ようこそイングランドへ

    10月31日のアウェイでのチェルシー戦で、3-1と勝った試合後のインタビューで、ユルゲン・クロップがレフリーのマーク・クラッテンバーグとジョークを言い合ったエピソードが、いくつかのメディアで掲載された。それは、トップ4入りの見込みについて質問されたクロップが、「僅か1勝しただけで、次の試合のこと以外は考えていない。ずっと先の順位のことなど考える余裕はない」と苦笑した時に、たまたま通りかかったクラッテンバーグに、「なんでこういう質問ばかり出るんでしょうね」と一言。それに対して、クラッテンバーグが「ようこそイングランドへ」と笑ったという話だった。

    僅か1勝にメディアが過剰反応するイングランドでは、その後Liverpoolが、首位マンチェスターシティに4-1と圧倒し、リーグカップでサウサンプトンに6-1と勝って、会心のプレイで最近8戦7勝となった12月2日には、トップ4どころか優勝のオッズ(7/1)すら出回るに至った。

    サウサンプトン監督のロナルド・クーマンが「今のプレミアリーグでは、Liverpoolが最も壊滅的な攻撃力を発揮している」と絶賛し、その試合で顕著な活躍を見せたLiverpoolの選手たちが、異口同音に「クロップ効果」を語った。

    「監督は、ミスをしても、自信を失うようなことは絶対に言わない。解決策をアドバイスしてくれることで、逆に自信に繋がる。監督の考えはシンプルで明確だし、わかりやすく説明してくれる。選手全員が、自信を持って活き活きとプレイしている」と、クロップが監督に就任してから飛躍的に良くなったと言われている選手の一人であるルーカスが証言した。

    ライバル・ファンの間では、「Liverpoolがまた黄金時代を築く日が来るのではないか」という警戒心が飛び交い、自分のチームの監督に不満を抱くビッグ・クラブのファンの中には、「Liverpoolにクロップを取られた」とぼやく声も少なくなかった。

    メディアの過熱が絶頂に達していた12月6日に、Liverpoolとの対戦を控えていたニューカッスルのファンは、「前週、クリスタルパレスに5-1と屈辱的な敗戦を喫した我がチームは、Liverpoolに、クリケット的点差の大敗を食らうのは避けられない」と、悲痛な声を上げた。

    ふたを開けると、今季リーグ通算14試合2勝4分8敗で19位と低迷し、ファンの心配をあおっていたニューカッスルが、クロップのLiverpoolに2-0と勝利を収めたのだった。

    世間の予測を大きく外して、頭を抱える側に回ったLiverpoolファンは、「これで、メディアの熱が一気に吹っ飛ぶだろう」と苦笑しながら、「プレミアリーグにはラクな試合などない」真実を再確認させられた。

    同時に、ファンのクロップに対する信頼の深さも、改めて認識された。「ひとつ明確なのは、クロップは、はっきりと、『最悪の出来だった』と言うだろう。誤判定を強調して言い訳することなく、完敗を認めて、この敗戦から学んで、更に向上する決意を選手たちに植え付けてくれるに違いない」。

    クロップの試合後の記者会見は、ファンの予測を100%裏付けた。

    何が悪かったかと質問されて、「スタート、中間、終わり。つまり、全て」と答えたクロップは、同点ゴールを目指していた時に、アルベルト・モレノのゴール・オブ・ザ・シーズン候補とも言える鮮やかな'ゴール'が無効にされた誤判定についても、言い訳のネタにしなかった。「こんなダメなチームが、ワールドクラスのゴールが出せるわけがないと、ラインズマンは確信したのだろう」。

    リーグ優勝の見込みについての質問には、「リーグ優勝?私はそんなことは一度も言ったことがない。あなた方(メディア)が、どんな題材の記事を書こうが自由だが、私はリーグ優勝を目指すなどとは言ってないのだから、今日の試合に負けたから優勝の見込みがなくなったか?という質問に答える筋合いはない」。

    「わがチームは能力のある選手が揃っているし、チームが一丸となって同じ目標に向かって頑張っている。今日は負けたけど。でも、負けて悔しいという気持ちが起こるのは当たり前のこと。敗戦の痛みを感じなくなったら、その方が深刻。今日の試合は完敗だった。でも、負けて悔しいという痛みを感じている」。

    「今日の敗戦は、リアリティ・チェックでもなんでもない。単に'悪い試合'だっただけ。1試合1試合、前よりも良いプレイをすることを目標に、冷静になって前進する」。

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    ピーエルエフジェイ

    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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