ゴールキーパーのジレンマ?

    先週12月4日のボーンマス戦(試合結果は4-3でボーンマスの勝利)で、インジャリータイムの決勝ゴールを献上したLiverpoolのゴールキーパー、ロリス・カリウスを巡る議論は、イングランドのメディアを飾り続けた。ジェイミー・キャラガーが「カリウスがゴールを守った10試合で、LiverpoolのNo.1として十分な実力を、まだ見せてもらっていない」と厳しく批判したコメントも含め、大多数のアナリストから否定的な評価を受けていた。

    これに対してユルゲン・クロップは、「アナリストはスタジオでビデオを見ながら、各プレイを分析するのが仕事で、批判もその一環」と軽く流し、「ジェイミー・キャラガーも現役時代には批判されたことがあるだろう」と、かわした。

    しかし、翌日になって、カリウスのミスを誘って決勝ゴールをアシストしたボーンマスのスティーブ・クックが、インタビューで、「カリウスがLiverpoolの弱点だから、狙い撃ちするという作戦で臨んだ」と公言したことが、クロップの激怒を買った。

    「私がこれまでプロ生活で聞いた発言の中で最悪と言えるもの。ボーンマスは立派に戦って試合に勝った。でも、あの選手は、その上更に、相手チームの選手をけなす必要があると思ったのだろうか。あの言葉だけで、私は次にボーンマスと対戦する日を待ち焦がれる気になった」。

    1週間を通して議論のネタになり続けたカリウス本人が、12月11日のウエストハム戦の直前に、ミラー紙のインタビューで、自ら火に油を注ぐことになった。

    それは、「僕は、自分のミスについて反省しているし、チームメートに謝った。みんなが、ミスはチーム全員の責任だと言ってくれた。しかし、アナリストが、執拗に僕を批判するのは何故なのか理解できない。キャラガーはLiverpoolのレジェンドだし、ファンとしての苛立ちもあっただろうから、彼の批判は受け止める。しかし、ガリー・ネビルには言われる筋合いはない。短期間、監督を勤めて、そしてアナリストとして復帰して、すぐに、専門家面しているように見える」。

    これに対して、ガリー・ネビルが「失礼しました。監督として失敗した奴は黙っているべきでしたね」と冷たい反応をしたところ、キャラガーが「我がチームのキーパーを、苛めないでくださいよ」となだめに入り、丸く収まった。

    かくして、ピッチ内外のミスで、イングランド中の注目を受けていたカリウスは、ウエストハム戦で、前半に2失点を与える失策を起こした(試合結果は2-2)。ハーフタイムのキャラガーの一言は、Liverpoolファンの大多数の意見を代弁していた。「余計なことを言わず、やるべきことをしっかりやりなさい」。

    スカイの実況陣が、「ディミトリ・ペイェのフリーキックは、本来のペイェには程遠い出来だったが、カリウスのポジショニングが悪すぎたため入ったゴール」と分析した直後に、テレビカメラが、アンフィールドのスタンドに座っていたレイ・クレメンス(Liverpool在籍は1967–1981)とブルース・グロベラ(Liverpool在籍は1981–1994)を映した。すかさずアナウンサーが、「Liverpoolの史上に残る偉大なキーパー2人の意見を聞きたいものです」と、痛烈な一言を加えた。

    試合後の記者会見でも、話題の中心はカリウスだった。「ペイェのフリーキックは止めることが出来たと思いませんか?」という質問に対して、「その質問をしたのは、あなたで7人目です」と、クロップはいつもと同じユーモア交じりの口調で、火消しに努めた。「私は1回しか見ていないので、正直、判断できない。何度かリプレイを見て言っているあなた方の方が、実は間違っているかもしれないし」。

    「それより、ペイェのフリーキックは、さすがだと思った。試合前のウォームアップで、彼がフリーキックの練習をしていたのをじっと見ていた。その時は、全部外したので、私は心の中で『試合でも外してくれればいいのに!』と祈っていたのだが、残念」。

    そして、記者団の笑いが収まった後で、勝てなかった理由を語った。「私の作戦が外れたため。ウエストハムは3バックで来ると思ったのに、フラット4で来た。そのため、我がチームは戸惑った。後半、立ち直って頑張った。最後まで勝ちを目指して戦ったし、スタンドのファンは、その選手たちの気合いを評価して、精一杯応援してくれた。同点ゴールが出せたのは、その成果。勝ち越しゴールが出せなかったのは反省点」。

    クロップの言葉に、ファンは深く頷いた。「クロップが選手全員について的確に評価を下し、対策を練っていることは間違いない。その上で、公の場では絶対に選手の批判はしないという態度を貫いている。たとえ、ダメだと決断した選手だとしても、公の場で批判するのはマイナスでしかないのだから、クロップのやり方は全面的に正しい」。

    カリウスについては、今の状況に満足している人は誰もいなかったが、同時に、ネガティブは決断を下している声も殆どなかった。「23歳のキーパーというと、まだ駆け出しの年齢。特にプレミアリーグ初シーズンなのだから、時間を与えるべき」。

    コメント

    非公開コメント

    プロフィール

    ピーエルエフジェイ

    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

    最新記事
    最新コメント
    リンク
    検索フォーム
    RSSリンクの表示
    QRコード
    QR