スカウサーの血統

    1月17日のビラ・パークで、79分のゴールを決めたリッキー・ランバートの、結果的にイエローを食らった「桁外れの祝い方」の興奮が、この日のマージーサイドを包んだ(ランバートのリーグ通算2得点目。試合結果は2-0でLiverpoolの勝利)。テレビ画面のスナップショットや報道陣の写真に交じって、アウェイ・スタンドのファンが撮った写真に、トラベリング・コップに埋もれているランバートの横で、ルーカスがすっかり理性を失った表情でファンと抱き合う姿がインターネット上を飛び回り、ファンの絶賛を呼んだ。

    Liverpoolファンは「選手全員がイエローを食らうかとハラハラした。リッキーだけで済んで良かった」とジョークを言いながら、「ゴールの瞬間にアウェイ・スタンドに飛び込んだリッキーに続いて、Liverpoolの選手全員がトラベリング・コップに駆け寄った様子から、このゴールがチーム全体にとってどれほど大きな意味を持っていたか手に取るようにわかった」と頷いた。

    シーズン前半に、12戦4勝2分6敗で12位に低迷していたLiverpoolは、あらゆるポジションが批判を受けたが、8月末から負傷欠場中のダニエル・スタリッジを除く3人のストライカーが合計1点という記録は頻繁に話題に上った。その中で、ランバートは比較的風当たりは弱かったとは言え、得点できないストライカーが非難を免れるわけがなかった。「ペースがあり自ら得点チャンスを作るタイプのスタリッジとは全く正反対のリッキーは、試合を変える必要がある時のプランB要員として獲得したストライカー。それが、不運な事情でプランAに組み込まれることになった。リッキーが得点できないのは本人のせいではない」というファンの反論は、外部からの猛批判でかき消されがちになっていた。

    昨年6月にランバートのLiverpool入りが正式に発表された時に、Liverpoolファンの間で「リッキーが初ゴールを決めた時には、ホワイト・ハート・レーンのフラノを凌駕するかもしれない」という予測が飛び交った。ファンが「最大の祝ゴール」と振り返る2013年12月のトットナム戦(試合結果は5-0でLiverpoolの勝利)で、初ゴールを決めてアウェイ・スタンドに向かって全力疾走したジョン・フラナガンを、選手たちが後ろから取り押さえて、全員でトラベリング・コップに向かって万歳をしたというものだった。Liverpoolの選手たちがアウェイ・スタンドの目の前でピラミッドを作る過程で、ジョーダン・ヘンダーソンが遠くにいた選手たちを呼び寄せた姿がファンの笑顔を増幅させた。

    地元マージーサイドでLiverpoolファンとして生まれ育ったフラナガンやランバートにとって、Liverpoolでのゴールは格別な意味を持っていることを、チーム全員が理解して、自分のことのように喜ぶ風景は、ファンは心を温めた。

    折しも、マージーサイドの地方紙リバプール・エコーが連載しているスティーブン・ジェラード特集の中で、1月12日の「Liverpoolはスティーブン・ジェラードと共にスカウサーの血統を失う危機に直面している?」という記事がファンの間で大きな話題になったところだった。

    「スティーブン・ジェラードがアンフィールドでのデビューを飾った1998年12月のセルタ戦(UEFA杯、試合結果は0-1でLiverpoolの敗戦)で、Liverpoolの先発メンバー中6人がスカウサーだった。しかし今は、ジェラードと、今季末でLiverpoolとの契約が切れるジョン・フラナガン、入ったばかりで既に出て行く噂が飛び交っているリッキー・ランバートの3人のみ。来季が始まる時には、スカウサーが1人もいない事態になるかもしれない」。

    「地元社会と緊密な関係を保っているLiverpool FCが、ファーストチームの登録選手の中にスカウサーがここまで少なくなったのは1930年まで遡る。その時には僅か1人だったLiverpoolは、その翌1931-32季からずっと『スカウサーの血統』を受け継いできた。ジャック・バルマー、ローリー・ヒューズ、ロニー・モーラン、イアン・キャラハン、トミー・スミス、クリス・ローラー、フィル・トンプソン、テリー・マクダーモット、サミー・リー、スティーブ・マクマホン、ジョン・オールドリッジ、ガリー・アブレット、スティーブ・マクマナマン、ロビー・ファウラー、ジェイミー・キャラガー、そしてジェラード」。

    「ユース・チームの中には、今季リーグカップのミドルスバラ戦(試合結果は2-2、PK戦でLiverpoolが勝ち抜き)でファーとチームでのデビュー・ゴールを記録した17歳のジョーダン・ロシターがいる。リバプール市内のエバトン地区で生まれ育ったスカウサーのロシターは、キャラガーが『若い頃の自分に似たものを持っている』と期待を表明している。しかし、最近1年間で、マーティン・ケリー、ジャック・ロビンソン、コナー・コーディが失意のうちに去った現実を見ると、これら有望若手が開花するまでの道が険しいことは明らか」。

    「フットボールはいまやグローバルなスポーツになった。しかし、ファンは地元出身の選手には特別な感情を抱く。地元社会と共に成長してきたLiverpool FCが、スカウサーの血統を維持することは、今後の大きな課題の一つとして改めて認識したい」。

    ビラ戦のゴールの後で、「ファンと一緒に祝えたことは永遠に忘れられないだろう」と語ったランバートに、ファンの拍手は止まなかった。「リッキーは我々の一人だから」。

    そして、ランバートのゴールを一緒に祝ったチーム全体が、Liverpool FCのスカウサーの血統の大切さを認識し、誇りに感じている様子が伺えた。

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    ピーエルエフジェイ

    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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