スタンフォードブリッジのガード・オブ・オナー

    チェルシーが優勝決定して初のホームでのリーグ戦となった5月10日に、対戦相手のLiverpoolがガード・オブ・オナーを実施するという話題がイングランドで注目を集めた。地元紙リバプール・エコーは、「プレミアリーグの伝統と言うほどの歴史もない儀式だからやる必要はない、という声もあったが、Liverpoolの選手たちにとっては良い機会。大いに屈辱を感じて、それを『来季は絶対に自分たちが勝つ』という決意の糧にすべき」と賛意を表明した。

    ジョゼ・モウリーニョは「Liverpoolやってくれるなら'オナー'(栄誉)を抱いてありがたく受け取る」と語った後で、神妙な表情で続けた。

    「それよりも、私の方からスティーブン・ジェラードに'オナー'を表明したい。私を育ててくれたのは、自分の選手だけでなく対戦相手の選手たち。彼らのおかげで私は監督として成長できた。そして、ジェラードは私にとって最も好きな対戦相手の一人。私はこれまで3回、チェルシーと、インターと、レアルマドリードの監督だった時に、ジェラード獲得に挑んでいずれも失敗に終わった。ジェラードはLiverpoolそのものだから、正しい選択だった。いつか、私が監督として、ジェラードが監督を勤めるLiverpoolと対戦する日が来ることを楽しみにしている」。

    それに対して、試合後にBBCのインタビューで語ったジェラードのモウリーニョへの返答は、同様に正直な言葉だったと、誰もが敬意を抱いた。

    「モウリーニョは世界一の監督。彼が誘ってくれたからこそ、心が動きそうになった。僕にとってLiverpoolはあまりにも大切だったから断ったが」。

    モウリーニョとジェラードが、お互いに一目置いていたことは、10年以上前から明らかだったが、今回のこの両者のストレートなメッセージの交換に、Liverpool筋のメディアやファンは心を温めた。

    それは、チェルシー側も多かれ少なかれ同じだったことは、この試合の79分にジェラードが交替した時の、スタンドの反応が証明していた。

    トラベリング・コップが一斉に立ち上がって拍手をしたのと同期を取って、タッチラインでモウリーニョが拍手する後ろで、チェルシーのベンチも立ち上がって拍手を送った。続いてホーム・スタンドのチェルシー・ファンが、パラパラと立ち上がって拍手に加わった。

    結果的に、スタンフォードブリッジ中が総立ちでジェラードを送り出したこの場面は、実況陣を始めイングランド中のメディアから、「チェルシー・ファンのフェア・プレイ」と絶賛された。

    ところが、試合後のインタビューで感想を問われたジェラードが、「数秒間の拍手を除いて、試合を通してとことん僕に野次を浴びせ続けたチェルシー・ファンに、感謝を抱けというのは無理。それよりも、常に僕をバックアップしてくれているLiverpoolファンに対する誇りを語りたい」と答えたことで、イングランド中が度胆を抜かれた。

    Liverpoolファンの間では、「ガード・オブ・オナーの最中にもブーイングを飛ばしたばかりでなく、試合を通して『滑って転んでデンバ・バにゴールを渡した』を歌い続けたチェルシー・ファンに、我々は心からがっかりした。あの場面も、モウリーニョが拍手したから『仕方なく』加わったように見えた。ジェラードの言葉は、我々ファンの気持ちを代弁したもの」という意見が飛び交った。

    更に、その日のハイライト番組で、元Liverpoolの主将(1978–1984)で監督の経歴も持つ(1991-1994)グレアム・スーネスが「この試合に1-1と引き分けて、Liverpoolは実質的にトップ4の望みを絶たれた。ジェラードの頭の中には、勝てなかったショックしかなかったからあのような反応になった。後日、冷静になった時に、チェルシー・ファンに対して感謝を抱くだろう」と擁護した。

    それでもメディアやニュートラルな立場のファンが「ジェラードの言葉とは思えない」とざわめく中で、少なくないチェルシー・ファンから、ジェラードに対する正直な言葉が出た。

    「我々が拍手をしたのは、ジェラードのピッチの上での業績に対する尊敬の表明。ジェラードに伝わらなかったのは残念だが、フットボールを知っているファンならば、ジェラードに対して心から敬意を抱いていない人はいないと思う」。

    「ジェラードがここ10年以上にも渡って、そのうちかなりの期間に'並の選手揃い'だったLiverpoolを、一人で底上げして、多くのトロフィーを獲得したことは真相。そして今日の同点ゴールもしかり、間もなく35歳になるジェラードは最盛期の威力はないものの、今でもLiverpoolを引っ張る存在であることは今季のリーグ8得点、合計12でLiverpoolのトップ・スコアラーという数字を見るまでもない」。

    「イングランド中がジェラードのお別れに沸く中で、チェルシー・ファンとしては、正直、この人が来てくれていたならば我がチームはどれだけ多くのトロフィーを取れていただろうと、哀愁に浸ってしまう」。

    さて来週5月16日のクリスタルパレス戦は、アンフィールドでのジェラードの最後の試合になる。ジェラードが安心して信頼してくれているLiverpoolファンから、ジェラードに対して「ありがとう」の言葉を捧げる最後のチャンスになる。

    コメント

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    はつよろです♪

    なんだかファンになっちゃいました(o≧∇≦)o

    わたしですね…このところついてなくて(汗)
    すべり台を滑っても滑ってもゴールが無い感じなんて言えば少しは伝わりますか?
    ものすごい急降下中なんです。。

    そんなこんなで色んなブログ読み漁ってたらここで足が止まりました♪(゚▽^*)ノ⌒☆不思議と心惹かれたんです。
    ピーエルエフジェイさんも色んな時間を過ごされてるんですよね。きっと。。

    急なお願いで戸惑わせてしまうかもしれませんが
    話し込んでみたいというか話しを聞いてもらえたらって気持ちを持たずにはいられなかったんです(*´∀`)b

    連絡してくれたら有難いです。
    もしも迷惑であればコメントごと私のこと消してください。
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    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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