コップとの絆

    FAが、夏の移籍ウィンドウをリーグ開幕前に閉めるという案を、早ければ来季から導入する案を提示し、イングランド中で賛否両論が飛び交った。それは、「出てゆきたいけど移籍が決まっていないため、試合に集中できない主力選手」が、外向きには負傷とか病気という理由で戦力から外れる状況を抱えるクラブにとっては、重要な前進と受け止められた。

    いっぽう反対意見は、その措置の適用がイングランド国内だけに限定されることで、「スター選手を外国のクラブに取られた時には既に移籍ウィンドウが閉まっていた」憂き目を見る危険性を指摘した。そもそもヨーロッパ各国の開幕時期は一致していないため、根本的な解決は難しい。

    期せずして、この夏も「引き止めたい主力選手を他のクラブに取られるかもしれない」不安に見舞われることになったLiverpoolは、重要な試合の前日になると必ず「移籍ウィンドウの新たな動き」がヘッドラインを飾る状況の中で、8月23日、アンフィールドでホッフェンハイムを4-2(通算6-3)と破って、CLグループラウンド進出を達成した。

    「難しい問題が飛び交い、大きなプレッシャーを背負いながら、わが選手たちは強力な決意で試合に集中し、会心のプレイでCLを勝ち取った。選手たちを誇りに思う」と、ユルゲン・クロップは感慨深げに語った。

    全国メディアも珍しく好意的だった。「イングランドから5チームがCL(※グループラウンド)に出場するのは史上初」と、Liverpoolの参戦を歓迎し、マン・オブ・ザ・マッチの活躍を見せたサディオ・マネを絶賛した。「88分に交代したマネに、コップが『オー、マネ、マネ、ドゥドゥドゥ』とチャントしながら総立ちの拍手を送ったのに対して、頬を染めて拍手を返したマネの姿は微笑ましかった」。

    BTスポーツでホッフェンハイム戦の実況を勤めていたスティーブン・ジェラードも、満面に笑顔を浮かべてファンの「オー、マネ、マネ、ドゥドゥドゥ」チャントを引用したことも、マネ人気に拍車をかけた。

    昨年夏に£30mでサウサンプトンからLiverpool入りしたマネは、初シーズンで、ホームで17出場10ゴール5アシストと、期待を大きく上回る活躍を見せ、ファンの全面的な支持を集めるに至った。マネがアフリカ・ネーションズ・カップのため不在となった1月から2月にかけて、Liverpoolが絶不調に見舞われた時には、ファンの間で「マネのペースがないことは致命的。結局、Liverpoolはワン・マン・チームだと痛感した」という悲鳴が上がった。

    そして、アフリカ・ネーションズ・カップから帰還したマネを、長年待ち焦がれた人のように歓迎するファンの「オー、マネ、マネ、ドゥドゥドゥ」チャントは、アンフィールドの風物詩となった。4月のエバトン戦(試合結果は3-1でLiverpoolの勝利)で負傷してしまったマネが、シーズン内の復帰は不可能と分かった時には、ファンの間で再び悲痛な叫びが上がった。

    しかし、今季は開幕と同時に、その負傷の記憶をすっかり吹き飛ばす活躍を見せているマネに、ファンの熱気はさらに高まった。「マネを僅か£30mで取られたことで、サウサンプトンは怒ってLiverpoolとは二度と取引しない、と決めたのだろう」というジョークすら飛んだ。

    「サディオがコップと特別な絆を作っていることは明らかで、素晴らしいこと。チーム全体が、ファンとこのようなスペシャルな絆を披露する様子を想像するとぞくぞくする」と、クロップは微笑んだ。

    クロップがドルトムント時代(2014年夏)にマネ獲得を試みたことは有名な話だった。結果的にクロップは他の選手を取り、マネは£11.8mでザルツブルクからサウサンプトンへと移籍した。昨年11月に、クロップはその時の話を、ユーモア交じりに語った。「サウサンプトンでのサディオを見て、私は自分の愚かさに気づき、自分で自分の頭をガツンと小突いた」。

    その過ちを二度と起こさないためにと、クロップは、Liverpoolでの初の夏の移籍ウィンドウで、その時点では「高すぎる」と見えた£30mという金額に躊躇せず、マネ獲得を主張、1年後には「バーゲン」と言われるようになった。

    かつてクロップに空振りを食らった実話について質問されて、マネは笑って答えた。「あの時のことは、はっきり覚えている。でも、僕はあの後ずっと、良い選手になろうと全力を注ぎ続けた。その努力が実って、とうとうクロップが監督を務めるチームに入ることができた」。

    「待った甲斐があった、としみじみ思っている」。

    「アンフィールドは信じられないような素晴らしいスタジアム。2-3日に1度、アンフィールドで試合ができればどんなに良いだろう、と思う。アンフィールドの、あの素晴らしいファンの前で試合できるということは、僕にとっては最高に嬉しいことだから」。

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    プロフィール

    ピーエルエフジェイ

    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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