たいくつなジェームズ・ミルナー

    6月4日、ジェームズ・ミルナーのLiverpool入りが正式に発表された。2010年に5年契約でマンチェスターシティ入りしたミルナーが、2015年6月にシティとの契約が切れることは昨年夏からメディアを飾っていた。いわゆる「プレミアリーグの大スター」とは言えないミルナーの行方は、第三者のファンの間で一挙一動が注目を浴びる程の話題性はなく、「シティが必死に引き留め交渉中」のニュースに対しても、おざなりの興味に留まっていた。

    5月になって、シティが破格の条件で最終説得に臨んだというニュースが流れ、ミルナーは、サインすればセルヒオ・アグエロ、ダビド・シルバ、ヤヤ・トゥーレ、バンサン・コンパニらワールドクラスの大スターに次ぐ高給取りになるという報道に、世間は金額面で驚愕の声を上げた。

    ただ、シティがそれだけミルナーを高く評価していたことは、マヌエル・ペジェグリーニの言葉からも明らかだった。「ベンチに座らせると激怒する。でも、試合では常に全力を出すミルナーを見ると、この選手は外すことはできないと確信させられる。真面目で、熱心で、意志が強く、そして、大きなハートを持っている。ミルナーのような選手は、なかなか見つからない」。

    ミルナーがシティの説得を振り切ってLiverpool入りの決意を表明した時の、シティ・ファンの反応はほぼ一致していた。「ライバルチームに行くとは、裏切られた」と嘆いた人はいたものの、在籍中の仕事を心底から評価し、感謝の言葉とLiverpoolでの健闘を祈ると同時に、ミルナーを失う打撃を感じないファンはなかった。

    そのファンの一人であり、地元紙のシティ担当記者としてミルナーを日々観察してきたマンチェスター・イブニング・ニュース紙のスチュアート・ブレナンが、リバプール・エコー紙のインタビューで「ファンが選ぶとしたら、毎試合先発するだろうという選手」と語った言葉は、ファンの意見を集約していた。

    「ミルナーはプレミアリーグで最も過小評価されている選手の一人。たぶんLiverpoolファンの中でも、ミルナー獲得のニュースにときめきを感じない人はいると思う。しかし、シティが破格の条件を提示してでも引き留めようとした事実からも、シティのクラブもファンも、いかにミルナーを高く評価しているか明らか」。

    Twitterの「たいくつなジェームズ・ミルナー(Boring James Milner)」というパロディ・アカウントが人気を集めているように、「ミルナー=たいくつ」という認識が根付いていた。その「たいくつなジェームズ・ミルナー」は、生真面目で面白味のない私生活をネタにしたジョークで、イングランド中の爆笑を買っていた。

    これについてブレナンは、「ミルナーは、アルコールを飲まない以外に『たいくつ』な面は全くない。むしろ、あの『たいくつなジェームズ・ミルナー』ジョークを積極的に楽しんでいる」と笑った。

    この「たいくつなジェームズ・ミルナー」は、ミルナーのLiverpool入りの正式発表の直前に、リバプール・エコー紙も焦点を当てていた。「忠実で常に全力を尽くす模範的なプロ。インタビューでも余計なことは言わず、問題とは縁がない、外部からも態度の良さで定評がある。常に全力を尽くしてきたミルナーは、『たいくつ』というよりは『意志を貫く』ヨークシャー・マン」。

    その言葉少ないミルナーが、シティ時代に、珍しく頬を紅潮させたことがあった。2013年2月のFAカップ5回戦で、古巣であり熱烈なファンだった地元のチーム、リーズ・ユナイテッドと対戦した時のことだった(試合結果は4-0でシティの勝利)。

    「今でも可能な限り、リーズの試合をフォローしている」と語ったミルナーは、2004年にリーズが降格を決めたアウェイのボルトン戦を振り返った(試合結果は4-1でボルトンの勝利)。「試合後にアウェイ・スタンドのファンに謝りに行った時、ファンの顔を見て、申し訳なくて、情けない気持ちで一杯だった。全力を尽くしたが、力が及ばなかった」。

    降格したリーズは財政難に陥り、資金上の理由でミルナーを始め数人のスター選手を手放した。そして9年後の2013年に、FAカップでシティと対戦することになったリーズは、3部での苦難の末にやっと2部まで復活したところだった。「僕の家族も親戚もみなリーズ・ファン。今の我がチームは安定して、良い状況にある」。

    この「我がチーム」とはシティではなくリーズのことだ、と突っ込んだメディアは、「ファンとしてのミルナーの忠実さが表れていた」と締めくくった。

    そして、ブレナンのミルナー観が、それを裏付けた。「ミルナーは、試合に出たいと常に言い続けた。特に、最も得意なセンターのポジションで。スター揃いのシティでは容易なことではなかった。しかし、CLの常連になり2度のリーグ優勝に輝いた絶頂期の2010-2015に、2人の監督の下で通算147試合を記録したミルナーは、シティにとって本当に重要な選手だった。そしてミルナーは、高給取りの道ではなく、自分のフットボールを目指す意志を貫いた」。

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    ピーエルエフジェイ

    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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