フットボールのだいご味を全て出し切った試合

    3月19日のエティハド・スタジアムで、マンチェスターシティがLiverpoolと1-1と引き分けた試合の後で、ペップ・グアルディオーラが「私の監督としてのキャリアの中で、最高だった」と唱えて、その場に居合わせたジャーナリスト一同を絶句させた。これまで監督として、バルセロナとバイエルンミュンヘンで21のメジャーなトロフィーを誇るグアルディオーラが、ホームでリーグ戦引き分けた試合を「最高」と表現したことで、誰もが意表を突かれたのだった。

    「最高だった」理由を問われて、「モナコ(CLラスト16の2戦目で3-1と敗れ、通算6-6、アウェイ・ゴールで敗退)の後で、失意のあまり、ろくに会話もなかった日々の後で、打って変わって精神力を発揮したから」と、グアルディオーラは答えた。「Liverpoolは強豪。良い選手がたくさんいる上に、前週のプレミアリーグ戦からまる1週間あった。でも、わが選手たちは闘士をむき出しにして、あわや勝利という試合をした。それが、私は嬉しかった」。

    ユルゲン・クロップは、試合終幕に絶好のチャンスを逃したアダム・ララーナが、試合後に謝ったという話を、記者会見で明かした。「アダムは、開口一番に『すみませんでした』と言った。私は、何を謝っているのだ?と一笑した。相手キーパーはスーパーセーブを連発させていたから、あの瞬間に迷いが出たのだろう。そもそも、アダムは今日の試合でも会心のプレイをした。謝る必要など全くない」。

    「セルヒオ・アグエロも絶好の得点チャンスを逃したし、両チームともにPK?という場面もあった。我がチームが勝ってもおかしくなかったが、負けても文句は言えなかった。引き分けは正当な結果。アウェイでシティに引き分けるというのは決して悪い結果とは言えないし、選手たちは良くやった」。

    その日のマッチ・オブ・ザ・デイでは、アナリストが異口同音に、「シティ対Liverpoolは、ゴール・チャンスあり、ミスあり、議論のネタになる判定もあり、そして両チームが勝ちを目指して攻撃し続けた。フットボールのだいご味を全て出し切った試合」と絶賛した。「世界のトップ・クラスの監督が率いる両チームは、両監督の有能ぶりを実現して、クラシックと言える試合にした」。

    ファンの反応も、「議論のネタになる判定」に対する文句と、トップ4争いへのマイナスはあったものの、引き分けは正当な結果だったという意見では一致していた。

    そして、ライバルの2チームが揃って2ポイント落としたことを喜んだユナイテッド・ファンも、「それにしても、この対戦は、いつも面白い試合になる」と、素直な感想を漏らした。

    この試合に先駆けて、Liverpoolファンがマンチェスターに向かう高速道路(M62)の降り口に、シティ・ファンが掲げたバナーが、両ファンの絆を象徴していた。それは、先日Liverpoolのクラブが発表した、アンフィールドとメルウッドで開催する記者会見から、サン紙を締め出すという措置に対して、シティ・ファンのグループが同調して、「サン紙は絶滅すべき」というスローガンをバナーにしたものだった。

    「シティとLiverpoolは、アンチ・ユナイテッドで固く結ばれている」とユナイテッド・ファンがジョークを言う程に、両者は仲が良い。プレミアリーグを取り巻く環境が大きく変わっている近年は、その関係も異なってきてはいるが、大多数の良識あるファンの間では、伝統が守られていた。

    12月のアンフィールドでの両者の対決(試合結果は1-0でLiverpoolの勝利)に際して、マンチェスター・イブニング・ニュース紙が「マンチェスター対マージーサイドの都市間ライバル意識」と題して、ユナイテッドとLiverpoolに代表される、フットボール界での都市間争いの歴史を説いた。

    それは、19世紀まで遡る。産業革命の発祥地となったマンチェスター(当時はランカシャー)の綿織物工場は、貿易港だったリバプール市に物流を依存していたが、その費用を巡って両都市が決別するに至った。港を自前で持つために、マンチェスター市内に運河が建設され始めたのが1894年のことで、「その頃から都市間ライバル意識が激烈になってきた」と、同紙は説明した。

    「僅か35マイル(約57キロ)の近距離にあり、歴史的に労働者階級の町だった両都市は、あまりにも共通点があるからこそ、逆にライバル意識が激化した。その都市を代表する2大クラブ(ユナイテッドとLiverpool)が、通算して45年間もの間、イングランドのフットボール界を独占してきたことが、都市間ライバル意識を一手に背負うことになった」。

    同記事は、「シティがユナイテッドを凌駕して、名実ともにマンチェスターを代表するクラブになったら、シティとLiverpoolとの関係が変わるかもしれない」という問いかけで終わっていた。

    今回の引き分けの後で、笑顔で肩を抱き合うグアルディオーラとクロップの映像の横で、マッチ・オブ・ザ・デイのアナリストが締めくくった。「素晴らしい試合を展開し、ポイントを分かち合った両者は、今季のプレミアリーグ優勝の可能性を失ったことは意識していただろう。この試合の勝者は、チェルシーと、たぶん、ユナイテッド」。

    「ただ、この2つのクラブは、クラシックな対決の代名詞としてイングランドのフットボール界に名を刻んだことは間違いない」。

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    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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