我々の声を聴いて欲しい(Liverpoolを見習って)

    2015-16季のプレミアリーグは、残り8~10試合となった時点で、優勝およびCL・EL出場争いと並行して、残留争いも激化してきた。かつて40ポイントと言われた「安全圏内」は、ここ近年は下がり続け、今季は36ポイントが線引きとなるだろうと見られていた。その前提とすると、16位のスウォンジーが33ポイントに達していることから、実質的に、残留1枠を巡って、17位のサンダーランド(25ポイント)、18位のノリッジ(25)、19位のニューカッスル(24)が激戦を繰り広げていた。

    そして、僅か16ポイントで最下位に定着しているアストンビラは、世の中の「残留争い予測」からも脱落して久しい。クリスマス明け頃には、「ビラと一緒に2部に行く2チームは?」という表現が頻発したが、最近では、来季の予測として、「今のビラなら2部でも苦戦するだろう」と言われるようになった。

    そんな中で、2月22日にビラ・ファンのグループが、「74分の退出デモ」計画を打ち出して話題になった。

    通算リーグ優勝7回、1981-82季にはヨーロピアン・カップ(CLの前身)優勝を含め、イングランドの中でも最も歴史があるクラブの一つであるビラが、2006年にアメリカ人の富豪である現オーナーを迎えてからの10年間で、トロフィーどころか万年残留争いに参戦する苦戦が続いた末に、いよいよ降格がほぼ確実となった状況に、ファンが立ち上がることになった。

    折しも、ビラの地元紙バーミンガム・メールが、現オーナーであるランディ・ラーナーの在任10年間で、ビラは毎日£70,000の赤字を出しているという、ショッキングな数字を掲載した。赤字の主要因は、40%の値上げを計上している選手の給料で、その結果、マーティン・オニール(在任は2006-2010季)を最後に、それ以後の全監督は、マイナスの戦力補強資金で戦うことを余儀なくされていた。昨年夏は、ファビアン・デルフとクリスティアン・ベンテケを放出した収益金£40mは、赤字補てんに回っただけで代わりの戦力が補強されないまま、シーズンに突入した。

    「この成績は、レミ・ギャルドのせいではない。11月に就任して以来、戦力不足に苦労を強いられていた監督を、1月の移籍ウィンドウでサポートすることなく、チームの苦戦を野放しにしたオーナーの責任」と、ファン・グループは「74分の退出デモ」計画の背景を説明した。

    具体的には、ビラのの創立年(1874年)を象徴して、3月1日のエバトン戦、3月12日のトッテナム戦、4月2日のチェルシー戦とホームでの3戦で、ファンが74分に退出するというものだった。

    「今回の計画は、先にLiverpoolファンがチケット価格値上げ反対を掲げて実行して、結果的にオーナーの謝罪と撤回措置を勝ち取るという、大成功を収めた事例に勇気を得たもの。Liverpoolは、ファンが勇敢な行動に出て、オーナーがその声を聴いてファンの要求を受諾した。わがクラブのオーナーも、Liverpoolを見習って、我々の声を聴いて欲しい」。

    ビラ・ファンの声とは、「ヨーロッパのチャンピオンからチャンピオンシップ(2部)へ」導くオーナーに対して、「我々のクラブを返してくれ!」と、退陣を求めるものだった。

    その後、ビラのレジェンドであるブライアン・リトルがディレクターに就任したことで、ファンの「74分の退出デモ」計画はひとまず保留となったものの、オーナー退陣を求めるチャントは、スタンドで響き続けていた。

    Liverpoolファンの「77分退出抗議デモ」は、チケット価格が争点だっただけに、計画が上がった瞬間からイングランド中のファンから絶大な支持を受け、メディアのバックアップを得たことは周知の通りだった。その結果、僅か4日後にオーナーからの謝罪とチケット価格凍結という「勝利」を勝ち取ったことで、Liverpoolファンは「スタジアムに行くファンの声」の代名詞となり、その後3月9日にプレミアリーグが「2016-17季から3年間、アウェイ・チケットを上限£30に収める措置」を打ち出した時にも、「土台を作った」Liverpoolファンに対して感謝の拍手が起こった。同時に、Liverpoolのオーナーは「ファンを大切にする経営者」として株が上がった。

    「そもそも、我がスタジアムはいつも、試合後の交通渋滞を避けるためにと、試合経過に関わらず、77分には1万人くらいのファンが退出している。我々がやったら、誰もデモだと気づかなかっただろう。あれは、Liverpoolファンだったからこそ、異常事態として国中の注目を集め、大成功を収めたのだ」と、自分たちの反省を込めて、Liverpoolファンを心から賞賛したライバル・ファンも多かった。

    そして、ビラ・パークでは、74分には「奇跡を起こそうという気力が全く見られない、選手たちの精気のないプレイ」に、気持ちをそがれ、気分が悪くなって退出するファンが目立つ中で、果たしてその「ファンの声」は伝わるのだろうか、と、悲痛な疑問の方が先に立っていた。

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    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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