目立たないながら「すべての監督の信頼No.1」へ

    6月10日に開幕したユーロ2016で、開幕2戦を1分(対ロシア、1-1)1勝(対ウェールズ、2-1)とグループBの首位に立ったイングランド代表チームは、毎度のことながら、イングランド国内の白熱した議論を呼び起こした。試合前の予測では「イングランドの楽勝」だったウェールズ戦で、後半のサブ2人がそれぞれゴールを決めて逆転勝ちという結末は、スターティング・ラインナップの是非に焦点を当てることになった。

    最大の注目は、トッテナムの5人(カイル・ウォーカー、ダニー・ローズ、デレ・アリ、エリック・ダイアー、ハリー・ケイン)だった。2015-16季は5月2日にチェルシーに2-2と引き分けて優勝争いにピリオドを打ったものの、トッテナムの快進撃は顕著で、ユーロでも、当初は「トッテナム中心のチーム編成」に対して、真面目に異論を唱える人は少なかった。

    しかし、ウェールズ戦の後で、イングランドの世論は逆転した。「トッテナムの選手がこんなに多いと、イングランドは、たとえ決勝まで行っても3位で終わるだろう」というジョークがどこからともなく出てきて、イングランド中の笑いを買った。これは、トッテナムがシーズン終幕に、優勝戦線脱落の反動から立ち直ることが出来ず、最終日に宿敵アーセナルに抜かれて3位で終わったことを指していた。

    そのような背景もあり、イングランドのメディアやファンは、一斉に、次のスロバキア戦に臨むチーム予測に沸いた。誰もがうんちくと共に「外すべき選手」と「入るべき選手」を並べる中で、ほぼ全ての「監督」のチームに入っていたごく数人の選手に、アダム・ララーナがいた。

    Liverpoolからイングランド代表入りした5人(ララーナ、ダニエル・スタリッジ、ジョーダン・ヘンダーソン、ジェームス・ミルナー、ナサニエル・クライン)の中で、唯一、2戦連続スターティング・ラインナップ入りしていたララーナについて、ライバル・チームのファンも含めて、特に理由を付けることなく、誰もがスロバキア戦のチームに選出していたのだった。

    ウェールズ戦の直前の6月15日に、イングランドの人気番組「トークスポーツ」のインタビューに登場したララーナは、サウサンプトンのアカデミー・チームのチームメートだったガレス・ベイルに敬意を示し、Liverpoolのチームメートであるジョー・アレンを賞賛した上で、勝利への自信を述べた。

    可もなく不可もないインタビューの後で、同番組のナレーターが、ララーナの人柄について語った。「癖のある人が多い、いわゆる『フットボーラー』らしくない、腰が低くて丁寧な人。こんなにラクなインタビューは珍しい」。

    大会開始直前に、ララーナのインタビューを掲載したデイリー・メール紙も、「ララーナの人物観」を裏付けた。「2014年夏に、サウサンプトンからLiverpool入りしたララーナを、最も歓迎したのはスティーブン・ジェラードだった」と、同紙は振り返った。

    「ジェラードは、『ララーナの最も良い所は人柄。サウサンプトンで主将を勤めていた人物にふさわしい人格者』と断言した。フットボール面でもLiverpoolで成功すると思うか?との質問に、ジェラードは『ララーナは、現役のイングランド人選手の中で圧倒的トップの両足効き。成功しないはずがない』と、一笑した」。

    しかし、ララーナはLiverpoolで、ファンの支持を勝ち取る必要があった。「良い選手なのだが、クライフ・ターンをやり過ぎて、チームの攻撃のリズムに水を差している」という批判の声は、しばし止まなかった。

    ユルゲン・クロップ下で最も成長した選手の一人となったララーナに対しても、依然として、Liverpoolファンの目は厳しかった。「アタッキング・ミッドフィールダーならば、シーズン2桁のゴールは必須」。昨季のLiverpoolは、3人のストライカーと2人のアタッキング・ミッドフィールダーが2桁ゴールを達成したのに対して、ララーナは7に留まった。

    「インジャリータイムの決勝ゴールを決めた選手は、一躍ヒーローになる。それに比べてララーナは、ヘッドラインを飾ることはめったにないが、どの監督にとっても真っ先にチームシートに載せる『信頼度No.1』の選手」と、デイリー・メールは、クロップの言葉を引用した。4月のアンフィールドでのダービーで、エバトンに4-0と快勝した試合の後で、クロップが「誰もララーナを褒めないのは何故?」と、不満そうに言ったのだった。

    「クロップからプレッシングを徹底的に叩き込まれた、と語ったララーナは、クロップのフットボールを最も忠実に取り入れて、試合で展開している。それをイングランド代表チームでも生かしているララーナは、ロイ・ホジソンのチームシートにも真っ先に載る選手になっている」。

    トークスポーツのインタビューでは、イングランド代表での25試合中、まだゴールがないことについてララーナは、苦笑した後で、きっぱりと答えた。「自分がヒーローになることについては、どうでもいい。成功するチームの一員になりたい、ということが僕の目標」。


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    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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