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    スティーブン・ジェラード 埋められない大きな穴

    1月1日の夜、プレミアリーグのクリスマス過密日程が終了した直後に、スティーブン・ジェラードが今季末でLiverpoolを去る決意を翌日に正式発表するという速報が流れた。イングランドが衝撃に揺れる中、1月2日の午前9時にジェラード本人が「人生で最も辛い決断」を語った。Liverpoolと対戦することは考えられないから、その可能性がない場所で現役を続けるという。

    この決断が下されるのではないかと、Liverpoolファンの間で危惧が芽生えた12月に、最も多く議論が交わされた題材は、「クラブより大きな選手はない」という、イングランド・フットボール界で言い古された慣用句だった。概念的にはその真意を否定する人はいなかったが、現実的に、今のLiverpoolとジェラードの状況を文字通りに解釈した時に、どのような意味を持つのか、というのが論点だった。

    「クラブ=今のLiverpool」は、堅実なスポーツ・ビジネス経営の専門家である一方で、イングランドのフットボール界に特化しているとは言えず、ましてやLiverpoolと感情的な繋がりがあるわけではないオーナーを頂点に、移籍金と給与という選手に費やすコストを低く抑えながら長期的な成功を達成できるチーム作りを目標に、実績はないが潜在的能力を持つ若い監督がそれを実現するために全力を注いでいた。そのクラブ(=経営陣、監督)のビジョンを達成するために、監督の指示が絶対となるべく新しい戦力でチームを構成する過程で、在籍期間が長く、給料も高くて影響力の大きいベテラン選手が次々に去って行った。ペペ・レイナ(2005-2014)、ダニエル・アッガー(2006-2014)、ジェイミー・キャラガー(1996-2013)。各々状況は異なるものの、ともすれば「クラブ」と拮抗するような影響力を持つ選手だったという点では共通していた。

    そして、ジェラードだけが残った。

    ファンの間では、クラブの方針に対する賛否両論はあったものの、Liverpoolとジェラードは切り離せない関係にあるという点では誰もが一致していた。40歳で現役引退して、そのままアシスタントとしてマンチェスターユナイテッドに在籍し続けているライアン・ギグスや、38歳で2度目の現役引退するまでユナイテッドのワン・クラブ・マンを通したポール・スコールズと同じように、数年後にジェラードがアンフィールドで、感情的な拍手に包まれて現役生活にピリオドを打つだろうと、誰もが信じていた。少なくとも、半年前にジェラードが「あと2-3年、Liverpoolでのプレイに集中するために」イングランド代表を引退した時には、誰もが確信を抱いていた。

    そのファンの「確信」は、半年足らずのうちに「願い」に変わり、そして1月1日には「絶望」になった。

    「1998年から17年間、Liverpoolのチーム内に記憶に残るスター選手が殆どいなかったという時期が少なくなかった、その中で、キー・マンとして主将としてチームを引っ張り続けて栄誉を勝ち取ったジェラードは、ユナイテッドの黄金時代に、スター選手に囲まれて栄誉を重ねたギグスやスコールズとは全く異なる環境にいた。そのジェラードに出て行く決意をさせたLiverpoolは、かけがえのないものを放棄した」。

    そのキャラの言葉は、ファンの「願い」が「絶望」に変わるまでの間に頻繁に囁かれた危惧を裏付けていた。

    「ギグスとスコールズは、10代の時にデビューさせてくれた監督が、引退前の時期に存続していたことが大きな要素だった。30代半ばになって『マネジメントが必要』な時期に差し掛かった時に、ギグスやスコールズにとってお父さんのような存在だったサー・アレックス・ファーガソンが、威厳を持って最適なシフトを命じたからこそ、ギグスとスコールズはベテランとしてチームに貢献しながら、誇り持ってフェード・アウトすることが出来た。その環境がないジェラードは、クラブを取るかジェラードを取るかという不当な状況に追い込まれた」。

    このニュースは、チームを問わずイングランド中のファンの間で話題のトップを占めた。その中に、黄金時代のLiverpoolに激しいライバル意識を抱き続けてきたユナイテッド・ファンのつぶやきがあった。「70~80年代の敵なしだった頃のLiverpoolの記憶が年々薄れる中で、ジェラードが唯一、その頃を彷彿させる存在だった。そのジェラードがいなくなったら、Liverpoolと輝かしい歴史を結びつけるリンクが消滅してしまうような気がする」。

    1月3日の17:00にLFC TVで放映されたジェラードの独占インタビューは、常にクラブを優先してきたジェラードが最後までその方針を貫いて決定を下した背景を映し出した。

    「Liverpoolを出る決意を下した直接のきっかけは、先日監督と話をした時のこと。これからは僕が試合に出る機会についてマネジメントが必要だ、と言われたことだった」と、ジェラードはその理由を明言した。「この時が来ることは覚悟していた。しかし、僕も人間。もはや24歳ではない。24歳の時にブレンダンと出会っていたら、34歳になった時にそれまで取ったリーグ優勝について語り合えただろうと思う。でも実際には、32歳になった時に初めて出会った。監督との話し合いは、ひどく苦しいものだった」。

    1月1日から現在までにイングランド中のヘッドラインを独占している状況について、「ここまで大きな反響になるとは思わなかった」と語ったジェラードは、選手全員にその決意を明かした時に「まるでクラブが崩壊するかのような反応だった」と苦笑し、「みんなの心のこもった反応には感動した」と語った。そして、各方面から寄せられた感情的なメッセージに感謝を表明した。

    「最も大切な人々はファン。それはどんなフットボール・クラブであっても同じだと思う。でも僕は、世界一のファンがいるクラブでこれまでやってこれて幸せだった」と語ったジェラードの目は赤く腫れあがっていた。

    インタビュアーが、ファンから寄せられたジェラードへのメッセージのうちいくつかを読み上げても良いかと尋ねたのに対して、ジェラードは首を横に振った。「それは勘弁して。泣きたくないから」。

    「残された半年で全力を出し切ることだけに集中したい。トップ4の可能性が完全になくなったわけではないし、リーグではできる限り上位で終わりたいし、トロフィーを取りたい。ファンがもう一度ウェンブリーを堪能する姿を見たい」。

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    ピーエルエフジェイ

    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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