アダプテット・スカウサー

    5月21日のプレミアリーグ最終戦で、Liverpoolは既に降格が決まっていたミドルスバラを3-0と破り、76ポイントで4位を確保した。更に、他リーグの状況から、8月のCL予備戦で、Liverpoolはシードされることがほぼ確実という情報が続いた。何より、昨季の60ポイント(8位)から着実に向上した今季については、Liverpoolの地元紙もファンも「成功」という評価で一致した。

    いっぽう全国メディアは、「アーセナルが20年ぶりにCLを逃した」記事が一斉にヘッドラインを飾り、「そのアーセナルに代わってトップ4入りしたのはLiverpoolだった」事実はいかにもおまけのような報道に留まった。

    かくして世の中の脚光を浴びることなく幕を下ろしたLiverpoolの2016-17季は、ルーカスが所属10年となった記念シーズンでもあった。タブロイド紙のトップを飾ることは殆どないながら、79分にサブで出場した時には、チームメートの顔が引き締まり、スタンドのLiverpoolファンが一斉に温かい拍手を送ったルーカスの、マイルストーンにふさわしいシーズンの終幕となった。

    母国ブラジルのグレミオで「期待の若手」として名を上げたルーカスは、2007年5月11日にLiverpool入りし、当時のラファエル・ベニテス監督の下で、8月からLiverpoolの選手としてスタートすることになった。

    「あの頃にもし誰かが、僕がLiverpoolに10年所属し、リバプール市で生まれた2人の子供に恵まれる、言ったとしたら、『こいつ、おかしいんじゃないの?』と一笑したと思う」と、ルーカスは、波乱に満ちた10年間を振り返った。

    プレミアリーグに順応のに時間がかかったルーカスは、「シーズンが終わる度に、夏の間に売りに出されるのではないかと、落ち着かない休暇を過ごした」と語った。

    そんな中で努力を重ね、Liverpoolで試合に出られる戦力へと成長し続けたルーカスは、2011年にはミッドフィールドの要として開花し、Liverpoolのプレイヤー・オブ・ザ・シーズンに輝いた。

    「ケニー・ダルグリーシュが監督になって、チーム全体に明るい希望がみなぎった状況でシーズンを終えた2011年は、Liverpoolに来て初めて、来季の行方を心配することなくリラックスした夏休みを過ごすことが出来た」。

    5月21日の試合後、ルーカスは、そのケニーから10周年記念の「21」の盾を受け取った。恒例のラップ・オブ・オナーが始まる前に行われた式典だった。満員のスタンドからのファンの盛大な拍手を背に、「10年間もの間、この偉大なクラブのシャツを着ることが出来たことを心から誇りに思っています」と、ルーカスは挨拶のスピーチを行った。

    「僕の2人の子供はこの町で生まれました。僕にとって、この町は僕の'ホーム'です」。

    「ルーカスはアダプテット・スカウサー(※リバプール市出身ではないリバプール市在住者が、第二の故郷と感じている)」のバナーが翻るスタンドで、少なくないファンが、胸が締め付けられる思いに駆られた。「10周年記念というよりは、まるでお別れの挨拶を聞いているようだ」。

    初めて「リラックスした夏を過ごした」後の2011-12季に、靭帯の負傷で長期欠場という不運に見舞われたルーカスは、その後、移籍ウィンドウの度に「出て行く噂」が飛び交うようになった。その中には、移籍が内定した後で、「Liverpoolの戦力に負傷が発生したため、ルーカスは引き留められた」という裏話が流れたことも複数回あった。

    2017年の1月にユルゲン・クロップが語った言葉は、それを裏付けていた。「ルーカスは、のうのうとベンチに座って給料をもらって満足しているような選手ではない。試合に出たいと切望していることは明らか。これまで、チームのために自分の希望を犠牲にしてきてくれたルーカスに対して、これ以上、我慢をお願いすることはできない」。

    負傷者続出の今季も、時にはセンターバックの穴を埋め、後半はミッドフィールドで経験を発揮したルーカスが、30歳という年齢を考えると、レギュラーとして試合に出られる新天地を真面目に考えていることは納得できることだった。

    同時に、常にチームを最優先し、文句ひとつ言わず、必要に応じてどのポジションでも全力を尽くす選手であり、「アダプテット・スカウサー」としてこのクラブとその地元に誇りを抱いているルーカスは、クロップにとっては勿論、ファンにとっても「不可欠で、最も頼りになる選手」だった。

    翌5月22日、ルーカスはファンとクラブに対してお礼のメッセージを出した。「長いシーズンだったけど、来季のCLを確保できて良かったと満足しています。ファンの方々へ。この10年間のサポートありがとうございました。そして、Liverpool FCへ。素敵な記念をありがとうございました」。

    それに対して、ファンは心の中でつぶやいた。「ルーカス自身が主力の一人として勝ち取ったCL。置き土産にするのではなく、その権利を駆使して欲しい。ルーカスが夏の間に気持ちを変えて、来季もLiverpoolに留まってくれることを祈っている」。

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    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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