誰も予想しなかったヒーロー

    2月28日のリーグカップ決勝を控えて、Liverpoolファンの間で「もし優勝出来たら、誰がヒーローになるか?」という予測で盛り上がった。これまでのLiverpoolのカップ決勝歴の中では、2001年の「マイクル・オーウェンFAカップ・ファイナル(対アーセナル、2-1でLiverpoolの勝利)」や、2006年の「スティーブン・ジェラードFAカップ・ファイナル(対ウエストハム、3-3、PK戦でLiverpoolの勝利)」など、キー・マンがほぼ単独で勝利をもたらした試合もあったが、意外な選手が活躍したこともあった。今回は、大多数のファンが「誰も予想しなかったヒーローが出現するだろう」という意見だった。

    ふたを開けると、そのLiverpoolファンの予想は悲しい方向で的中した。

    シティの地元紙マンチェスター・イブニング・ニュースは、「本紙を始め全関係者は、心からウィリー・カバジェロに謝罪する必要がある」と、延長111分にディボック・オリジのシュートを止めて1-1の引き分けでPK戦に持ち込んだスーパーセーブに続き、PK戦3本のセーブでこの日のヒーローとなったカバジェロを讃えた。

    試合前のシティ陣営は、GKを巡る議論で喧々諤々だった。「カップ戦のキーパーはカバジェロと決めてここまで来たのだから、決勝だからと言ってその方針を変えるつもりはない」と断言したマヌエル・ペジェグリーニに対して、直前のFAカップ(対チェルシー、5-1でシティは敗退)でのカバジェロのミスを指摘して、正キーパーのジョー・ハートと出すべきだという批判が渦巻いた。

    試合後に、「ここ数日は、自分にとって大変な日々だった。しかし、監督が信頼してくれたのだから、それに応えるのが僕の責任だと思った」と語ったカバジェロに、イングランド中から拍手が送られた。

    Liverpoolファンの間でも、シティの「誰も予想しなかったヒーロー」を讃える声は大きかった。「3本のPKのうち2本は、決して悪くないスポットキックだった。カバジェロは、ワールドクラスのセーブを見せた。そのカバジェロに対して、味方から一斉に批判されながらも信頼を貫いたペジェグリーニも、賞賛に値する」。

    いっぽうのLiverpool陣営では、カバジェロほどの喧噪ではなかったものの、ルーカスがセンターバックに入ったラインナップに、疑問を唱えた人は少なくなかった。そのルーカスが、Liverpool側の「誰も予想しなかったヒーロー」となったことは、誰もが一致するところだった。

    そして、その背景には、ルーカスに対する信頼を貫いたユルゲン・クロップがあった。

    試合後の記者会見で、「Liverpoolはこれまで、カップ決勝でのPK戦は5戦5勝だった。そして、イングランドのフットボール界の固定観念の一つに、『ドイツ人はPK戦で絶対負けない』というものがある。その2つの要素を覆したのは何故?」という、ジョーク交じりの質問に対して、クロップは、いつもの笑顔で「すみませんでした」と答え、記者団の笑いを買った。

    しかし、クロップの笑顔はそこまでだった。「我がチームは、少なくとも引き分けを取るにふさわしい闘志を120分間出し続けた。でも、決勝では必ずどちらかのチームは負けねばならないもの。今の我々の気持ちは、とんでもなく沈んでいる」と、悲しみを隠さなかった。「明日はまた、水曜日の試合に向けてトレーニングが始まる。落ち込んで泣いている暇はない。今日の試合はもう変えられないが、次の時は、この辛い気持ちを思い出し、それを糧にして頑張る」。

    ハイライト番組のアナリストや全国メディアでは、試合中のLiverpoolの一部の選手のミスや、PK戦の順番などの詳細を分析して、「敗因」を並べた。しかし、「シティの優勝は正当な結果だが、両者の差は僅かだった」という根底は一致していた。

    「強かった側が優勝したという結末は、誰の目に明らか。Liverpoolは全員が、ミスはあったものの、これ以上出せない程に全力を出し尽くした。素直に負けを認めるべきだし、選手に対する批判はない。でも、今は道路に突っ伏して大泣きしたいような気持だ」と、ウェンブリーからの長い帰途に着いたLiverpoolファンがつぶやいた。「クロップが、我々ファンと同じように落ち込んでる様子を見て、勇気が湧くような気がした」。

    リバプール・エコーが、ファンの気持ちを代弁した。「クロップは、前任監督から引き継いだ選手たちに情熱と信頼を注入し、ファンの希望を取り戻し、就任僅か半年足らずでウェンブリーのカップ決勝に到達した。その道のりは、相次ぐ負傷に見舞われるなど険しいものだった。そして、クロップは、『今回の決勝は、我々が一緒に戦う最初の決勝。最後ではない』と強調した」。

    「これまでマインツとドルトムントでも、苦戦を乗り越えてチームを栄誉に導いたように、クロップがLiverpoolを輝かしい栄光に導くための旅は、始まったばかり」と、エコーは締めくくった。

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    プロフィール

    ピーエルエフジェイ

    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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