健全なポジション争い

    7月21日、Liverpoolのチーム一行はイングランドでのプリシーズン4試合を終えて、アメリカ合衆国入りした。週末のうちに、ユーロに出場していたファーストチームの選手も現地集合し、2016-17季の開幕を迎えるチームが勢ぞろいして、7月28日のチェルシー戦を皮切に、31日のACミラン、8月2日のローマと、強豪チームとのウォームアップ戦を迎える。

    遠征前の最終戦となった7月20日のハダースフィールド戦(試合結果は2-0でLiverpoolの勝利)では、下位ディビジョンのチームとの4試合で4勝無失点という成績もさることながら、地元のファンに有望若手や新戦力を披露する場にもなった。中でも、最もファンに大きな笑顔をもたらしたのは、ハダースフィールド戦の67分にサブで出場した、地元出身でアカデミーチームから育ってきたアンダー18チームのゴールキーパー、シャマル・ジョージだった。

    ファーストチームの控えのGKだったアダム・ボグダンが、ローンでウィガン行きが決まったため、代わってベンチ入りした18歳のシャマルが、デビューを飾ることになったのは、不運なハプニングが原因だった。61分にルーカスが足を痛めて外れた時には、後半開始時点でベンチのアウトフィールドの選手が全員出場していたため、Liverpoolは残り30分余りを10人で戦わざるをえなくなった。そこで、一人だけベンチに残っていたシャマルが、ルーカスに代わって出ることになった。

    その時点で1-0と勝っていたLiverpoolは、10人で僅差のリードを守る体制に入り、背番号なしのアウトフィールドのシャツを着て急きょ加わったシャマルは、一人フォワードに入ることになった。最初は困惑していたに違いないシャマルが、惜しくもオフサイドとなったがゴール・チャンスを作った場面に、スタンドのファンは大喜びで、笑顔を浮かべながら盛大な拍手を送った。そして、90分にPKを得た時には、スタンドからシャマル・チャントが出たほどだった。

    かくして、すっかりファンの人気者となったシャマルの堂々たるデビューについて、試合後のインタビューで感想を求められたロリス・カリウスは、「デビュー戦で、しかも慣れないポジションだったのに、良くやったと思う」と、さわやかな笑顔で答えた。

    この夏の新戦力となったカリウスが、若きシャマルとは別の意味で注目を集めたのは、その前のウィガン戦だった(試合結果は2-0でLiverpoolの勝利)。0-0だった前半に、同じく新戦力のジョエル・マティプのバックパスを取り損なって、あわや失点という派手なミスを犯したのだった。

    プリシーズン戦で、対戦相手が下位ディビジョンのチームだったこともあり、それまでオン・ターゲットのシュート無しで、いわゆる「キーパーとしての実力」を見せるチャンスがないまま、いきなりミスという場面に、ファンは面食らった。

    しかし、ファンの杞憂を振り払ったのが、試合後のカリウスの反応だった。SNSに「チームが勝ったことが最も重要。でも、この試合の話題を僕が独占してしまったようで、申し訳なく思ってます。次は、もっと目立たないように気を付けます」とポストしたカリウスのユーモア・センスに、ファンは笑うと同時に、期待を膨らませた。

    「自分のミスを素直に謝る態度も及第点だが、何より、サッパリしていて、良い意味で自分に自信を持ち続ける選手のようだ。犯したミスについて考え過ぎれば、自分で自分にプレッシャーを課すだけでなく、前にいるディフェンダーにも不安を広げることになる」。

    Liverpoolが「バック5(ディフェンダー4人とGK)」に問題を抱えてきたことは、今に始まったことではなかった。「Liverpoolが、ボックス内を仕切るリーダー格のGKを誇っていたのは、レイ・クレメンス(在籍は1967–1981)まで遡る」とは、多くのファンが指摘していた。

    「ゴール・キックは完璧とは言えないが、ショット・ストッパーとしては一流」という評判を持って、2013年にLiverpoolに来たシモン・ミニョレは、超スーパーセーブも多いが致命的なミスも少なくなかった。Liverpoolファンの間では、「真面目な性格で、良い人に違いないミニョレは、自信喪失時の不安定さが顕著。ミスをジョークにしてしまうカリウスの精神力があれば、良いキーパーになるだろう」という声が上がった。

    当初はオリンピック出場のためシーズン開幕を欠場する予定だったカリウスが、プリシーズン開始早々に、オリンピックを断念した。「控えのキーパーになるためにLiverpoolに入ったのではない。公式戦でもゴールを守らせてもらえるよう、全力を尽くす」。

    それに対して、ミニョレは「チーム内で健全なポジション争いがあるということは良いこと。選手全員が、力を合わせて向上できて、結果的にチーム力が上がる」と、歓迎を語った。

    ハダースフィールド戦でストライカーとしてデビューを飾った若きシャマルは将来の戦力として、2016-17季のLiverpoolのゴールを守るのは誰か、今後の展開が期待される。

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    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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