みんなの「ひいき選手」

    まだプリシーズンのトレーニングが始まる前の6月に、アダム・ララーナが全国版のTV番組に出演して、様々な質問を受けた時のこと、「今のLiverpoolの中で、ユルゲン・クロップから『ひいきされている選手』は誰?」という質問に対して、「みんなに聞いたら、たぶん僕だと言う人が圧倒的に多いと思う」と、ララーナは照れながら答え、スタジオ内の爆笑を買った。ララーナはクロップの隣人で、私生活でも家族ぐるみで仲良くしている話は有名だった。

    同じ頃、オランダのTV番組で、ジニ・ワイナルドゥムが隣人について語った話が流れた。「Liverpoolのレジェンドであるケニー・ダルグリーシュが近所に住んでいて、時々ランチに誘ってくれる。試合のことでも、良く見てくれていて、いろんなアドバイスをくれる」と、にっこり笑ってワイナルドゥムは語った。

    そのインタビューの中で、オランダ・リーグでプレイしていた時にも、フェイエノールトの元監督ビム・ヤンセンや、ビム・ファン・ハネヘム、PSVのレジェンドであるビリー・ファン・デル・カイレンから良くしてもらった話を語り、「Liverpoolでも、ケニーのような偉大な人からクラブのことなど教えてもらって、すごく勉強になる」と、ワイナルドゥムは白い歯を見せた。

    Liverpoolファンは、「ジニが順調に成長している理由がわかった。キング・ケニーからひいきにされていれば、今後もどんどん良くなるだろう」と微笑んだ。

    2016年夏に、当時は多額だった£23mでニューカッスルからLiverpool入りしたワイナルドゥムは、シーズンが進むにつれて存在感を増した選手の一人で、結果的には43出場6ゴール9アシストと、誰もが「ユルゲン・クロップの成功サイン」にカウントする選手となった。

    同時に、多くの人が「まだまだ向上の余地がある」という点でも一致していた。それは、「ビッグ・クラブとの対戦では、パワーもありテクニックもある良い選手なのに、特に下位のチーム相手では、試合中に時々いなくなる」という面だった。

    昨季中ごろには、マンチェスターシティ(試合結果は1-0でLiverpoolの勝利)、チェルシー(試合結果は1-1)、アーセナル(試合結果は3-1でLiverpoolの勝利)とビッグ・マッチで重要なゴールを出しながら、調子の波があったことについて、アナリストから「ワイナルドゥムはビッグ・マッチでしか活躍できない」とネガティブな評価を下された時期があった。

    そして、3月のバーンリー戦(試合結果は2-1でLiverpoolの勝利)の決勝ゴールが、その批判をかき消してからは、「アンフィールドでしか得点できないワイナルドゥム」にすり替わった。

    そんな中で、Liverpoolファンの間ではワイナルドゥム人気は高まる一方だった。「ダ、ダ、ダダダダ、ジニ・ワイナルドゥム」のチャントは毎試合、スタンドで高々と響いた。

    「ジニの白い歯を見ると、爽やかな気持ちになる」と、ファンは頷き合った。歴代選手の中でも、ファンに人気が高かった選手の多くは、笑顔を見せる選手だった。「苦戦している時でも、余裕を見せている」。

    ワイナルドゥムの「ビッグ・マッチでの重要なゴール」の中でもベスト・ゴールとして、圧倒的多数のファンがリーグ最終戦の先制ゴールを上げる。既に降格決定していたミドルスブラが守り固めで臨み、スタンドでは4位争いのアーセナルがエバトンに楽勝しつつある途中経過が流れていた中で、ピッチの上の選手にも緊張が波及し、重たい空気が覆っていた時に出た、前半のインジャリータイムのゴールだった。

    「アンフィールドでしか得点できないワイナルドゥム?そんなことどうでも良い!」と、ファンは狂喜に沸いた。「ゴールの瞬間のジニの表情は、そんな我々ファンの気持ちをそのまま反映していたかのように見えた。ジニにとって、ものすごく重大なゴールだということが手に取るようにわかった」。

    そのミドルスバラ戦の翌日に、小さなエピソードが生まれた。ミドルスバラ戦を見にアイルランドから来ていた11歳の少年が、お母さんと一緒に翌日にリバプール市内のスポーツ店でショッピングしていた時に、偶然ワイナルドゥムと会ったとのことだった。一言二言会話した後で、ワイナルドゥムがその少年にブーツをプレゼントしたのだった。

    「前日のゴール・ヒーローからの予期せぬプレゼントに、息子は大感激」と、お母さんがアイリッシュ・インディペンデント紙に明かしたその実話は、Liverpoolファンに更に笑顔を与えた。「ジニ人気は年代を問わず広がっている」。

    7月29日のドイツでのプリシーズン戦(対ヘルタ、試合結果は3-0でLiverpoolの勝利)で、とうとう「アンフィールドでしか得点できない」レッテルを剥がしたワイナルドゥムは、初アウェイ・ゴールの感想を問われて、落ち着いて答えた。「ニューカッスル時代にはアウェイ・ゴールもあったから、特に気にしていたわけではなかった」。

    「次はリーグ戦でアウェイ・ゴールを決めたい。もちろん、チームの勝利に貢献できるならばどこでゴールを決めても構わない」と、白い歯を見せた。


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    ピーエルエフジェイ

    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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