ同時に、スコットランド代表チームのW杯予選(対リトアニア、試合結果は3-0でスコットランドの勝利)で、新戦力のアンディ・ロバートソンがゴールを記録するという嬉しいニュースが伝わった。

    「Liverpoolの選手があちこちで活躍しているので、珍しく興味を持って代表戦を見ることができる」と、Liverpoolファンの間では笑顔が飛び交った。

    そんな時に、9月2日のW杯予選(対オーストラリア、試合結果は1-0でウェールズの勝利)で、ウェールズ代表デビューを飾った17歳のベン・ウッドバーンが、ピッチに立ってわずか4分で母国代表チームの貴重な勝利を決める「ワンダー・ゴール」を出し、ウェールズのヘッドラインを独占することになった。

    昨季はLiverpoolで、11月のサンダーランド戦(試合結果は2-0でLiverpoolの勝利)でプレミアリーグデビューを飾った直後のリーグカップ戦(対リーズ、試合結果は2-0でLiverpoolの勝利)で、コップの前でゴールを決めてLiverpoolの史上最年少ゴールスコアラーとなったことで、英国中の脚光を浴びる「新ワンダー・ボーイ」となったウッドバーンは、シーズン後半の負傷者続出時に、得点が必要な時にサブで送り出される大役を担うこともあった。

    今回のウェールズでのデビューは、勝たねばW杯本大会出場が相当厳しくなるという状況の中で、0-0のまま、万策尽きたかに見えた74分のことだった。「ミラクルが必要だった時に、ティーンエージャーがミラクルをもたらした」と、ウェールズのメディアが興奮を散りばめた記事を掲げた、「歴史的なゴール」だった。

    さっそくイングランドのメディアは、Liverpoolの最年少ゴールスコアラーになった時の一方的な騒ぎを蒸し返し、「ウッドバーンは結局、イングランドを蹴ってウェールズ代表チームに忠誠を誓った」と嘆いた。

    それに対して、Liverpoolおよびウェールズのレジェンドであるイアン・ラッシュ(Liverpool在籍は1980-86、1988-1996)が、「私の知る限りでは、ウッドバーンはウェールズ代表チームに対する忠誠は片時も失くしたことはなかった」と、あっさり流した。

    リバプール市の郊外に当たるチェシャーで生まれ育ち、8歳でLiverpoolのアカデミー入りしたウッドバーンの国籍については、Liverpoolのアンダー16チーム時代にウッドバーンを指導したコーチのデス・メイハーが証言していた。「ウッドバーンは、母方のおじいさんがウェールズ人で、お母さんの影響を受けてウェールズ人として育った」。

    17歳の若手が、緊迫した内容の試合に投入されるような落ち着きは、お母さんから授かったものだと、メイハーは、アンダー16チーム時代のエピソードを明かした。

    「学校とアカデミーチームと、チェシャーの自宅から毎日通うのは遠いし不便なので、リバプール市内に下宿させてクラブが面倒を見たい、とご両親にお願いしに行ったところ、お母さんから却下された。『子供の教育は親の責任。自宅に住むことは必須です』と、一歩も引かなかった。素晴らしいお母さんだと感銘を受けた」。結局、クラブがウッドバーンのために送迎車を手配することで、お母さんの許可を取り付けたという。

    「その頃から才能は明らかだったし、お母さんの教えを受けてしっかりした性格を身に付けたウッドバーンが、世間を歓喜させるような偉業を達成しながら、変わらず努力し続けることは、私にとっては驚きではない」と、メイハーは断言した。

    それは、ウェールズ代表監督のクリス・コールマンの言葉とも同期をとっていた。「私は長年、各年齢層のウェールズ代表チームの選手を見てきているので、ウッドバーンのことも昨日や今日、初めて知ったわけではない。ウッドバーンは、常に自信を持って冷静に行動できる選手。しかも、世の中に騒がれるような立場に陥っても、決して有頂天にならず、しっかり自分の足元を見つめて前に進むことができる選手」。

    「これまでに、すい星のごとく現れて『新ワンダー・ボーイ』と言われたかと思えば、知らないうちに消えていった選手の例は数えきれない。若手は、この先何が待っているのか、不確定要素が強い。ウッドバーンも、次の試合でスタートすることはあり得ない。レギュラーとして通用するようになるまでに、まだまだ成長しなければならない点が多い。焦らず、しっかり努力を重ねることが必要。それは、Liverpoolでも同じだと思う」。


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    ピーエルエフジェイ

    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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