味方が足をすくい始める時

    4月15日に、ボルシア・ドルトムントのユルゲン・クロップが今季末で監督を離任することが発表された。2008年に13位に低迷していたドルトムントを引き継ぎ、財政難の中で若手を育ててチーム再編を果たしたクロップは、2010–11季、2011–12季とブンデスリーガ連覇を達成し、翌2012–13季には「ドイツCL決勝」でバイエルンに2-1と惜しくも敗れる快挙で、今をときめく監督の一人となった。しかし、今季は降格ゾーンに低迷するなど成績不振に苦しみ、クロップの行方が注目されていた中での決定だった。

    ジョークを言って笑う明るい人柄がウケて、イングランドでのクロップ人気は高く、BBCを始めとするイングランドのメディアで、何度か独占インタビューを受けていた。その中で、「私はサー・アレックス・ファーガソンには絶対にならない」と、ドルトムントに対する誇りを抱きながらも、将来的には外国で新たなチャレンジに臨む野望を語っていた。更に、「言語のことを考えると、可能性が高いのはイングランド」とも言っていた。

    今回の発表で、イングランドのメディアは一斉に「クロップの行く先は?」と、憶測記事を掲げた。

    折しも、その3日前のマンチェスター・ダービーで、4-2と大敗を食らったマンチェスターシティは、スキャンダル好きのメディアから集中攻撃を受けていたところだった。

    「クロップが今季末にフリーエージェントになるという新たな情報は、シティのクラブに方針転換のきっかけを与えた」という見出しで、地元紙マンチェスター・イブニング・ニュースが全国紙の「監督クビ」に拍車をかけた。

    最後の砦である地元紙にも見放されたシティは、イングランドの「クロップの行く先」オッズで首位を独走した。そして、2位はアーセナル、3位Liverpoolという順位は、どのペッティング・オフィスでも一致していた。

    その余韻が残る4月19日のリーグ戦で、シティがウエストハムに2-0と勝って連敗を2でストップし、メディアの「更に炎上」を食い止めた直後に、FAカップ準決勝でアストンビラに2-1と敗退したLiverpoolが、代わって「クロップの行く先」としてイングランド中の注目を浴びる立場に立った。

    「FAカップ準決勝でこんな情けない試合をするとは、ショックで言葉も出なかった。アンフィールドでの3月22日のマンチェスターユナイテッド戦と瓜二つ。Liverpoolの選手は誰一人として、ビッグ・マッチに臨む決意を見せなかった」と、元選手や親Liverpoolのアナリストが一斉に選手を批判する中で、地元紙リバプール・エコーは「選手にやる気を出させるのは監督仕事」という側面に焦点を当てた。

    「ブレンダン・ロジャーズは、Liverpool監督に就任してまる3年間トロフィーなしという、1950年代以来の不名誉な記録を残すことになった。1959年のビル・シャンクリー以来のLiverpoolのクラブ史上で、トロフィーなしで終わった監督はロイ・ホジソン(2010-11年、在任5ケ月)のみ。果たしてロジャーズは、2人目にならないチャンスを与えられるか?」。

    地元紙が警鐘を鳴らす中で、ファンの間で「ロジャーズにもう1年、チャンスを与えるべきか?」という議論は、日に日に活発になっていた。

    ビッグ・クラブの監督がクビになる原因としては、一般的には、チームの成績不振、移籍の失敗、致命的な失言や問題行動でファンの反感を買う、というものが多い。それらの結果、選手の信頼を失ってチームがまとまりを失うことになれば、監督交代は不可避となる。

    伝説的なまでに、「勝てない時にも100%監督と選手をバックアップするファン」と言われているLiverpoolでは、圧倒的に移籍の失敗が主要因だった。その意味では、在任3年間で£200mを超える戦力補強の結果を厳しく問う声は、ファンも認識していた。

    更に、2013年にトットナムがガレス・ベイルを世界記録の£80M超で手放した際に、£100Mを費やしてベイルの穴埋めが出来ずに6位で終わったシーズンに、ロジャーズが「£100Mを投入して戦力を補強すれば、リーグ優勝を狙う成績を収めるべき」と言った時には、Liverpoolファンの間で「ロジャーズは時々、不必要な議題に口を挟み失言をする。これは改めるべき。自分に戻って来ないとも限らない」という心配の声が飛んだ。

    そして、ファンの危惧した通り、1年後にはアンチのメディアが当時のロジャーズの失言を掘り出して批判の材料に使った時には、ファンにとって擁護の余地はなかった。

    ただ、今季前半の不調を乗り切った大胆なフォーメーションの変更や、有望若手にチャンスを与えて育てるなど、ロジャーズのコーチとしての手腕に関しては、誰もが高い評価を与えていた。その中で、「ビッグ・クラブの監督としての経験と実績はないが、素質はあると信じている。あと1シーズン、それを証明するための最後のチャンスを与えるべき」という声は根強かった。「そのためにも、チームが自信と目標を一気に失ってどん底に立った今、残り試合で実力を示して欲しい」。

    ファンの祈りは、「トロフィーの夢は散ったが、シーズンはまだ終わっていない」と締めくくったエコー紙の記事と同期を取っていた。

    クロップの動向がイングランドのビッグ・クラブの監督クビの憶測に火に油を注ぐシーズン終幕は、Liverpoolにとって、リーグ戦の残り6試合が本当の試練になる。

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    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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