「汚れたリネンを公の場で洗う」選手

    8月6日に、バスティアン・シュバインシュタイガーがマンチェスターユナイテッドのアンダー23チームに格下げされた、という話がイングランドのヘッドラインを飾った。監督が変わった時に、前監督下で主力として働いていたビッグ・ネームの選手が、余剰戦力として干されることは珍しいことではない。

    ただ、シュバインシュタイガーの場合は、ファーストチームから外されただけでなく、更衣室もアンダー23に移動させられたことで、古巣バイエルンミュンヘンがジョゼ・モウリーニョに対して「屈辱的な扱い」と紛糾したのに続き、国際プロ選手協会(FIFPro)から「パワハラだ」という非難が飛んだ。

    その喧騒の中で、シュバインシュタイガー本人は、モウリーニョに対しても、ユナイテッドのクラブに対しても、敬意を保持し続けた。

    ユナイテッド・ファンの間では、「戦術面で、モウリーニョのチームには不適合であることは事実」という結論が圧倒的だったが、文句も言わず、「汚れたリネンは公の場で洗わない」方針を貫いているシュバインシュタイガーの、まさに世界チャンピオンにふさわしい、威厳に満ちた態度に対しては、誰もが心から拍手を送った。

    いっぽう、隣のマンチェスターシティでは、CLの登録から外れたことで、ヤヤ・トゥーレのエージェントがペップ・グアルディオーラを公の場で批判する事件が発生した。これに対して、グアルディオーラが「謝罪するまでヤヤを試合に出さない」と宣言し、翌日にヤヤのエージェントが、「ヤヤは、マンチェスターシティが無名で、ワールドクラスの選手は誰も行きたがらなかった時に、敢えてシティに入って、今のチームにした選手。シティがビッグ・クラブになってから入って来て、大金を使って選手を買い集めているグアルディオーラが、何の権利があってヤヤを粗末にするのか」と畳みかけ、「公の場での喧嘩」はエスカレートした。

    それに対する、シティ・ファンの立場は明らかだった。「ヤヤは、2012年に44年ぶりのリーグ優勝を達成した時のヒーローの一人。しかし、33歳になってますますスピードが落ちたヤヤが、ペップの戦略から外れていることは否定できない。隣のシュバインシュタイガーのように、何も言わずに新天地を探せば、レジェンドとして永遠に我々ファンの心に住み続けるのに、何故、公然と監督批判して自分の立場を悪くするのか?」

    「ペップがファンに絶大な人気を誇っていて、しかも、チームが10連勝と絶好調の今、ペップと喧嘩すれば、ファンをも敵に回すことは火を見るよりも明らか」。

    そして、9月24日の早朝には、「汚れたリネンを公の場で洗う」事件がLiverpoolに飛び火した。ママドゥ・サコーが、「僕はもう3週間前から普通にトレーニングしているのに、試合に出してもらえない。試合に出られないのは仕方ないと思っているが、僕の状況について、嘘の説明がまかり通っていることについては受け入れられない。僕をずっとサポートしてくれているファンには真相を知ってもらいたい」というメッセージをSNSにポストしたのだった。

    地元紙リバプール・エコー紙は、「ユルゲン・クロップを嘘つき呼ばわりしたことで、サコーは自らのLiverpoolでの立場を、復旧の余地がないところまで追い込んだ」と厳しい文面だったのに加えて、Liverpoolファンの反応は怒りが籠っていた。「チームの行方を決める重要な試合の日に、何故?」。

    それは、ハル戦(試合結果は5-1でLiverpoolの勝利)の試合後の記者会見で、事件に関する説明を求められたクロップの回答とも同期を取っていた。「その話は、今朝、読んだ。でも、その時点では今日のこの試合に神経が集中していたので、他のことは考えることは出来なかった。今、やっとその余裕が出来たので、これから検討する。ただ、あまり良くない事態であることは確か」。

    クロップの言葉に、ファンは一斉に、深くうなずいた。「サコーに対しては、プレイ面で賛否両論ある中で、僕は一貫して支持し続けた。その僕ですら、もはやサコーが出て行くことは必然だと思うようになった。サコーに対して根強い支持を掲げてきたファンは多いが、同時にクロップのことも熱烈に支持している。残念なのは、サコーが監督との喧嘩にファンを巻き込んだこと」。

    開幕戦にエミレーツ・スタジアムでアーセナルに4-3と勝って、「爆発的な攻撃力」が話題を呼んだ翌週に、昇格チームのバーンリーに2-0と自滅したLiverpoolは、「ビッグ・クラブとの対戦では強いのに、守り一辺倒でかかってくるチームには勝てない。今までと何ら変わらない」という批判を背に、チームが一丸となって、ハル戦ではそのジンクスを吹き飛ばした。

    「クロップが常に言っているのは、『みんなで一緒にやる』ということ。今のチームは、それをまさに実現している。それが出来ない選手は、チームにはマイナスの存在」。

    一足先に、ユナイテッドが3連敗の悪運を払って、チャンピオンのレスターに4-1と快勝した試合後に、シュバインシュタイガーが「よくやった!」と、明るいメッセージをポストした姿が印象的だった。

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    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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