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    一生忘れられない負け試合

    勝つことが最大の目的であるフットボールでは、いかなる試合であろうと負ければ悔しい。それはファンだけでなく選手も同じだ。しかし、負けた試合が永遠の思い出となるべく感動を生むこともある。

    11月8日のFAカップ1回戦を控えて、ノン・リーグのウェストンの主将、トム・ジョーダンが7年前にアンフィールドで5-2と敗れた試合を振り返り、目を潤ませながら「あの場面は一生忘れられないと思う」と語った。

    2014-15季で134回目を迎えるFAカップは、世界最古のカップ戦であることは有名だが、その名の通りFA(※)傘下にある全737チームが参加して、5月末の決勝戦でトロフィーを掲げる1チームを決める。
    ※FA:イングランドのフットボール協会。発祥国のイングランドは世界中で唯一、国名が付かない略称「FA(Football Association)」で通用している。

    プレミアリーグが1992年に名称を変えて形式上独立するまでは、イングランド1部リーグとして92チーム・4部構成の頂点にあった。プレミアリーグになってからは、TV放送に合わせて試合日程を変えるなどの規則を独自で決定したり、単独でスポンサー契約を結ぶなど、運営面では大きく変わったが、実質1部~4部で昇格/降格の入替など根幹は維持されている。4部はその下のノン・リーグと入替があるというシステムも変わらない。総勢600を超えるノン・リーグも1部から8部までに分かれており、プレミアリーグを頂点とするピラミッド組織の裾野を形作っている。

    FAカップでは、ノン・リーグのチームが6ラウンドに渡る予備戦を勝ち上がった末に、11月にプロ・リーグの3,4部のチームが参戦する1回戦を迎える。12月初旬に行われる2回戦では2部、年明けて1月初旬の3回戦ではプレミアリーグのチームが順次参戦する。各ラウンドの組み合わせにはシードはなく、3回戦でいきなりプレミアリーグのチーム同士が対戦する傍ら、ノン・リーグのチーム同士が対決するなど、どちらがホームになるかも含めて全てが純粋なくじ運だ。

    それだけにFAカップは、伝統的にイングランドで最も栄誉のあるトロフィーと言われ、イングランド中の熱い視線が注がれる。上位のチームにとっては下位リーグのチームと対戦して負けるようなことになれば手痛い打撃で、逆に下位のチームにとっては、観客動員数が多い上位のチームとの対戦は財政面で大きなプラスであり、チームは「失うものは何もない」、ともすれば実力以上のプレイで番狂わせを生む、夢の対戦となる。

    7年前に、4回戦まで勝ち上がってイングランド中の注目を集めたノン・リーグのハベント&ウォーターロービルに在籍していたジョーダンが、Liverpoolと対戦した時のエピソードを語った。

    「Liverpoolのクラブもファンも、我々に最大の敬意を見せてくれた。無心で臨んだ我々は、前半終えて2-2と、夢のような試合になった。Liverpoolにとっては大ピンチで迎えた後半に、ピッチに降り立った我々に向かって、コップは総立ちで大きな拍手を送ってくれた。あの試合が我々にとってどれだけ大きなものだったか、コップは理解してくれていたと思う。あの時の感動は一生忘れられない」。

    ノン・リーグのチーム相手に、ホームでLiverpoolが2-2と苦戦していた中で、引き分け再試合や番狂わせを期待していたスキャンダル好きのメディアの嘲笑を背に、ハベントの選手たちに総立ちの拍手を送ったコップのフェアプレーは、Liverpoolの選手たちを奮起させ5-2の勝利を引き出したと同時に、7年後にも語り継がれる歴史を刻んだ。

    そして今季のFAカップ1回戦が行われた11月8日、Liverpoolはアンフィールドでのリーグ戦でチェルシーに1-2と敗戦を喫した。

    昨季終幕、4月27日のアンフィールドで、0-2と敗れてLiverpoolの24年ぶりのリーグ優勝の夢を打ち砕いたチェルシーに、雪辱が果たせなかったこの試合の後で、Liverpoolファンの間で「ガード・オブ・オナー」の計画が口伝えで広がり始めた。

    この「ガード・オブ・オナー」は、昨季チェルシー戦でストップするまで11連勝を記録したLiverpoolのチーム一行に対して、ファンがバナーや旗を掲げてチーム・バスの通り道の両脇に立って、アンフィールド入りするチームに盛大な拍手を送るというものだった。

    イングランドのフットボール界では、最終日を待たずにリーグ優勝が決まった場合に、その直後の試合で対戦相手の選手たちが通路の脇に立って新チャンピオンを拍手で迎える「ガード・オブ・オナー」が慣習となっている。本来はチャンピオンへの待遇である「ガード・オブ・オナー」を、Liverpoolファンが「最終順位はどうあれ、ここまで夢を見させてくれたチームに感謝を込めて」、ホームでの全試合でLiverpoolのチーム一行に対して最後まで貫いたのだった。

    その頃とはかなり異なる様相になっている今季、チェルシー戦で3戦3敗となった時点で、誰からともなく出てきた「ガード・オブ・オナーをやろう」という案に、次々と賛同者が手を上げ始めたのだった。

    「今の不調は選手が自信を失っているためであることは明らか。今こそ選手がファンを必要としている時。ガード・オブ・オナーで激励して、選手たちに昨季のあの自信を取り戻してもらおう」。

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    プロフィール

    ピーエルエフジェイ

    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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