契約はPKのようなもの

    7月10日、決勝でポルトガルが開催国フランスに延長の末1-0と勝って、ユーロ2016が幕を下ろした。試合前に、リバプール・エコー紙が掲載した小さな記事は、「第三者の決勝戦」となっていたLiverpoolファンの心に響いた。それは、ママドゥ・サコーが母国代表チームを訪問して、チームメートを激励したという実話で、同紙の文面は「サコーは、本当は自分が激励される側に立っていた筈」と、感傷的だった。

    その2日前にサコーの無罪放免という結論が出た「ドーピング事件」は、サコーが摂取していたファット・バーナーに含まれていた薬物はUEFAのリストには載っていたが、世界アンチ・ドーピング機関(WADA)のリストにはなかったもので、同紙は「UEFAのミスのために、サコーはLiverpoolのシーズン終幕8試合と、フランス代表チームのユーロの全試合を棒に振った。その中には、ELとユーロの2つの決勝戦が含まれていた。選手にとって、これほど厳しい『処分』はめったにないもの。何より、母国で開かれるユーロの決勝戦は、サコーにとっては一生に一度のチャンスだったことは間違いない」と、UEFAを強烈に批判した。

    4月22日にUEFAが公式に通達したこの事件(3月17日、Liverpoolがマンチェスターユナイテッドに1-1と引き分けてELラスト16勝ち抜きを決めた試合後の検査で、陽性と判定された事件)は、あくまで選手個人に対する容疑であり、所属クラブであるLiverpoolは関与できなかったため、サコーは単独で「UEFAのミス」と闘うことになった。

    Liverpoolはサコーとの合意の上で、事件が決着するまでサコーを「試合に出さない」決断を下した。続いて4月28日には、UEFAが正式に30日間の出場停止を課した。その間に、サコーの弁護団がUEFAのリストの正当性に対して疑問を唱え、調査の結果、今回の「無罪」判定となった。

    「UEFAがミスを犯さず、サコーが出場していたならば...と、後ろを振り返っても仕方ないこと。ひとつ明らかなのは、Liverpoolは貴重な戦力を長期出場停止で失うことなく、2016-17季を迎えることが出来る」と、リバプール・エコー紙は締めくくった。

    それは、ユルゲン・クロップの第一声も裏付けていた。「ママ(サコー)にとって苦悩の日々がやっと終わった」。

    折しも、Liverpoolのプリシーズンが7月2日に開始し、クロップがLiverpoolでの契約延長にサインした直後のことだった。「監督として実績があるクロップが来てくれて、早速チームに変革をもたらし、ファンの絶対的な支持を受けることになった。クロップには、長期に渡って勝てるチームを作るプロジェクトを推進して欲しい」と、オーナーが2022年までの契約延長を提示したのだった。

    これに対してクロップは、「正直、驚いた。私の元の契約はまだまだ期間が残っていたので、何故、今、延長の話をする必要があるのか?と。しかし、断る理由がなかったからサインした」と、笑顔で語った。「逆に、断れば、変な噂が流れるだろうと思った。そもそも、サインしないメリットは、このクラブを出て他に行くこと以外にはあり得ない。でも、私は心からLiverpoolが好きだし、どこにも行きたいとは思っていない。だから、全く悩まなかった」。

    「もちろん、フットボール界では、契約は何の保証にはならないことは知っている」と、クロップは真顔になった。「契約延長にサインするということは、PKのようなもの。得た瞬間には喜ぶが、しかしPKを成功しなければゼロで終わる」。

    そして、サコーがドルトムント戦(試合結果は4-3でLiverpoolの勝利)の後に言った表現を引用した。「ママが言ったように、『リバプール国』で、共に頑張り、共に苦しみ、共に祝いたい」。


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    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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