RIPハワード・ケンドール

    10月17日、Liverpoolはランチタイム・キックオフでアウェイのトットナム戦(試合結果は0-0)に臨み、エバトンはグッディソン・パークで、午後3時のマンチェスターユナイテッド戦を控えて、イングランド中がマッチ・デイ・モードになっていた時に、青天の霹靂のごとく、ハワード・ケンドールが亡くなったという知らせが流れた。

    エバトンFCの選手として、1970年にリーグ優勝を達成した「ホリー・トリニティ」の一員だったケンドールは、1981–1987年には監督として、リーグ優勝2、FAカップ1、ヨーロッパのカップ・ウィナーズ・カップ1という輝かしい記録を作り、今でも全てのエバトン・ファンが、一致して「クラブ史上最大の監督」として名を上げる、エバトンFCを代表するレジェンドとなった。

    1998年に3期目のエバトン監督を退き(2期目は1990–1993年)、約1年後の1999年に引退してからは、エバトンFCのアンバサダーとして勤めていたケンドールは、69歳になった今年もほぼ全ての試合でグッディソン・パークのスタンドに姿を現していただけに、イングランドのフットボール界は、突然の悲報に大きな驚きに包まれた。

    急きょ、試合前にケンドールを偲ぶ1分間の拍手が行われることになったグッディソン・パークでは、心の準備をする余裕もなかったスタンドのファンが、「オンリー・ワン・ハワード・ケンドール」のチャントで、クラブ史上最大の監督を見送った。

    試合では、熱烈なエバトン・ファンとして生まれ育ったユナイテッド主将のウェイン・ルーニーが、得点した直後に、神妙な表情で天国のケンドールに向かって挨拶をした姿がテレビカメラを通じてイングランド中に伝わった(試合結果は3-0でユナイテッドの勝利)。

    Liverpoolのレジェンドであり、少年時代は熱烈なエバトン・ファンだったことで有名なジェイミー・キャラガーは、「エバトンFCの史上最大の監督として、ケンドールは、様々な思い出を与えてくれた。特に、1984-85季は最高だった」と、感謝を表明した。

    マージーサイドが「イングランドのフットボールの首都」だった1980年代に、Liverpoolの選手及び監督として、ケンドールとしのぎを削ったケニー・ダルグリーシュが、追悼を表明した。

    「80年代は、Liverpoolとエバトンで優勝を奪い合った。熾烈なライバル同士だったが、試合を離れた時には、いつも良き友人だった。ハワードは、マージーサイドの赤と青を結ぶ象徴そのものだった」。

    ケンドールの現役時代に、エバトンで共に働いた選手たちや、宿敵Liverpoolのレジェンドからのエピソードが飛び交う中に、ベテランのエバトン・ファンからの心の籠った追悼が流れた。

    先祖代々エバトン・ファンというこのファンは、1985年に、元シーズン・チケット・ホルダーだったお母さんが余命長くないと判った時に、「お母さんに最後の思い出を作ってあげたい」と、エバトンのクラブに働きかけた時の話を振り返った。当時監督だったケンドールが、このファンの悲願に応えて、お母さんをVIPとして迎えてくれたのだった。お母さんは、息を引き取るまで「ケンドールとの対面」の思い出を語り続けた、ということだった。

    「その後、母のことでお礼を言いに行った時に、私のことを覚えていてくれただけでなく、まるで友人のように対応してくれた。クラブ史上最大の監督であり、ファンと積極的につながりを持ち、ファン一人ひとりを大切にした、真の紳士」と、そのファンは続けた。

    「会話の中で、『アンフィールドにはビル・シャンクリーとボブ・ペイズリーという、クラブ史上に残る名監督が刻まれている。でも、グッディソン・パークには、選手としてのレジェンドの銅像しかない。エバトンFCは、グッディソン・パークにハワード・ケンドールの銅像を建てるべきだ』と言うと、ハワードは真面目な顔で首を横に振った。まるで自分はディキシー・ディーンと肩を並べる程の貢献はしていない、とでも言うように」。

    「ざんざん議論した末に、折れたハワードは、『もし私の銅像を建てるとしたら、もっと髪がふさふさしていた、若い頃の私にしてほしい』と、笑った」。

    ファンとのつながりを大切にした昔かたぎの偉大なレジェンドが亡くなり、マージーサイドのフットボール史は、また一つの章を終えた。

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    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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