ウィニング・メンタリティ

    プレミアリーグは降格3チームが全て決定し、2部からの昇格は残り1枠を賭けるプレイオフが始まったところで、来季の構成が次第に具体化してきた。上位争いの方ではチェルシーが優勝を決め、トットナムの2位が確定し、残るは3-5位の内訳のみとなった。

    プレミアリーグの最終日に、日曜日の15:00の一斉キックオフというシステムが導入された理由は、本来は、優勝や降格などの順位争いを戦っているチーム間の平等を図るためだったことを考えると、今季は、実質的に「不平等」のある時点でその大半が決定してしまった。

    中でも大きな不利益を被ったのは、5月14日にクリスタルパレスに4-0と敗れて降格3チーム目となったハル・シティだった。5月6日に、試合前には2ポイント差で争っていたスウォンジーは、ハルがサンダーランドに0-2と負けた結果を見届けて、エバトンに1-0と勝ち、残留決定に王手をかけた。翌週5月13日には、スウォンジーはサンダーランドに0-2と勝って、翌日まで試合がないハルを「勝たねばその時点で降格決定」の背水の陣に追い込んだ。

    億単位のTV放送ライセンスに財政的な恩恵を受けているプレミアリーグでは、「TV局が試合日程を決める」状況が当たり前になって久しい。そして、プレミアリーグから多額の収入を得ているクラブは文句が言えない立場にあった。

    「試合をTV観戦するカウチ・サポーターにとっては、今の仕組みは多くの試合が見られて良いかもしれないが、早い時間のキックオフに間に合うように走り回らねばならない『試合に行くファン』にとってはたまらない」と、地元のファンの間では批判が続いていた。

    そんな中で、アントニオ・コンテが日程の不平等について話題にしたことは、「試合に行くファンを無視するクラブの金権体質化」を憂いていたファンには新鮮だった。

    更に、降格が決まり、スター選手に逃げられた後のクラブをひたすら支え続けるファンに対して、心の籠った言葉をかけたのもコンテだった。5月8日にチェルシーが3-0と勝った試合で、アウェイ・スタンドでチームの降格決定を見守ったミドルスバラ・ファンに、暖かい拍手を送ったコンテは、「こんな素晴らしいサポートはイングランドならでは」と語った。

    チェルシーが優勝を決めた5月12日のWBA戦(試合結果は0-1でチェルシーの勝利)の後で、メール紙がコンテの人格に焦点を当てた記事を掲げ、イングランド中のファンの同意を引き出した。

    「世界一の激戦と言われるプレミアリーグで、初シーズンに優勝を達成する業績は大きい。それが、1年前にはチームが破壊し、監督がクビになったチームだったことを考えると尚のこと。その背景には、コンテのハードワークがあったことは明らか」。

    イングランドに敬意を抱き、イングランドの風土を学び、イングランドで勝てるチーム作りを実践したコンテは、チェルシー監督就任が発表された昨年夏に、ユーロを控えたイタリア代表監督という忙しい立場を押して、チェルシーのトレーニング・グラウンドを訪問した。選手やスタッフに挨拶し、人間関係の形成を開始したのだった。

    正式に監督としてチェルシー入りしたコンテは、選手との関係を深め、チームワーク立て直しに本腰を入れると同時に、クラブを支えるスタッフに対して人間として接した。「毎日、スタッフ全員に握手と笑顔で挨拶してくれる」と、クラブのオフィスで働くスタッフが驚きと感激を語った。

    2月には、ラグビー・ユニオンのイングランド代表チームのトレーニング・グラウンドを訪れ、エディ・ジョーンズと対面した。どん底に落ちたイングランドを引き継いで、12戦全勝の王者に引き上げたエディ・ジョーンズとの対話から、「違うスポーツでのウィニング・メンタリティの在り方を学んだ」と、コンテは語った。

    「エディ・ジョーンズはウィニング・メンタリティの塊。それを選手に注入し、勝てるチームを作った」。

    Liverpoolファンの間では、勝者チェルシーに素直に拍手を送ると同時に、コンテに対する尊重を改めて語り合った。「今のチェルシーの選手たちは、大半が2年前にリーグ優勝を勝ち取った主力。その凄い戦力に、自信を植え付けて本来の実力を引き出したコンテの業績は大きい」。

    さてLiverpoolは、トップ4を賭けて5月21日の最終日に臨む。ファンにとっては、自分たちのチームの中で着実に積み上げられているウィニング・メンタリティが実を結ぶために、全面的に支持する準備はできていた。

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    プロフィール

    ピーエルエフジェイ

    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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