監督の歌はもう歌わない

    11月6日、Liverpoolはアンフィールドでワトフォードに6-1と圧勝し、11試合で26ポイントと、2位チェルシーに1ポイント差で首位に立った。Liverpoolにとっては、シーズン途中の暫定的な順位も含めて、プレミアリーグの頂点に到達したのは2014年5月以来のことだった。

    試合後の記者会見で、さっそく記者団から「優勝狙い」の質問を浴びせられて、「11試合を終えた時点で、1ポイント差で1位にいることを、有頂天になるなんてあり得ない。シーズンは長い。この先、何が起こるかわからない。プレッシャーなど感じている暇はない。我々は、冷静さを保って、より良いプレイを目指すだけ」と、ユルゲン・クロップはあっさりかわした。

    「前日にチェルシーが強さを見せつけた(対エバトン、試合結果は5-0でチェルシーの勝利)。マンチェスターシティがバルセロナに圧勝した試合は強烈な印象に残っている(試合結果は3-1でシティの勝利)。アーセナルとトットナムは今日は引き分けたものの(試合結果は1-1)、依然として好調さを保っている。そして、マンチェスターユナイテッドは常に驚異。11月のリーグ順位は何の意味もない」。

    しかし、イングランドでは依然としてクロップ人気は高く、ドルトムント時代の実績と現在のLiverpoolの破壊的な攻撃力に加えて、今季はヨーロッパのカップ戦がない分リーグに注力できる「利点」を上げて、騒ぐ声は絶えなかった。

    いっぽう、フットボールは結果ビジネスで、1試合に勝てないと直ちに危機説を作り上げるメディアの過剰反応は、誰もが知るところだった。

    その例の一つが、土曜日にホームでミドルスバラに1-1と引き分け、今週末で首位を明け渡したマンチェスターシティに関するネガティブな記事だった。

    「ペップ・グアルディオーラは、シティに来てすぐに、選手に対して権威を奮い始めた。まずは、プリシーズン後に初出勤してきた選手に対して、夏休み中に体重を一定数以上増やした場合には、減量するまでチームから隔離させて、別トレーニングを命じた。次は、ミーティング中に携帯を見ていた選手がいたことで、トレーニング・グラウンドのWifiをオフにした。建物内は弱い3Gが時々使えるだけで、4Gの電波が届かないため、Wifiなしでは実質的な携帯の使用禁止と、選手は不満を蓄積させている」。

    要は、勝てない時にはプリシーズンの話まで掘り下げて、監督批判の記事が満載するのが、プレミアリーグを取り巻くメディアの実態だった。

    そんな中で、毎試合スタンドに駆け付けるファンは、監督支持を表明し続けていた。シティ・ファンの場合は、プレミアリーグ中で評判を呼んでいる歌(※デイブ・クラーク・ファイブの「グラッド・オール・オーバー」のメロディで「We've Got Guardiola/我々にはグアルディオーラがいる」という感じ)で、連続無勝を6と伸ばした時にも、グアルディオーラ支持を歌い続けた。

    これに対して、同じく不調に苦しんでいるユナイテッド・ファンが、感情を込めてつぶやいた。「シティ・ファンのグアルディオーラの歌を聞くと、彼らが監督に対していかに深い情熱を注いでいるか、手に取るようにわかる。我々も見習うべきだ。そうすればメディアも、ジョゼ・モウリーニョに対して執拗な攻撃を仕掛けても無駄だと分かるだろう」。

    メディアのネガティブなプロパガンダに関しては、Liverpoolファンの間でも認識していた。「シティ・ファンのグアルディオーラの歌はすばらしい。我々も、あんな風に、クロップに対して感謝と激励の気持ちを伝えることが出来たらいいのに、と残念に思う」。

    最近のグアルディオーラ同様に、クロップにも「メディアが蒸し返して騒ぎ立てるネタ」はあった。その一つが、9月10日のアンフィールドでのレスター戦のことだった(試合結果は4-1でLiverpoolの勝利)。試合後の記者会見で、「スタンドのファンが、試合中に私の歌を歌うのを聞くと、落ち着かない気持ちになる」と言ったものだった。

    「勿論、ファンが私の歌を歌ってくれるのは嬉しい。ありがとう!」と強調しつつ、クロップはファンに懇願した。「アーセナル戦の後で、試合中にゴールを祝った過ちについて、私は反省した(※開幕戦、試合結果は4-3でLiverpoolの勝利)。それと同じで、まだ勝敗が決まってない時に、私の歌を歌うのはやめて欲しい」。

    これに対して、Liverpoolファンは、「スタンドが監督の歌を歌う、その意義の解釈がすれ違っているような気がする」と困惑しつつも、クロップの意思を尊重した。「我々はもうクロップの歌は歌わない~と歌ったら、クロップはスカウサー・ユーモアを理解してくれるだろう」と、ジョークを言って笑った。

    「クロップの良いところは、常に正直で、ファンに対しても腹を割って語ること。だから我々は、クロップに対する信頼を抱き続ける。シーズン末までの残り27試合を全勝することなどあり得ない。必ず、ポイントを落とすことがある。その時に、どんなにメディアが騒いでも、ファンが監督支持を訴え続ければ、クロップは必ず信頼に応えてくれるだろう」。

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    プロフィール

    ピーエルエフジェイ

    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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