ボーリング(たいくつな)・ジェームズ・ミルナー

    11月29日のリーグカップ準々決勝、アンフィールドでのリーズユナイテッド戦で、17歳のベン・ウッドバーンがLiverpoolのクラブ史上最年少得点記録を塗り替えて、イングランド中のヘッドラインを独占した(試合結果は2-0でLiverpoolの勝利)。その陰で、Liverpool陣営内では、ユルゲン・クロップが披露した微笑ましいエピソードが、大きな話題となった。

    若手中心のチーム編成で臨んでいるリーグカップでは、主力は殆ど休ませられていた。ところが、その外れる予定だったジェームズ・ミルナーがクロップに懇願した、という話だった。「ミリー(※ミルナーのニックネーム)は熱烈なリーズ・ファンというのは有名な話だが、毎日『僕をこの試合に出してください』とストーキングされたので、根負けして8分だけ出した」と、クロップはジョーク半分に語った。

    殆どの選手は、主として出身地のチームのファンだが、ただ、別のチームでキャリアを積む中で、ファン心も均衡が取れることが多い。そんな中で、ミルナーは、地元のチームであり、ユースチームで育って、16歳309日で当時のプレミアリーグ最年少得点者になったリーズ(在籍は1996-2004)に対して、その後ニューカッスル(2004-2008)、アストンビラ(2008-2010)、マンチェスターシティ(2010-2015)と異なるクラブで、通算15年のキャリアを積んだ今も、少年時代のファン熱を維持していた。

    そのミルナーのリーズ熱は、「片思い」ではなかったことは、この日のアンフィールド・ロード・スタンドのリーズ・ファンからの盛大な拍手が物語っていた。

    それを見て、Liverpoolファンは、リーズ・ファンとミルナーの両者を絶賛した。「ミルナーはたぶん、これまで在籍したすべてのクラブから、このように熱烈に慕われ続けているだろう」。

    その言葉を裏付けるように、12月31日のアンフィールドでのビッグ・マッチを控えたマンチェスターシティの地元紙マンチェスター・イブニング・ニュースが、「ミルナーがいたら、ペップ・グアルディオーラはどれだけ助けられただろう」という、哀愁が籠った記事を掲げた。

    それは、ミルナーが今季Liverpoolでレフトバックに転換し、プレミアリーグのベスト・フルバックの候補入りする程の順応ぶりを見せていたのとは対照的に、シティがフルバック不足に苦戦している現状に焦点を当てたものだった。「グアルディオーラは、伝統的なミッドフィールダーの役割もこなせるフルバックを求めているが、シティの戦力は対応し切れていない。一方で、ミルナーがレフトバックとして華麗な変身を遂げ、持前のプロ精神を発揮していることで、Liverpoolはレフトバックの問題を完全に解決した」。

    ミルナーの「華麗な変身」については、一足先にクロップが語った。「夏に、ミリーを呼んで『レフトバックになって欲しい』という話をした時は、二つ返事とは言えなかったのは真相。しかし、それでも文句も言わずその役割を果たしているミリーは、超一流のプロ。私がこれまでのキャリアで出会った選手の中で、間違いなくトップ5に入る程の、模範的なプロ」。

    ミルナー本人も、それは否定しなかった。「レフトバックのポジションでプレイすることで最高に満足している、と言えば嘘になる。ただ、僕が最も重要だと思っているのはチーム。Liverpoolが成功すること、そのチームに貢献できる選手であること。それが実現できるならば、どのポジションであっても構わない」。

    クロップのミルナーに対する信頼は、あの有名な(悪名高い?)「ボーリング(たいくつな)・ジェームズ・ミルナー」アカウントに関するジョークで締めくくった。「ミリーは、パロディ・アカウントとは正反対の人格。典型的なイングランドのプロ選手、という感じで、いつもジョークを言って笑っている。『たいくつ』な面など一つもない。たぶん、リーズ時代から髪型が変わっていないから?」

    その「ボーリング・ジェームズ・ミルナー」は、シティ時代に第三者が作ったパロディ・アカウントで、2014年のクリスマスには、シティがオフィシャルTVのビデオで「ジェームズ・ミルナーのたいくつなクリスマス」と題して、ミルナーが、面白みのないクリスマス・プレゼントを淡々と披露するジョーク・ビデオを出した。それは、ミルナー本人がパロディ・アカウントをパロディにした、純粋に笑いを買う作品だった。

    それがあまりにも好評だったため、シティは昨年、その続編を出した。ミルナーが既にLiverpoolに行ってしまった後のことだったが、1年前のスタッフがジョー・ハートと会話しているときにミルナーから電話がかかって来て、「クリスマス・プレゼントにはトイレットペーパー・ホルダーが欲しい」とリクエストし、二人が爆笑する、という内容だった。

    シティのクラブも、ミルナーの穴を感じていることは明らかだった。

    マンチェスター・イブニング・ニュース紙の結論は、感情が籠っていた。「監督の戦略を理解し、監督が命じるポジションがどこであっても、全力を尽くして任務を果たすミルナーは、常に100%を出す誠実な選手。ミルナーにとって、グアルディオーラが監督を勤めるチームでプレイするというのは魅力を感じただろう。でも、それ以上に、グアルディオーラはミルナーを必要としている」。

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    ピーエルエフジェイ

    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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