2+2が5になるプレミアリーグのヘッドライン

    9月1日に移籍ウィンドウがクローズし、夏中続いたジョン・ストーンズの「移籍サガ」は終止符を打つ。チェルシーからの3回の話に対して、エバトンは「売り物ではない」と蹴り続けたが、ここ数年、スター選手を多額の移籍金でビッグ・クラブに奪われ続けてきたエバトンでは、「売り物ではない」の言葉は「価格つり上げの決まり文句」として解釈されていただけに、8月27日の最終宣言に、メディアは驚き、ファンはホッと胸をなでおろした。

    クローズシーズン中には、根も葉もないものも含めて、移籍の噂話がメディアを埋め尽くすのは常だが、クラブ間で実際に交渉が行われている移籍話が、シーズン開幕後も続く時には、当事者の精神面に影響することも少なくない。ストーンズの場合は、マインドゲームの第一人者と言われているジョゼ・モウリーリョの標的になったことから、メディアの「2+2が5になる」憶測報道は激化した。

    8月16日のマンチェスターシティ対チェルシーで(試合結果は3-0でシティの勝利)、ジョン・テリーがハーフタイムに交替させられた時には、「モウリーニョがストーンズに対して暗黙のメッセージを送った」と騒がれた。更に、翌週のWBA戦(試合結果は3-2でチェルシーの勝利)でテリーが退場になったことで、世の中のメディアは「チェルシーがストーンズ獲得をテコ入れするのは必至」と加熱した。

    しかし、その過剰な脚光の中で、ストーンズは精神的な強さを見せた。

    19歳でエバトンのセンターバックとして名を上げた後で、2014年10月には負傷で3ケ月の長期欠場に苦しんだ経歴を持つストーンズは、一回り大きくなって復帰した。そして、負傷欠場中にもチャリティやファン・サービスなど、クラブの仕事を熱心にこなしたストーンズは、「非常に純粋な青年で、出会った人々全てに対して心から歓迎の気持ちで対応する」と賞賛されていた。

    8月23日のエバトン対マンチェスターシティ(試合結果は0-2でシティの勝利)で、「グッディソン・パークでの最後の試合?」と注目されながら、マン・オブ・ザ・マッチの活躍をしたストーンズに、イングランド中のアナリストが拍手を送った。「21歳の若手が、これだけ毎日騒がれながら、全く平常心で試合に臨み、プロとしての責任を果たしている」。

    この夏、同じく「長引く移籍サガ」の当事者となったダビド・デヘア(マンチェスターユナイテッド)や、サイド・ペラヒーノ(WBA)は、「試合に集中できる精神状態ではない」と、ベンチ入りすらしていなかったのに対して、ストーンズは1試合も欠かさず出場していた。

    8月29日のアウェイのトットナム戦(試合結果は0-0)で、スタンドのエバトン・ファンが、ビートルズの「キャント・バイ・ミー・ラブ」の替え歌で「チェルシーはお金ではストーンズを買えない」と歌った姿が、「2+2が5になる」メディアの攻撃に負けない強さを維持したストーンズに対するファンの支持を表していた。

    さて、プレミアリーグのヘッドラインが「2+2が5になる」のは移籍ウィンドウだけではなかった。

    8月29日に、アンフィールドでウエストハムに0-3と大敗を食らったLiverpoolは、メディアの猛批判を受けたのはもちろん、「次にクビになる監督のオッズ」が一気に急上昇した。「開幕3戦を終えて2勝1分とまずまずのスタートを切ったLiverpoolが、ホームで52年間無敗の記録を持つウエストハムを迎えて、相手の堅い守りを崩すことが出来ず、守りのミスで自滅した」と、この1敗で一気に危機に突入したかのように書き立てた。

    更に、試合前の記者会見で「開幕3戦で無失点はディフェンスの特訓の成果」と語ったブレンダン・ロジャーズの言葉を引用し、辛辣な批評を加えた。「昨季の諸悪の根源と言われたデヤン・ロブレンについて『すっかり自信を取り戻して、本来に戻った』と褒めた途端に、気を緩めて集中力を失ったかのように、ロブレンから致命的なミスが出た」。

    Liverpoolファンは、全国メディアの過剰反応には眉を顰めながらも、今季これまでの4試合の内容については厳しい評価を下していた。「開幕4戦で、良いプレイが出来たのはアーセナル戦(試合結果は0-0)の前半45分だけ。ラッキーなミス・ジャッジのお蔭で2失点が無効にされて、1得点がプレゼントされた。ミス・ジャッジがなければ、本来は3戦1勝2敗1得点の後で、ウエストハム戦で奥深い問題が露呈された。監督残留、コーチ陣の交替、戦力補強と放出の末に、結局、チームは昨季の暗黒の時期から何も変わっていない現実が判明した」。

    「才能はあるが実績がない若手監督にとって、Liverpoolは荷が重すぎる」という議論が繰り返される中、イングランド中の厳しい観察の下で開始した今季は、1敗1敗が「2+2が5になる」メディアの攻撃をそそることは、誰もが予測していた。そのプレッシャーの下で、チームが精神的な強さを見せることが必要となる。

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    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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