イングランド代表チームのアームバンド

    10月10日の夜に、イングランド代表チームの暫定監督ガレス・サウスゲートが、主将ウェイン・ルーニーを次のスロベニア戦のスターティング・メンバーから外す決定を告げたことで、イングランド中が蜂の巣をつついたような騒ぎになった。

    これは、その前のマルタ戦で、ディフェンシブ・ミッドフィールドで出場したルーニーが、圧倒的多数のアナリストから「チームの足を引っ張った」と批判されるプレイをしたことで、ルーニーの出場いかんが議論になっていた末のことだった(試合結果は2-0でイングランドの勝利)。

    一足先に、ルーニーがマンチェスターユナイテッドでベンチに格下げされた時に、「ジョゼ(モウリーニョ)の勇断」と、ユナイテッド・ファンは一斉に同意の声を上げた。「そもそもルーニーは、2012年をピークに下降の一途を辿っている。サー・アレックス・ファーガソンが引退した2013年に、ルーニーは出て行くべきだった。デビッド・モーイズの最初の大きな間違いは、ルーニーを2019年まで契約更新したこと」。

    ユナイテッド・ファンの間では、ルーニーがサー・ボビー・チャールトンが持つユナイテッドの得点記録にあと3と迫っている(247)数字について、「ルーニーは、果たしてユナイテッドの歴代トップ・スコアラーにふさわしい『レジェンド』と言えるか?」という議論すらあった。

    ユナイテッドでレギュラーの座を失ったルーニーは、その後のインタナショナル・ウィークで、イングランド代表チームでの地位にメスを入れられることになった。

    イングランド代表チーム史上トップ・スコアラーの記録に続き、ピーター・シルトン(1970-1990)が持つ最多キャップ(125)に8差となっていたルーニーの、現在の状況に対して、そのシルトン本人から、「ルーニーはユーロの後で代表引退すべきだった」と酷評すら出た。その結果、玉砕したマルタ戦では、ウェンブリーのスタンドからルーニーに対する大音量のブーイングが飛ぶ事態となった。

    これに対しては、もともと「イングランド代表チームのファン」とは一線を画している、マンチェスターやマージーサイドの各チームのファンが、「試合中にスタンドから、自分のチームの選手にブーイングするというのはやってはいけないこと」という批判が出た。「ルーニーのプレイを褒める気はないが、しかし、自分が応援しているチームのクラブ主将が、代表チームのファンにブーイングされるという状況を見れば、誰でも嫌な思いをすると思う」。

    それらファンの意見を裏付けるかのように、マルタ戦のマン・オブ・ザ・マッチに輝いたジョーダン・ヘンダーソンから、ルーニー擁護のコメントが出た。「ルーニーは我がチームの主将。マンチェスターユナイテッドでも、イングランド代表チームでも素晴らしい業績を作ったリーダー。批判されるのは、ルーニーが強力な選手であり、本来はもっと良いプレイが出来ることをファンが知っているからだと思う」。

    かくして、イングランド中のメディア、ファン、新旧選手の話題がルーニーに集中している中で、スロベニア戦でベンチに格下げとなったルーニーに代わって、暫定的に、ヘンダーソンがアームバンドを引き継ぐ、という決定が伝えられた。

    「どん底に低迷している今のイングランド代表チームで、世界的に名が通っている選手と言えば、ルーニーだけ。その『名前』でアームバンドを与えられたルーニーを、これまでの代表監督は無条件でスターティング・メンバーに入れていた。サウスゲートは、名前でなく調子でチームを選出する勇断が出来る、斬新な監督」と、メディアもファンもこの決定を大歓迎した。

    前回、ルーニーが負傷のため外れた時に(2016年3月の親善試合のドイツ戦、試合結果は3-2でイングランドの勝利)、チェルシーのガリー・ケイヒルがアームバンドを授かった時には、いわゆる「イングランド代表ファン」から、「ケイヒルが主将とは、イングランドはそこまで落ちぶれた」という声が飛んだのに、今回は、みんなルーニー・バッシングに忙しくて、代理主将にまで目が届かないようだった。

    その中で、唯一、ヘンダーソンに焦点を当てたリバプール・エコー紙が、サウスゲートの言葉を引用した。

    「決め手となったのは、ヘンダーソンが所属クラブで、イングランドのフットボール史上に残る名選手から主将職を引き継ぐという、ものすごく大変な仕事にチャレンジしていること。そして、その中でヘンダーソンは、リーダーとしての資質を身につけ、名実ともに主将にふさわしい役割を果たすようになった。今のイングランド代表チームの中には、リーダーシップに優れる選手は他にもたくさんいるので、ラクな決断ではなかった。しかし、私は、ビッグ・クラブで主将を勤めている実績を重要視してヘンダーソンを選んだ」。

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    ピーエルエフジェイ

    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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