勝ち組と負け組

    イングランドでは、シーズン中毎週、各メディアが「今週の勝ち組、負け組」を選出する。基本的には、その週末のリーグ戦の試合結果を中心に、順位争いやカップ戦の状況などを総合的に判定して「勝ち組」と「負け組」を決めるため、通常はメディアによって微妙に異なるものだが、5月7,8日の週末に関しては、イングランド中で判で押したように同じ結果となった。

    勝ち組のトップは言うまでもなく、イングランドのフットボール史上ベストを争う「おとぎ話的優勝」を決めたレスターシティだった。5月2日に、トッテナムがチェルシーに2-2と引き分けたため優勝が決定し、その週のイングランドの話題を独占したレスターが、もう勝つ必要がなくなった5月7日のホームでの最終戦で、イングランド中のフットボール・ファンから盛大な祝福を受け、地元のファンのお祭りムードの中で、エバトンに3-1と勝って花を添えた。

    シーズン中ずっと、アナリストから「そのうち力尽きて、ビッグ・クラブに優勝をさらわれるだろう」と言われ続けたレスターが、「優勝するためには、大金はたいてスター選手を買い集めることが必須」という定説を打ち破って達成した偉業は、メデイアやアナリストを脱帽させ、ニュートラルなファンから盛大な拍手を勝ち取ったのだった。

    いっぽう、負け組の筆頭は、それら「大金はたいてスター選手を買い集めながら、レスターにかなわなかった」ビッグ・クラブの代表格でもあり、今季開始時点の優勝候補の一つであるマンチェスターシティだった。5月8日には、ホームでアーセナルに2-2と引き分けて、トップ4入りすら他力本願となってしまった(※その時点では、2ポイント少ないマンチェスターユナイテッドは、残り2試合に勝てばトップ4入りとなる)。

    シティが「負け組」として批判を集めることになったのは、その前戦である5月4日のCL敗退だった(試合結果は1-0、通算1-0でレアルマドリードが決勝進出)。5月1日のサウサンプトン戦では、CL準決勝を控えているから土曜日に前倒しして欲しいと申請したものの、テレビ放送を理由にプレミアリーグに却下されたことから、マヌエル・ペジェグリーニが「CLでイングランドの国旗を持って戦っているチームに対して、リーグは全く協力してくれない」と怒り、リザーブチームで臨んだ末に、サウサンプトンに4-2と玉砕したのだった。

    かくして、トップ4争いを犠牲にしてまで「賭けていた」はずのレアルマドリード戦で、シティは、殆ど気力が見られない戦い方で自滅してしまった。

    そして、ダメ押しが5月8日のアーセナル戦だった。しかもその試合はシーズン最後のホーム戦で、試合後にはペジェグリーニへのお別れを兼ねたラップ・オブ・オナーが予定されていた。

    「リーグ優勝1回、リーグ・カップ2回、そしてクラブ史上初のCL準決勝進出という業績を作ったペジェグリーニの輝かしい3年間の在任期間は、最後にむごい形でフェイドアウトしてしまった」と、翌日の地元紙マンチェスター・イブニング・ニュースは、悲哀に満ちた記事を掲げた。

    「この試合に勝てなかったのは非常に残念。絶対に勝ちたかった。来季のCL出場権を確保してシーズンを締めくくりたかった」と、試合後のインタビューで無念を語ったペジェグリーニは、ラップ・オブ・オナーで、スタンドに残った1万人そこそこのファンに向かってお別れの挨拶を告げた。

    「私にとっては、この素晴らしい3年間は永遠に忘れられないと思います。ファンの方々には、心から感謝を捧げます。ありがとう。そして、ずっと変わらずにいてください。チームはあなた方を必要としています。来季はきっと良いシーズンになると信じています。だから、これからも変わらずに応援してあげてください。さようなら。また会いましょう」。

    さて、シティがヨーロッパのカップ戦から抜けて、イングランドから唯一の決勝進出チームとなったLiverpoolは、この週の「勝ち組」No.2だった。

    4月28日の1戦目で、92分のゴールで1-0と勝ったビヤレアルが、「決勝戦に足を一歩突っ込んだ」と強気になった試合の後で、「まだ勝ったと思うのは早い。彼らはアンフィールドに来なければならないのだから」と、ユルゲン・クロップは自信を見せた。

    「アンフィールドでは、ファンが手伝ってくれるから、絶対に勝てると自信がある」と、デヤン・ロブレンが目を輝かせた。並行して、地元のファンは、ホームでのEL戦ですっかり定番になった、アンフィールド・ロードの「ガード・オブ・オナー」(※1時間少し前にスタジアム入りするチーム・バスを、ファンが道端に立って歌と大声援で激励する、試合前の儀式)の計画を着々と進めていた。

    チームとファンの連携プレイが冴えて、5月5日にビヤレアルを3-0(通算3-1)と破ってEL決勝進出を決めた後の、5月8日のリーグ戦(対ワトフォード、試合結果は2-0でLiverpoolの勝利)で、ゲストとしてアンフィールドを訪問したジャージー・ドゥーデクは、2005年のイスタンブールの記憶を背景に、今のLiverpoolの「勝ち組」ぶりについて語った。

    「スタンドのファンの応援は、間違いなく試合に影響を与える。選手はファンの声援で気合いを得る。そして、ピッチの上のプレイが、ファンの声援に影響すると思う。両方が影響し合って高まれば、必ず勝てる」。

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    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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