スタンドの声が選手に届く時

    インターナショナル・ウィーク明け、9月10日の週末のプレミアリーグでは、3戦3勝同士の直接対決でもあるマンチェスター・ダービーが、早々にヘッドラインを飾った。2大優勝候補であり、この夏最も有効な戦力補強を行ったトップ2、という評価あり、いわく付の監督対決、などの話題に加えて、セルヒオ・アグエロが前週のウェストハム戦で(試合結果は3-1でシティの勝利)、相手ウィンストン・リードにひじ打ちを食らわせた件で、FAから事後処分を受けたことが意外な事件に発展したのだった。

    問題の「ひじ打ち」は、レフリーの目の前で行われたが、試合ではお咎めなしで終わった。「レフリーが問題の行為を見たが、処分しなかった」場合は、FAの事後処分は原則として適用されない。つまり、アグエロの反則は、レフリーが、目の前にいながら「見ていなかった」と報告したことになる。

    その決定の直後に、元レフリーのマーク・ヘルシー(2013年に引退)が、「自分は見ていたのに、事後処分を適用するために『見ていなかった』と報告させられた」という証言を、SNSで流したのだった。更に、その信ぴょう性を問われたヘルシーは、先の発言を確認した上で、「偽証を強要したのはFAではなく、レフリー協会だった」と付け加えたことから、大騒ぎになった。

    結果的には、アグエロの3試合出場停止処分は決定され、9月10日のダービーには出られないことになったが、早速、両ファンの間で活発なやり取りを触発した。

    ちなみに、シティ・ファンにとってアグエロは絶対的な人気No.1で、スタンドで定番になっている「アグエロの歌」は複数あった。その中で最も頻繁に歌われるのが、'This is how it feels to be City, This is how it feels to be small, You sign Phil Jones we sign Kun Aguero'(シティであることを実感する時。スモール・クラブであることを実感する時。君たちはフィル・ジョーンズを獲得した時に、我々はクン・アグエロを獲得した)というもので、つまり、大好きな選手を讃える歌の中でも隣人ユナイテッドを言及しているのだった。

    対するユナイテッド・ファンは、事あるごとに、「我々の最大のライバルはLiverpool。シティは単なる『騒がしい隣人』」と言いつつ、スタンドではシティのことを歌っていた。

    昨季のFAカップ決勝で、延長の末2-1とクリスタルパレスを破って優勝に輝いた試合の後で、ユナイテッドの選手たちがウェンブリー・スタジアムの控室で、ユナイテッド・ファンのスタンドでの定番である「ユナイテッドは我がチーム」を合唱してお祝いした動画がインターネット上に流れて、イングランド中の話題を呼んだ。

    その歌というのが、'U-N-I T-E-D. United are the team for me. Why don't City f*** off home'(ユナイテッドは我がチーム。シティは出てけ)という、いわゆる「シティの歌」だった。

    これを見て、度胆を抜かれたシティ・ファンは、「優勝した瞬間に、我々のことを歌うとは。ユナイテッドはファンだけでなく、選手も、我々のことを妬んでいるということが証明された」と、悪態を尽きながらも、心の中でニンマリ笑った。

    「3部に落ちた時には、雨の中でヨークまで0-0の試合に駆けつけて、泥まみれになって帰る道中、ユナイテッドが負けることを真剣に祈った。月曜日に会社に行って、同僚のユナイテッド・ファンにまた笑われるのかと辛い思いで過ごした日々が忘れられない」と、スモール・クラブぶりを語るシティ・ファンは、今やユナイテッドが自分たちを対等なライバルとして見ている事実について、感慨深い思いを抱いていた。

    Liverpoolファンは、ユナイテッドの選手たちの「FAカップ優勝祝いの歌」に笑いながら、選手がいかにスタンドのファンの歌を聞いているか、という側面に、認識を改めた。

    マンチェスター・ダービーの派手な話題性とは異なるものの、インターナショナル・ウィーク明けは、Liverpoolにとって今季初のホームの試合という、非常に重要な週末を迎えていた。それは、メイン・スタンドの大改修工事を終えて、アンフィールドが54,000人収容のスタジアムとして新装開店するものだった。

    Liverpoolが、スタジアムの工事のためにシーズン開幕にアウェイ戦が続いたのは、1987年まで遡る(※コップ・スタンドの下水管工事のため)。毎シーズン、リーグ優勝が期待されていた黄金時代とは様相は異なるかもしれないが、待ちに待った初ホーム戦であることは変わらなかった。

    そして、アンフィールドでの初戦を待ち焦がれているのは、ファンだけではなかった。「Liverpoolと言えば、アンフィールドのスタンドの熱い声援が有名」と、ジョエル・マティプが語った。

    「プリシーズンの時からずっと、この日を待っていた。アンフィールドのピッチに立って、スタンドのファンが歌うYou’ll Never Walk Aloneを聞くことを想像すると、全身が震える程に気合いが湧いている」。

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    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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