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    選手の忠誠に仇で返したクラブ

    9月21日のマンチェスターシティ対チェルシーで、78分にサブで出場したフランク・ランパードが、85分に同点ゴールを決めた時の表情が、その夜のハイライト番組を飾った。今季絶好調で首位を走るチェルシーが、優勝争いのライバルであるシティに1-0と逃げ切るかに見えた時に出たそのゴールで、チェルシーは開幕5試合目にして初めてポイントを落とすことになった(試合結果は1-1)。

    昨季末に、13年間在籍したチェルシーとの契約が切れて、この8月にローンでシティ入りが決まったランパードは、新チームでの大きな貢献に対する誇りと、アウェイ・スタンドで盛大な拍手で迎えてくれたチェルシー・ファンに対する申し訳ない気持ちとで、どんな反応をすれば良いのか当惑しているように見えた。しかし試合終了と同時に、ランパードに総立ちの拍手を送ったチェルシー・ファンと、アウェイ・スタンドの前に佇んでファンに拍手を返したランパードの姿は、チームを超えてイングランド中のフットボール・ファンから大きな拍手が沸き起こった。

    「テレビで見ていた人々は、ランパードが『真っ直ぐにアウェイ・スタンドに向かった』と言っているが、アウェイ・スタンドに向かう途中に、ホーム・スタンドの我々に拍手をしてくれた」とランパードを賞賛したシティ・ファンも、「古巣のファンから深く慕われている様子は、ファンとして心が温まる」と笑顔を浮かべた。

    Liverpoolファンも例外ではなかった。ここ数年チェルシーは、カップ戦も含めて激突してきたチームであり、その看板でもあったランパードは、Liverpoolファンの間でも頻繁に話題に上がる宿敵の一人だった。誰もがライバル選手として一目置いていただけでなく、ランパードのクラブに対する貢献には敬意を抱いていた。それだけに、この夏にチェルシーがランパードとの契約を更新しないと決めた時には、驚きに怒りが混じった反応が飛び交った。

    「ミッドフィールダーで通算211得点でチェルシーのクラブ史上最多得点記録を維持しているという業績は、それだけで殿堂入りに値する。ファンからも熱烈に支持されていることからも明らかなように、ランパードの忠誠は多大なもの。そのランパードを、あっさり追い出したクラブの方針は理解できない」。

    更にランパード本人が、アメリカのニューヨーク・シティとの契約を結んだ直後の8月に、MSLの開幕までの短期ローンでシティ入りすることになった時に明かした言葉は、イングランド中のファンの、チェルシーのやり方に対する疑問に拍車をかけた。

    「チェルシーに残ることしか考えられなかった。昨シーズン中に何度か、監督からもクラブからも口頭では契約更新の意向を聞かされていた。だから、1月を過ぎてからは様々なクラブから話をもらっていたが(※)、チェルシーからの契約更新話をひたすら待っていた。今回シティ入りを決めたのも、チェルシーは僕を呼び戻す意思はないのだと分かってからのこと」。
    ※契約満了の6ヶ月前になると、選手は次の行き先を探すためのリクルート活動をすることが許されている。

    そのチェルシーが2ポイントを失ったシティ戦では、チェルシー・ファンとランパードが真摯に向き合う姿が、多くの目には「ランパードの忠誠に仇で返したクラブ」に対する抗議のように映ったのだった。

    それから1ヶ月後の10月30日に、契約満了のシーズンを迎えているスティーブン・ジェラードが、Liverpoolから契約更新の話が来ていないという実情を公言し、イングランド中に新たな爆弾を落とすことになった。

    「来季以降も現役として続けたい。しかしLiverpoolとの契約は今季末で終わる。もしLiverpoolが契約更新してくれないならば、1月には次のクラブを探し始めるしかないと覚悟している」。

    全国メディアは「今のプレミアリーグでは数少ないワン・クラブ・マンのスティーブン・ジェラードが、Liverpoolを出て新天地を探す決意を語った」と大騒ぎし、元Liverpoolのアナリストは一斉に「Liverpoolがジェラードに契約更新の話をしていないという事実はショッキング。ジェラードの17年間の貢献を考えると、今回のような告白をさせる状況に追い込んだLiverpoolのクラブとしての方針には疑問を抱く」と驚愕の声を上げた。

    2010年に倒産の危機に見舞われたLiverpoolを救った現オーナーの、健全財政の方針については、ファンの間で頻繁に議論が交わされてきた。「新戦力として獲得する選手の条件は、将来のスターとなる才能を持つ若手。移籍金と給料を合わせて上限の枠内で収まることが必須条件。移籍金も高く給料も破格のビッグ・ネームは取らない。現存の選手の中でも、給料が高いベテランは、基本的には、支出削減のため放出せざるを得ない」という考え方は、納得せざるを得ないという意見が多かった。

    「かつての強豪リーズなどが、移籍方針を誤って財政破たんの憂き目を見た実例を考えると、Liverpoolのオーナーの堅実な考え方は支持すべき」。

    その上で、今回のジェラードの発言については、圧倒的多数のファンがジェラードの側に立つ決意を語った。「ジェラードがLiverpoolを出て、例えばシティに行ってリーグ優勝メダルを獲得するとしたら、我々ファンとしては心からジェラードに拍手を送る。クラブがもし、ジェラードを失うマイナスの大きさを考えずに支出削減として割り切るならば、『ジェラードの忠誠に対して仇で返すクラブ』を見限って、新天地でトロフィーを目指す方がジェラードのためだと思う」。

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    プロフィール

    ピーエルエフジェイ

    Author:ピーエルエフジェイ
    平野圭子(ひらのけいこ)
    プレミアリーグ ファングッズ店長です。

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