アンフィールドのカルト・ヒーロー

    2011年5月、FAカップ決勝でウェンブリーに向かっていたマンチェスターシティ・ファンの集団が、ロンドンの地下鉄駅で、ヤヤ・コロ・チャントをやった動画が、イングランド中の話題を呼んだ(試合結果は1-0でマンチェスターシティがストークシティを破ってFAカップ優勝)。ウェンブリー方面のホームで歌って踊っていたシティ・ファンの対岸で、逆方向の電車を待っていた地元住民らしき乗客20人くらいが、つられて一緒に踊る様子が動画に映った。フットボールとは縁がなさそうに見える上品な初老の女性が、シティ・ファンの楽しい踊りに無意識にノッた、という感じで、見る人に笑顔をもたらした。

    2013年に、コロがフリーエージェントとしてLiverpoolに行ってしまったことで、「もうヤヤ・コロ・チャントはできないなあ」とぼやいたシティ・ファンの手を離れて、ヤヤ・コロ・チャントはイングランド各地で、絶えることなく続いたのだった。

    そして、2016年のシーズン末に、イングランドのダーツ・チームがヤヤ・コロ・チャントをやる姿がTVに映ったことで、コロは「この国の人々は本当にフットボールが好きなんだ、と嬉しくなる」と、笑顔で語った。

    そのコロが、2016年6月末で契約を満了し、Liverpoolでの3年間に終止符を打つことが正式決定となった6月10日に、地元紙リバプール・エコーは、「アンフィールドのカルト・ヒーロー」というタイトルで、コロを見送る記事を掲げた。

    35歳という年齢と、比較的選手層が厚いポジションであることから、戦力面では致し方ない結論という前提で、同紙は、「コロの笑顔は、ヤヤ・コロ・チャントのように、人を惹きつける。Liverpoolでは、華々しい活躍に埋もれた3年間とは言えないながら、豊富な経験で若いチームを引っ張り、ピッチの上でリーダーシップを発揮したコロは、Liverpoolファンから熱烈な人気を得ていた。いなくなるのは寂しい存在」と、ファンの気持ちを代弁した。

    「コロの名場面」として、ファンの間で真っ先に上がったのは、2013年のアウェイでのフラム戦(試合結果は2-3でLiverpoolの勝利)で、反撃を目指して全力疾走していたコロが、たまたま通り道にいたレフリーのフィル・ダウドを思いっきり突き倒したものだった。「皆がやりたくてもできないことを、コロはいとも自然にやってのけた」と、イングランド中の爆笑を買った。

    Liverpoolでの唯一のゴールとなった2016年2月のアウェイでのアストンビラ戦で(試合結果は6-0でLiverpoolの勝利)、ピッチに仰向けに倒れて万歳した「祝ゴール」について問われて、コロが「どうしたらいいのか分からなくて、取りあえず、転がった。そもそも、得点した時にどんな反応をしようか、ということは事前に考えてなかったので」と笑った様子も、ファンの記憶に納まった。

    Liverpoolの前には、マンチェスターシティ(在籍2009~2013)とアーセナル(在籍2002~2009)の両方で、プレミアリーグ優勝を達成したコロが、その「根っからの勝者」ぶりを見せてくれた数々の試合の中で、最も強くファンの心に焼き付いているのは、2016年1月のリーグ・カップ準決勝1戦目、アウェイでのストーク戦だった(試合結果は1-0でLiverpoolの勝利)。試合終幕に足を吊ったコロが、動かない足でジャンプして相手のゴール・チャンスをブロックした「サーモン・タックル」だった。

    シーズン終幕になって、Liverpoolでの契約更新の可能性について質問された時に、コロは「Liverpoolに残りたい。来季も必要な戦力だと認めて欲しい一心で、あの『サーモン・タックル』をやった」と笑った。

    「34歳になって、イングランドのベスト・クラブの一つであるLiverpoolでプレイできるとは、驚くべきことだと思う。こんなキャリアを自分が歩めるなんて、夢にも思わなかった。だから、僕は今、Liverpoolでの一瞬一瞬を、心から楽しんでいる」。

    その笑顔でファンを魅了したコロが、「トロフィーを取って、Liverpoolファンに恩返ししたい」という強い決意で臨んだEL決勝戦では、マン・オブ・ザ・マッチの気力を発揮した(試合結果は3-1でセビーリャの優勝)。

    「振り返れば、Liverpoolでの最後の試合となったEL決勝戦は、コロにとってはふさわしいエンディングとなった」と、エコー紙は締めくくった。

    コロの今後の行く先として、フランス・リーグのモナコが上がっているのと並行して、弟のヤヤはシティを出てインターに行くらしいと見られている。

    「ヤヤとコロのトゥーレ兄弟は、その絶頂期に、ピッチの上でもチャントでも、イングランドのフットボール界に足跡を残した。そして、コロは、アンフィールドのカルト・ヒーローとして、Liverpoolで語り継がれる逸話を作った」。

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    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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