Liverpool監督の最後の言葉

    10月4日、通算225回目のマージーサイド・ダービーは、1-1の引き分けで終わった。試合後のインタビューで、ダービー・デビューで初ゴールを決めたダニー・イングスは、1ポイントに満足しているか?との質問に、「もちろん!」と自信満々に答え、「特に前半は、攻撃も冴えたし、良く守った。試合を通して、チームは一丸となって闘士を見せた」と、胸を張った。

    いっぽう、45分に同点ゴールを決めたエバトンのロメル・ルカクは、翌日からのインターナショナル・ウィークで、ベルギー代表チームで共に働く相手GKを名指しし、「シモン・ミニョレのスーパーセーブのお蔭でわがチームは勝ちを逃した」と、悔しがった。

    2013/14季、マンチェスターユナイテッドが26年ぶりの監督交代シーズンを迎えて、翌季のCL出場が絶望になった4月に、地元紙マンチェスター・イブニング・ニュース紙が、深刻な記事を掲げた。チームが苦戦を重ねた末に全カップ戦に敗退し、リーグ順位も先が見えて、クラブがデビッド・モーイズを解任する前週のことだった。

    「サー・アレックス・ファーガソンが監督だった頃には、チームが成績不振に陥ると、世の中の非難の眼差しは100%、選手に向かった。何故なら、これまで勝ってきた監督が間違っている筈がないので、悪いのは選手が決まっている、と誰もが思ったから。だから選手は、なんとしても勝たねばと必死になる」。

    「逆に、実績がない監督が就任したばかりの時には、新獲得の方がやり玉に上がる。そもそも、この選手たちはほぼ全員が、1年前にはプレミアリーグ優勝に輝いたのだ。誰の目にも、成績不振の原因は監督にあると映る。選手にとっては、『勝てなくても、自分は非難されない』状況に、無意識に胡坐をかいてしまう」。

    Liverpoolでは、「選手たちが無意識に胡坐をかいている」状況が、あまりにも長く続いた。

    背水の陣で臨んだ筈のビッグ・マッチで、ましてやダービーで勝てなかった結果について、選手が躊躇せずに「引き分けて満足」と公言し、イングランド代表初選出とダービー初ゴールの個人栄誉が続いたことで、チームの成績はさておき、「自分にとって素晴らしい週だった」と、悪びれずに語ることが当たり前になってしまった。

    Liverpoolのチーム内で、「監督が控室を失った」致命的な状況が露呈したのは、昨シーズン終幕のことだった。全く熱意が見られないままアストンビラに完敗したFAカップ準決勝(試合結果は2-1)、ストークに大敗を食らったプレミアリーグ最終戦(試合結果は6-1)は、最悪中の最悪として引用され続けた。

    イングランド中のメディアや、圧倒的多数のファンが、夏の間に監督交替を予測していたが、結末は、アシスタントとコーチが解任されただけのマイナー・チェンジに留まった。

    しかし、残留となった監督は、シーズン開始前から既に、「クリスマスまで暫定的な猶予を与えられた」と噂が飛び交う中、誰もがクラブの奇妙な方針に疑問を掲げるに至った。

    1試合1試合が「世間の厳しい査定」に問われるという不安定な状況で、激しいプレッシャーにかられている監督が、果たして適切な戦略が取れるのだろうか?ましてや、選手たちは、深層心理の中に「この監督は長くない」という意識が常に消せない状態で、毎試合で気合いを保ち続けることができるだろうか?

    そして、10月4日のダービーの試合終了数時間後に、クラブの決定機関の致命的な欠陥が浮き彫りにされた。

    試合後のインタビューは、解任発表前の、ブレンダン・ロジャーズのLiverpool監督としての最後の言葉となった。

    「プレッシャーなど感じていない。私にとっては、毎日、自分の仕事に最善を尽くすことしか考えていない。私の仕事は、このチームを少しでも良い方向に導くこと。クビにならない限りは、外からいかなる雑音が発せられようとも、それは常に同じだし、自分の仕事に集中している」。

    「この仕事を追われる日がくれば、それは受け入れるつもりでいる。ただ、このクラブは素晴らしいクラブで、このクラブで働けたことを心から誇りに思っている」。

    「今は、もう少し長くこの仕事を続けたいと願っている」。

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    プロフィール

    ピーエルエフジェイ

    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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