スター選手を売りに出すクラブ

    8月6日、ウェンブリーでのプリシーズン戦で、Liverpoolが4-0と快勝した試合の後で、バルセロナ監督ルイス・エンリケが、「Liverpoolファンは、とても信じられない程に素晴らしかった」と、Liverpoolファンを絶賛した。これは、バルセロナの先発メンバーだった、元Liverpoolのハビエル・マスチェラーノとルイス・スアレスに対して、Liverpoolファンが盛大な拍手で迎えたことに対する感謝のコメントだった。

    自ら現役時代に、移籍した後で古巣のファンから「裏切り者」呼ばわりされた経歴を持つルイス・エンリケらしい、心の籠った言葉だった。もちろん、ルイス・エンリケのケースは、レアルマドリードから宿敵バルセロナ(1996年)と、状況は異なる。しかし、マスチェラーノもスアレスも、Liverpoolを出た時の事情は「立つ鳥跡を濁さず」とは到底言えなかったことを考えると、バルセロナのチームや地元紙が「さすがはLiverpoolファンだ」と、持ち上げたのも無理はなかった。

    ただ、マスチェラーノに関して言うと、Liverpoolが前オーナー下で、暗黒の真っただ中にあった2010年夏に、「移籍を求めて試合に出ることを拒否した」事件を起こしたことで、当時はLiverpoolファンの間でも総すかんだった。その後、バルセロナ入りしたマスチェラーノが、2011年のCL決勝戦で、マンチェスターユナイテッドを3-1と破って優勝した試合後に、スカイTVのインタビューで、「この勝利はLiverpoolファンに捧げる。出て行った時は、僕のことを怒っていたと思うが、許してくれることを祈っている」と、青天のへきれきのごとく言ったことで、Liverpoolファンのわだかまりが解けた。

    「マスチェラーノが出て行った時のやり方はいただけなかったが、しかし、その動機は理解すべきだし、出て行った先で、CL優勝という目的を達成したのだから、立派だ。そもそも、マスチェラーノのようなスター選手が目的を達するために、出て行かなければならないと決断するようなクラブになってしまったことの方が、深刻な問題」と、ファンは頷いた。

    それから5年経って、プリシーズン戦でしかバルセロナと試合する機会がなくなったLiverpoolの現状について、地元紙リバプール・エコーが、「Liverpoolは、スター選手を売りに出すクラブという事態から脱却しなければならない」と、まさに同じ疑問を投げかけた。

    「マスチェラーノ、サビ・アロンソ、フェルナンド・トーレス、そして昨年夏のラヒーム・スターリングという負の連鎖を断ち切ることが必須」。

    それは、ユルゲン・クロップの宣言とも同期を取っていた。「選手が将来を見出すようなクラブになることが、目下の目標。キー・マンとなる選手が留まることが、チームの向上には必須。そのためには、クラブ全体が、明るく、全員が一致して、成功を目指して活気に満ちていることが必要。みんなが、このチームで頑張れば必ず勝てると信じられる土台を作ることが必要」。

    一方で、勝てるチームになることが、すなわち「誰も出て行かないクラブ」の条件ではないことは、Liverpoolファンも認識していた。例えば、クリスティアーノ・ロナウドは、財政も栄誉も十分に満たされていた2009年に、マンチェスターユナイテッドを出て行った。

    「スアレスは、本来、出て行かれてクラブとして反省すべきだったタイミングの2013年に、留まってくれて、1年の延長期間でレガシーを残してくれた」と、Liverpoolファンは断言する。

    2年前に、クリスティアーノ・ロナウドが「会長のフロレンティーノ・ペレスと仲たがいして、レアルマドリードから出て行きたがっている」をいう噂が流れていた時に、ビヤレアル対レアルマドリードの試合をめがけて(試合結果は2-0でレアルマドリードの勝利)、ユナイテッド・ファンが「ロニー(ロナウドの愛称)、マンチェスターに戻っていらっしゃい」という飛行機バナーを飛ばしたことが、スペインのメディアでヘッドラインを飾った。

    勝てるチームを求めて、ではなく、お金のためでもなく、自らの夢を追って外国のスーパー・クラブに行ってしまった選手に対して、ファンは永遠にロマンを抱き続ける。

    「僕にとって、特別な試合となった。Liverpoolファンは、僕に対していつでも常に、熱烈に声援を送ってくれる。今日もそうだった。僕がLiverpoolにいた時と同じように」と、スアレスから感謝のコメントが出た。

    Liverpoolファンは、「スアレスは、Liverpoolにとってベンチマークのような存在。その効果は、単にゴールやアシストの数では評価できない。勝利に対する執着心で、リーダーとしてチーム全体を引き上げた」と、スアレスに拍手を送ると同時に、第二のマスチェラーノを出さないチーム作りを目指すクロップを、全面的に支持する決意を新たにした。

    コメント

    非公開コメント

    プロフィール

    ピーエルエフジェイ

    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

    最新記事
    最新コメント
    リンク
    検索フォーム
    RSSリンクの表示
    QRコード
    QR