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    勝てない時にサポートしないなら

    イングランドのフットボール界では、強烈な出来事に関して、5/10年後に「5/10周年記念」として語ることが多い。インターナショナル・ウィークでリーグ戦がお休みだった11月15日を挟んで、各地で様々な「5/10周年記念」で盛り上がった。その中で、アーセナル・ファンから出た「ピザ・ゲート10周年」がイングランド中の笑いを誘った。

    これは2004年11月18日にオールド・トラッフォードで行われたマンチェスターユナイテッド対アーセナルで、波乱万丈だった試合(ユナイテッドが2-0で勝利)の後で、アーセナルの控室から飛んできたピザがサー・アレックス・ファーガソンを直撃した事件だった。当時プレミアリーグのトップを競う二大チームの直接対決で、負けた側の選手が相手チームの監督にピザを投げつけたという桁外れの出来事は、メディアが「ビュッフェの戦い」など様々な見出しを掲げた末に、「ピザ・ゲート」に落ち着いた。

    更に、被害者のファーガソンはもちろん、目撃者である筈の両チームの選手や関係者が全員、最後までピザを投げた選手の名を明かすのを拒否したため、「ピザ・ゲート」はミステリーとして迷宮入りした。数年経って、ほとぼりが冷めた頃に、アーセナルのマーティン・キーオンが「まるでフリスビーを投げるかのようにピザを飛ばすことができる、テクニックが優れたスペイン人若手」と、ピザ・ゲートの意外な犯人(セスク・ファブレガス)を明かしたのだった。

    このイングランド・フットボール史に残る珍事件に比べると全くありきたりで恐縮だが、翌週は私の個人的な記念日を迎える。初めて聖地アンフィールドで試合を見たのが25年前の1989年11月26日で、対戦相手はアーセナルだった(試合結果は2-1でLiverpoolの勝利)。

    当時ファンだった人なら誰もが、「1989年のアーセナル戦」というキーワードに目を丸くする。Liverpoolファンが、25年経っても昨日のことのように衝撃を感じる1989年のアーセナル戦とは、1988-89季のアンフィールドでのリーグ最終戦で、Liverpoolは0-1で負けても優勝だったのに試合終了直前のゴールで0-2で敗れ、大どんでん返しでリーグ優勝をアーセナルにさらわれた試合だった。私の初戦である11月の方は、Liverpoolにとっては前季の雪辱戦だった。その勝利が前季の失意を克服し、Liverpoolは1989-90季に通算18回目のリーグ優勝を達成した。

    1989年5月のアーセナル戦のインパクトではなかったが、2013-14季のリーグ優勝の夢を打ち砕かれたチェルシー戦(試合結果は2-0でチェルシーの勝利)の後で、11月8日は、Liverpoolファンにとっては雪辱ならず連敗で終わった(試合結果は2-1でチェルシーの勝利)。

    昨2013-14季が幕を下ろした直後から、ライバル・ファンの間で「Liverpoolの2位の翌季シンドローム」が飛び交った。これは、1989-90季の最後のリーグ優勝以来浮き沈みを行き来しているLiverpoolが、落ち込みから立ち直って2位に浮上した翌季に、必ずヨーロッパ圏外に落ちる反動を食らった事実(※)を指していた。
    ※2位で終わったシーズンとその翌季の順位は、1991-92季-6位、2002-03季-5位、2009-10季-7位、2014-15季-?

    しかし今季のプレミアリーグは、11試合を終えて9勝2分と一人勝ち中のチェルシーを除くと、チャンピオンのマンチェスターシティは8ポイント差の3位ながら直近の3戦で1勝1分1敗、アーセナルは6位ながら11位のLiverpoolと僅か3ポイント、マンチェスターユナイテッドは2ポイント多いだけの7位と、いわゆる「ビッグ・クラブ」はいずれも低迷していた。

    ピザ・ゲート10周年記事も、「しかしこの10年の月日は両チームを大きく変えた。ファーガソンの引退を契機に急降下に苦しんでいるユナイテッドと、昨季やっとトロフィーなしの9年間の終止符を打って今季は巻き返しをという勢いが空回りしているアーセナルは、11月22日の直接対決はもはやプレミアリーグの行方を決める対戦でも何でもなく、たとえピザが飛び交っても単に笑いものになるだけの対戦になってしまった」という一節が、ユーモアの影のファンの苦悩を表していた。

    Liverpoolファンは、「得点ランキングのトップ3を占めるストライカー(アレクシス・サンチェス)を持ちながら、負傷してないストライカー3人(マリオ・バロテッリ、リッキー・ランバート、ファビオ・ボリーニ)合わせてリーグ得点ゼロとどん底にいる筈のLiverpoolとそれほど大きな差はないという現状が、アーセナル・ファンがピザ・ゲートの思い出話をして笑いたくなる気持ちはわかるような気がする」と、ライバル・ファンにエールを送った。

    イングランドのフットボール・ファンの間で、勝てない時にも明るく威厳を保つ決意を指して「笑ってないと泣いてしまう」という表現は良く使われる。同様に、「チームが勝てない時にサポートしないなら、勝っている時にもサポートするな」という言葉も定言となっている。

    メディアは「次にクビになる監督」予測に沸き、インターネット上の「ファン」が自分のチームの監督のクビを求めて盛り上がる中、勝てない時にもスタンドからチームに声援を送り続けてきたファンは、不調の波を変えるべく、次の試合に向かう。

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    ピーエルエフジェイ

    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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