セント・デビッド・デイ

    3月1日のプレミアリーグ注目戦、アンフィールドでのLiverpool対マンチェスターシティは、昨季4月のこの対戦(試合結果は3-2でLiverpoolの勝利)とは異なる角度の「リーグ優勝の行方を占う一戦」となった。それは、首位チェルシーがリーグカップ決勝戦(※)に臨んでいる間に、シティがポイント差を5から2に縮めることができるか?というものだった。
    ※同じ日に行われたリーグカップ決勝戦で、チェルシーが2-0とトットナムを抑えて優勝した。

    シティの地元では、ここ23年間で僅か1勝と苦手のアンフィールドで、2003年以来の初勝利を上げることができるか?という議論で盛り上がっていた。シティ・ファンの間では、「35歳以上のファンならば誰もが、毎シーズン開始時の皮算用で、無意識にアンフィールドでの獲得ポイントを0とカウントする習慣が染みついている」と目を伏せながら、「ここ5年間、リーグ最終順位でLiverpoolより上で終わっているというのに、今だにアンフィールド恐怖症は抜けきれない」と苦笑が飛び交った。

    いっぽうLiverpool陣営では、2月26日のEL戦(その日の試合結果は0-1。通算1-1でPK戦4-5でベシクタスが勝ち抜き)の直後で、体力的な後遺症の心配から、シティ戦は苦戦の予測が広がっていた。木曜の夜に120分戦い、PK戦で敗退した失意はさておいても、金曜日の早朝5時半に帰着して日曜日の正午キックオフに備えるという厳しいスケジュールに、全国メディアは圧倒的に「シティ優位」の予測を掲げていた。

    そんな中で、地元紙リバプール・エコーは、3月1日のセント・デビッド・デイ(※)にちなんで「マージーサイドとウェールズとの深い繋がり」と題する記事を掲げ、「35歳以上のシティ・ファンが悪夢に憑かれている」80年代の記憶を呼び起こした。
    ※セント・デビッド・デイ : ウェールズの守護神セント・デビッド(AD589年3月1日没と言われている)を偲ぶ国民行事。

    「Liverpool FCにとって隣国ウェールズとの深い繋がりは、ジョン・トシャック(Liverpool在籍は1970-1978)、イアン・ラッシュ(1980-1987、1988-1996)という歴代名選手や、近年の人気選手ディーン・ソーンダーズ(1991-1992)、クレイグ・ベラミー(2006-2007、2011-2012)というウェールズ代表選手たちによって継承されている」。

    そして3月1日は、Liverpoolが2-1と勝ってシティ・ファンのアンフィールド恐怖症を継承させた。

    「僅か54時間の準備期間しかなくて過労を貯めていたはずのLiverpoolの方が、最後まで走りまくった。我々は完敗。アンフィールドの悪夢は今シーズンも晴れなかった」と、シティ・ファンはため息をついた。

    全国メディアは「チェルシーがリーグ優勝に大きく前進した」と首位争いの行方に固執し、勝ったLiverpoolに関しては、ジョーダン・ヘンダーソンとフィリペ・コウチーニョの「ワンダー・ゴール」絶賛だけに終始した。その日のマッチ・オブ・ザ・ディでは、2月の「ゴール・オブ・ザ・マンス」に輝いたコウチーニョのサウサンプトン戦(試合結果は2-0でLiverpoolの勝利)のゴールと並んで、アナリストの話題はコウチーニョに集中した。

    Liverpoolファンは、「番組の70%はコウチーニョ特集が占めた。10%がヘンドで、残り20%はシティ批判」と苦笑しながら、メディアのスポットライトが当たらない選手たちの貢献に目を向けた。

    実際に、Liverpoolファンが選んだマン・オブ・ザ・マッチはジョー・アレンだった。

    「試合を通してハイ・プレスで、ワールド・クラス揃いのシティのミッドフィールドを完全に抑えた。正確なタックルでボールを奪い、コウチーニョに繋げるパスを出しまくった。ヘンドとコウチーニョの『ワンダー・ゴール』の価値を下げるわけではないが、2人はベシクタス戦に行かず、比較的フレッシュな状態でシティ戦に臨んだのに対して、アレンは120分プレイした末にPK戦でも責任を買って出た」。

    「正直言って、£15Mの移籍金と『ウェールズ版シャビ(バルセロナ)』のニックネームのプレシャーが強すぎて、このまま沈んでしまうのではないかと心配していた。しかし、スティーブン・ジェラードとルーカスの負傷欠場の穴埋めという役割が降ってからというもの、アレンはその重責を見事に果たしている。更に、今日のアレンは本物のシャビにも褒められておかしくないような改心の出来だった」と、誰もが強く頷いた。

    ファンの絶賛が聞こえたかのように、アレンはリバプール・エコー紙のインタビューで静かな決意を語った。「チームメイトが負傷で出られなくなるというのは、常に辛いもの。自分自身も同じ状況を経験しているから尚のこと。しかし、自分に出番が回ってきた時には全力を尽くして、チームの勝利に貢献したい」。

    「セント・デビッド・デイに勝てたことは、ウェールズ人である僕にとっては最高だった」と控えめにほほ笑んだアレンの名が、セント・デビッド・デイ特集記事の「Liverpool FCのウェールズ・コネクション」リストに登場する日が来るかもしれない。

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    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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