ファンの連帯感

    1月9日、FIFAの「サポーター賞」が発表され、Liverpoolとドルトムントのファンが輝いた。この賞は、試合に際して感動的な場面を作った「ファンの連帯感」を讃える目的で創設されたもので、2016年4月のアンフィールドでのEL準々決勝で、一緒にYou'll Never Walk Aloneを合唱したLiverpoolファンとドルトムント・ファンが第一回目の受賞者となった(試合結果は4-3でLiverpoolの勝利)。

    Liverpoolの地元メディアやファン、そして元選手が、ほぼ例外なく「2016年のマッチ・オブ・ザ・イヤー」に上げるこの試合は、気合いで大逆転勝利を得たチームだけでなく、誰もが「スタンドのファンの貢献」を語る。そして、必ず話題に上るのが、試合前の1分間の黙とうで、コップと対面のアンフィールド・ロード両スタンドで「96」のモザイクを作った、ドルトムント・ファンの連帯感だった。

    折しも、前日の1月8日には、アンフィールドでのFAカップ3回戦で、4部のプリマス・アーガイルが、平均年齢21歳296日でクラブ史上最年少記録となった「Liverpoolのユース・チーム」を0-0に抑え、再試合に持ち込んだことで、Liverpoolに対する風当たりが強くなっていたところだった。

    BBCは、この再試合がもたらす財政的な意義に焦点を当てた。「プリマスにとっては、おそらく再試合もTV放送戦となるだろうLiverpoolとの2試合は、£1Mの収入となり、その金額は年間予算の20%に該当する」。つい6年前に、オーナー交替のゴタゴタでクラブが破産し、リーグからポイント削減処分を受けた結果、降格を重ねて2部から4部に旧転落したプリマスにとって、この収入は莫大なものだった。

    「試合後に、トンネルの中でプリマスの選手が、ユルゲン・クロップにサインをお願いしているらしい場面を、TVカメラが偶然捕えた。そもそも、4部の選手たちにとって、クロップは、TVでしか見られないような雲の上の人。そんな有名監督が率いるプレミアリーグ2位のLiverpoolを、引き分け再試合に持ち込んだことは、実質的な金星」と、プリマスを絶賛した。

    そして、Liverpoolファンのフェアプレイに対する賞賛も忘れなかった。「ピッチを去るプリマスのチーム一行に対して、アンフィールドのホーム・スタンドからも盛大な拍手が飛んだ」。

    試合に先駆けて、「人口25万5千人のプリマス市は、トップ・ディビジョン在籍のチームを出したことがない、ヨーロッパ最大の都市」と、プリマス・ファンが語ったエピソードは、Liverpoolファンの間で大きな話題になった。

    「倒産と降格を繰り返し、選手の給料が支払われない月日が続いた時には、文字通りのどん底に陥った。ネガティブなムードはファンに波及し、悪の連鎖にはまった2013-14季のこと。これがプロ・リーグ(4部)での最後の試合だと観念していた時に、『プリマスを救え』という運動がブライトンで発生し、数千人のブライトンのファンが駆け付けてきてくれた。それは、その数年前に、ブライトンが倒産に見舞われた時に、我々プリマス・ファンが同様の運動で協力したことを、彼らは覚えていて、その恩返しをしてくれたのだった」。

    ブライトン・ファンの連帯感はピッチの上に伝わり、マンスフィールド戦でプリマスは、1-0と奇跡的な勝利を得た。それを皮切に、プリマスは次第に安定を取り戻し、翌2014-15季からは2年連続でプレイオフに出場するなど、毎年3部昇格を目標に掲げる勢力となった。

    「Liverpool戦は、我々にとって『ビッグ・マッチ』ではない。ビッグ・マッチは、マンスフィールド戦のような試合のこと。アンフィールドでLiverpoolと対戦するというのは、ここまで数年間、歯を食いしばってそれらのビッグ・マッチを乗り越えてきた報酬」。

    このファンは、その「報酬」の結果、チームが果敢に戦って目的を達成した試合の後で、「アンフィールド内外で、多くのLiverpoolファンから温かく接してもらった。お蔭で、素晴らしい思い出となった」と、明るいメッセージを残して帰って行った。

    その翌日、FIFAの「サポーター賞」受賞に際して、ドルトムントから「この賞は、ヒルズバラの96人に贈られるべき」と声明が出た。ファンの連帯感は、ディビジョンを超え、国境を越えて広がっている。

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    プリマスのサポーターはアウェイにも関わらず素晴らしい応援だったと思います。
    プロフィール

    ピーエルエフジェイ

    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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